猿の惑星シリーズ9作品まとめ 見る順番と原作との比較・解説

実は私は「猿の惑星」は小説派です。そのため映画を見出したのは公開からかなり後になってからのことでした。ところが映画「猿の惑星」シリーズは作品数が多くて、どれがどのシリーズかどの順番か分からなくなることが多い。そこでシリーズの整理と作品を見る順番などを自分なりにまとめてみました。

なお映画「猿の惑星」は9作品ありますが、全体は3つのシリーズに分けられます。シリーズ毎に小説ファン視点からの原作小説との比較も交えて紹介をしてみたいと思います。

猿の惑星(原作小説)

ピエール・ブール著
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まずは原作小説から。原作は猿と人間を逆転させることで人間への痛烈な風刺・皮肉を行う秀逸なSF小説。小説ならではの展開で衝撃のラストを味わえますが、ここで注意してほしいのは「小説のオチと映画のオチは違う」と言うこと。小説を知らない人は映画1作目のオチを「原作」と思いがちのようですが、あれは映画独自のオチであって、小説にはあんなオチはありませんのでお間違えなきように。

映画もいいけど、「猿の惑星」を語るならまずは小説を読んで欲しい。小説を知った後では1968年の映画1作目と2001年のリ・イマジネーションのラストについての印象も変わってくると思います。その上で色々な猿の惑星がある…と言う楽しみ方をすればいいのではと思うのです。

映画 第1シリーズ(旧シリーズ)

猿の惑星

旧シリーズ1作目
1968年
112分
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「猿の惑星」と言えばこれ!と言うくらい有名な作品ですね。全体は原作に沿ってはいますが、主人公が猿社会の一員になる様子や人間が動物化したいきさつについては省かれてます。原作とは主人公の名前も違うので、そこは映画用に構築したお話ですよ、と言うことですね。ただ違うところはあっても、人間への風刺や皮肉を行っているのは原作と同じなので、その点ではいい映画化作品と言えると思います。オチが原作と違うのはしかたがない面もあるので、今作のオチも映画で出来る形での秀逸なオチだったと思います。ただ他の猿の惑星シリーズの内容をこの映画のオチと比べるのは無意味です。オチが原作と違うという点では今作を含めて映画は全作品そうなのですから。

続・猿の惑星

旧シリーズ2作目
1970年
95分
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これは珍迷作。前作の続きから始まっていますが、チープな方向へ話が進み、前作の完成度までブチ壊してくれた別の意味で衝撃の作品でした。制作陣もヤケクソだったのかなと疑うほどですが、困ったことに「どう考えても続くはずがない今作のラスト」の続きを次作で真面目に作ってしまったので、以降今作ラストの設定が呪いのようにシリーズを支配し続ける…という状況になっております。もちろん原作にはこんな展開はないことを申し添えておきます。

新・猿の惑星

旧シリーズ3作目
1971年
98分
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迷展開の2作目の続きを真面目に作ってしまった旧シリーズ3作目。しかしそこはまさかの大技を使って、2作目の続きでありながらもまともな作品に立て直してくれました。原作にはないオリジナルな話でスタートを切り直したと言う意味では確かに「新・猿の惑星」です。地球に知性を持った猿が訪れたらどうなるかと言う、猿と人間の立場を1作目と入れ替えたのはいいアイデア。実は原作のオマージュもけっこうありまして、1作目では描かれなかった「主人公が猿社会の一員になって猿と同じ暮らしをする」シーンを猿と人間を逆にする形で再現してくれてます。

猿の惑星・征服

旧シリーズ4作目
1972年
87分
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旧シリーズ4作目。前作の20年後設定で、猿が人間に反乱を起こす話。人種差別がテーマで、もう原作とは完全に別物になってますが、批判精神は受け継いでくれているという感じです。

最後の猿の惑星

旧シリーズ5作目
1973年
86分
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旧シリーズ5作目。「新・猿の惑星」から始まった猿たちの物語の完結編です。地球に来た知性を持った猿の子孫が新しい未来を切り開く。その未来は原作とも映画1作目とも違うものになりそう?と予感させる終わり方。個人的には好きなラストです。

旧シリーズ総括

全5作のシリーズとなっていますが、「1作目」「2作目」「3~5作目」の3つの括りにも分けられると思います。5作に渡って世界観は続いているのですが、原作準拠の1作目、なかったことにしたい2作目(^^;、仕切り直してオリジナルストーリーで展開し直した3~5作目と言う感じでしょうか。1・2作目が人間主人公の話なら、3~5作目は猿が主人公の話という区分けも出来ますね。地球が猿の惑星になる理由は原作とは少し違いますが、原作の風刺精神は生きてます。

取りあえず「猿の惑星」ってどんな作品?と言う方にはまずは1作目を見るだけでも十分だと思います。2作目以降は映画オリジナルの話なのでお好みに応じてでよいでしょう。5作コンプリする場合は1作目から制作年順にどうぞ。2作目は飛ばしたいところですが、3作目を見るには2作目が必須なので頑張って見てやって下さい。

映画 第2シリーズ(リ・イマジネーション)

PLANET OF THE APES / 猿の惑星

2001年
120分
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旧シリーズ5作とは別に新しくリメイクされた作品。制作側ではリ・イマジネーションと言っているようです。旧シリーズとのつながりはないので、単独で見られる作品です。一応原作小説の映画化と言える作りで、ストーリーはオリジナルですが、惑星設定は原作準拠。原作と同じく主人公が訪れた猿の惑星は地球ではなく別の惑星。主人公が地球へ戻って来た時見た光景も原作と同じ。その点に関しては9作ある猿の惑星シリーズでは今作が一番原作に近いと言えます。だから今作のラストが1968年の1作目と違っても間違いではないのです、原作がそうなのだから。

映画 第3シリーズ(リブート3部作)

猿の惑星: 創世記

リブート1作目
2011年
106分
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これまでの6作とは別に新たにリブートして作られた3部作1作目。地球が猿の惑星になっていく様子を描いたもので、小説や1作目をリブートしたのではなく、内容的には旧シリーズ4作目「猿の惑星・征服」のリブートに近いと思います。ただしこれまでの6作とのつながりはないので、リブート3作だけで見られる内容になっています。チンパンジーのシーザーを主人公に据えて、シーザーの一代記を通して猿の惑星化を描く構成。今作は1作目と言うことで目覚め編、てところでしょうかね。映像も内容もSFとしてもレベルが高くてこれはお勧めです!

猿の惑星: 新世紀

リブート2作目
2014年
130分
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リブート3部作2作目。知性に目覚めた猿たちと絶滅の危機に瀕した人類がどうやって戦争状態になったかの話。3部作の中継ぎに当たるので、前作を見てないと分からないところもあり、さらに今作の内容が3作目の伏線にもなっているので、「創世記」から順番通りに見ましょう。

猿の惑星: 聖戦記

リブート3作目
2017年
140分
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リブート3部作完結編。今作では人間が何故動物化したのかが描かれます。2作目で激減した人類がさらに知性を失い、ついに地球が猿の惑星になる。世界が猿の惑星になる理由は原作とも旧シリーズとも違いますが、時代を反映した内容になっていて納得出来る。個人的には小説や旧作シリーズよりも身に迫ってガツンと来ます。

リブート3部作総括

このリブート版は他のシリーズとはつながっていない独自の3部作なので、旧作シリーズより先にリブート版から見ても問題ないです。しかも3作共に映像もドラマもレベルが高くて見応えのあるA級大作なので、どなたにも楽しんでもらえるのではと思います。中でも「創世記」は単独SFとしても秀逸で、猿の惑星に関係なく優れたSFを求める人にもお勧め。個人的一押し。

ところでリブート3部作と小説との関係ですが、小説とは全然別の物語ではあるけれど、実は世界観だけは小説と一致してるんですよね。これ以上は小説のネタバレになるので書けませんが、リブート3部作も小説世界に属する惑星の1つであると解釈することは可能なのです。それが「猿の惑星」ですから。だから旧シリーズの地球と違うところがあってもこれも確かに猿の惑星の1つなのです。

猿の惑星9作総括

旧シリーズ5作、リ・イマジネーション1作、リブート3部作、それぞれ独立しているのでどのシリーズから見ても問題ないと思います。ただし同じシリーズの中では制作順で見ましょう。作品タイトルがバラバラで通しナンバーがついてないためうっかりすると順番を間違えそうになるので、よく確認してからどうぞ。

小説派には1968年の旧シリーズ1作目と2001年のリ・イマジネーション版を見比べてみるのも面白いです。
社会派には旧シリーズを。公開当時の世相が反映されてます。そういう視点でなら「続・猿の惑星」も見られないこともない…。
SF派にはリブート版の「創世記」をお勧め。SFとして優れており、単独でも見られる内容なのがいい。
映像とドラマに重点を置く人にはリブート3部作をお勧め。シーザーの漢ぶりと迫力ある映像は最近のCGを見慣れた目にも見応え十分。

以上、小説ファン視点からのまとめと比較解説でした。

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