エイリアン:ロムルス

2024年
時間 119分
監督 フェデ・アルバレス

植民星ジャクソンで働くレインは劣悪な環境に疲弊し、元恋人のタイラーに誘われて別の植民星への脱走を試みる。だがそのためには冷凍睡眠装置が要る。5人の仲間と共に廃墟化した宇宙ステーションに乗り込み装置を入手しようとするが、そこには大量のエイリアンが眠っていた…。「エイリアン」と「エイリアン2」の間に起きたエピソード。

「エイリアン:ロムルス」見てきました。「エイリアン」から20年後の設定で、リプリーはまだ冷凍睡眠中ですね。それを意識してか、宇宙船のメカ類は(敢えてそうした?)80年代調になってます。ガシャンと押し込むスイッチ類、解像度の低いザラザラのモニター、最近のSFにありがちな空中浮遊ディスプレイは出て来ず、2142年設定とは思えないレトロフューチャーな内装。CGも控えめで、極力実写で撮るようこだわったらしい作り方。でもその分「重さ」みたいなのは感じられ、1作目の「エイリアン」を形を変えてもう一度映画館で見られた気分になりました。

原点回帰みたいな作品になってましたが、エイリアンに襲われるパターンには工夫も見られ、エイリアンを見慣れた人でもけっこうドキドキさせてもらえました。仲間が次々にやられていき、一難去ってまた一難がこれでもか!と続きまくるのは分かっていてもドキドキするよね。あとエイリアン全体へのオマージュも強くて、1978年のエイリアンだけでなく、前日譚であるプロメテウスやコヴェナントからの設定も生かされてます。単純にSFホラーとして楽しむのなら事前学習はいらないと思うけど、プロメテウスやコヴェナントも見ておくとより楽しめると思います。

原点回帰とは言え、今作で新鮮に感じたのがアンドロイドの扱い。エイリアンシリーズには常にアンドロイドがいて敵になったり味方になったりするのですが、ロムルスのアンディはひと味違った。レインの親がガラクタから拾ったポンコツだけど、レインにとっては大切な弟で、アンディもレインを守るために生きてる。しかしそこに…? エイリアンではあるけど、姉と弟の物語にもなっており、AIの宿命とそれを乗り越える姉弟の絆を感じ取れて興味深かったです。

しかし某ユタニ社は相変わらず駄目ですね…。お前が全ての根源じゃん!てところは今作でも健在。それを体現してくれるキャラも登場しますので、1978年のエイリアンが懐かしい人にはそれもお楽しみです。

<ネタバレ>

ユタニ社、リプリーがノストロモ号からたたき出したエイリアンを回収してたんだな…。お前らがエイリアンに滅ぼされるのは自己責任だろうけど、他人を巻き込むなと言いたい。ユタニ社のせいで巻き込まれた6人は悲惨なことに。

最後のアレも、仲間の1人が妊娠してる時点でこれも明らかに伏線だろう、この子が何らかの原因で終盤に恐怖の誕生をやらかすだろうと想像できたので、私には想定内でした(気持ち悪かったけど^^;)。「何らかの原因」がプロメテウス&コヴェナントに出てきたアレだったので、そりゃそうなるよなーと納得。しかしそんな中、他の作品にはなかった意外な展開と感動を見せてくれたのがアンディ。

廃ステーションの中に「エイリアン」に出てきたアッシュそっくりのアンドロイドがいたけど、名前が違うので同じタイプの別個体ですね。しかしやってることはアッシュと同じ。そいつ(ルーク)のチップでアンディのアクセス権を拡張したため、アンディは上書きされルークの支配下に入ってしまった。この時ぼんやり者だったアンディが別人のごとく変貌し、ポンコツから優秀にパワーアップする代わりにユタニ社の命令に従う冷酷なヤツになってしまう。映画感想から外れるかもですが、ここは役者さんの演技力にうなった。お見事でした。

レインはアンディを大切な弟と思いながらも、一時は見捨てようとしていた。しかし結局はアンディを助けに戻る。ルークのチップを抜いて、ポンコツだけど愛おしいアンディを。これはレインが自分の中のアンディを見つめ直す話でもあると思いました。同時にAIとの向き合い方も考えさせてくれて、そこは今の作品ならではだなと。80年代風にしてみても、時代の色は作品のどこかに出るものなんですね。

今、なぜエイリアン?と思う気持ちもあったけど、映画館(IMAX)で見てよかった。最後のレインはリプリーをオマージュし過ぎとは思ったけど、一周回って懐かしさが上回ったので個人的にはよし。