猿の惑星: 聖戦記

猿の惑星: 聖戦記 BD

2017年
時間 140分
監督 マット・リーヴス

猿と人間の戦いが続く中、シーザーの息子が新天地を見つけて帰ってきた。だが新天地へ移動する前にシーザーの基地に人間が侵入し悲劇が起こる。シーザーは侵入犯の大佐の行方を追うが、その間に群の仲間全員が大佐の基地に囚われてしまった。基地へ乗り込むシーザーだが、人間たちの様子もおかしい…? 生き残るのは猿か人間か。今、新しい時代が幕を開けようとしている──。

「新世紀」の続編で、リブート「猿の惑星」シリーズ3作目。シーザーの2人目の息子がまだ小猿なので、前作からまだ何年も経ってませんね。今作でもシーザーはイケメンでかっこいい!のですが、そんなシーザーにも心の闇と戦う時が来たのか。コバの影がつきまとう中でシーザーの葛藤が描かれる。シーザーもコバになってしまうのか、それとも心の試練を乗り越えられるのか?

猿VS人間は泥沼化して進展が見えないまま継続中の感じ。コバの部下が人間側に寝返って人間とゴリラが共同して戦ってる姿などを見ると、もう猿と人間の区別なんてなくなってるんじゃ?と思ってしまう。これはもう猿と人間と言うよりは考え方が異なる者どうしの戦いですね。シーザーの仲間が大佐の部隊に捕まって酷使される時も看守は人間じゃなくて猿だし。猿どうしで敵味方してると思えば、人間の方も実は…? この混沌具合が今作の肝かな。

大佐を追う旅の途中でシーザーは自分の群以外の猿に出会います。バッドエイプと名乗る猿は流暢にしゃべり、シーザーの周りだけでなく全世界的に猿インフルで猿が賢くなったことを示してくれます。映画が描いてるのはシーザー周辺のことだけど、世界中のあちこちで似たようなことが起きているんだろうと想像させてくれますね。

ドンパチも見どころですが、今作もドラマが深い。リブート3作はシーザーの一代記でした。人間と猿がどうやって入れ替わっていくのかも納得出来る設定で、SF好きも満足できるシリーズでした。

<ネタバレ>

人間側に寝返ったゴリラのレッドに脅されたウィンターがシーザーの隠れ家を密告してしまい、侵入した大佐にシーザーの妻と長男(新天地を見つけてきたブルーアイズ)が殺されてしまう。怒りに燃えたシーザーは新天地に出発した仲間から外れて大佐の後を追う。シーザーを案じるモーリスとロケット、ルカがついてきて道中の仲間となります。大佐への復讐に燃えるシーザーは無抵抗の人間を後から撃ったり、口のきけない少女(ノヴァ)を置き去りにしようとしたり、この辺からおかしかったですが、ウィンターの一件で自分もコバと同じになってしまったと悩む。しかし自分が群を離れていた間に仲間たちが大佐に捕まってしまったことでリーダー(群の責任者)として間違っていたことに気付き自分を取り戻す。

そこからシーザーとモーリスたちの仲間救出作戦が展開されるのですが、大佐が猿たちに壁を造らせていたのは実は人間どうしの争いのためだったのですね。猿インフルエンザが変異して人間を動物化するようになり、新型ウイルスの対応を巡って人間どうしにも対立が起きていたと言う次第。「聖戦記」とは大佐の戦いでもあった。新型ウイルス感染者を一掃させないと人類は終わってしまう。それが大佐の考え。しかしノヴァがシーザーに差し入れた人形から大佐も新型に感染してしまう。ノヴァも新型感染者だったから。

仲間を逃がした後、シーザーが大佐の所へ向かったのは自分の中に残る復讐心と対決するためでもあったろう。大佐に復讐をするのか、それとも思い留まれるのか。シーザーは思い留まった。シーザーは復讐心を克服した。大佐は理性が残っているうちに自決。基地の爆発で雪崩が起き、基地にいた人間たちは(多分)全滅。猿たちは木に登って生き延びた。シーザー周辺の人間はこうして滅びたが、いずれ新型ウイルスが世界を覆い、知的生物は猿だけになるだろう。かくして世界は猿の惑星になったのである。

新天地に辿り着いたシーザーの群はこれから新しい文明を築いていくのだろう。新天地を求めて大移動する猿たちが旧約聖書の「十戒」を思わせるところも興味深い。でもシーザーたちを見て思う。猿が人間になる必要はないのじゃないかな。小説や映画旧シリーズみたいに服を着て人間そっくりの暮らしをしなくてもいい気がする。猿にしか築けない人間とは違う文明を作って下さい。自分で自分を滅ぼすウイルスを作るような生物にはならないでね。人間と同じ過ちを繰り返すような進化ならしなくていいから。

「猿の惑星」は人間の風刺と皮肉を行う作品ですが、シーザーたちには風刺のためだけの存在になって欲しくない、自分たちのために生きる存在になって欲しい、そう思わせてくれるほどの存在感がありました。どのシリーズともつながってるようでつながってないリブートシリーズ。これも1つの可能性の物語と言うことでいいんじゃないですかね。

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