猿の惑星: 創世記

猿の惑星: 創世記 BD

2011年
時間 106分
監督 ルパート・ワイアット

ジェネシス社でアルツハイマーの薬を研究していたウィルは実験投与されたチンパンジーから生まれた赤ちゃん猿を引き取る。シーザーと名付けられたチンパンジーは母親に投与された薬の効果を引き継いだのか、生まれつき頭がよかった。しかしウィルの父を助けようとして人間を傷つけてしまい、霊長類保護施設に送られる。人間に育てられたシーザーは施設の猿たちに戸惑うが、やがて…?

これはよく作り込まれた見事な作品。2011年にリブートされた新しい「猿の惑星」シリーズの1作目です。ただしリブートとは言っても地球が猿の惑星になっていく様子を描いたものなので、原作小説ではなく、映画旧シリーズの4作目・5作目に相当する内容です。ストーリーは一新され新しい視点から描かれているので、旧シリーズを見ていなくても問題なく楽しめます。なお冒頭の猿が狩られるシーン(猿と人間逆バージョンね)など、旧シリーズのオマージュも入っているようなので、旧シリーズを知っていればなお楽しめると思います。

1作目ということで、まずはシーザーの目覚めの物語というところですが、シーザーの心理が丁寧に描かれてるので気持ちがどんどん入っていっちゃう。ウィルに懐いてる子ども時代、ウィルの父やウィルの恋人にも可愛がられ幸せだった時代をじっくり描いてくれてるので、そこからのシーザーの心の成長と変化にも無理がない。いつしかシーザー目線になって、猿たちにも気持ちが入って、気がつけばすっかり猿目線で「猿頑張れ!」になっているという…。

猿が賢くなる理由付けも理に叶っており、SFとしてもよく出来ている。ウィルの気持ちもよく分かるので、単純な皮肉には留まらず、いろいろ考えさせてくれます。科学のあり方と使い方についても問題提起してくれている作品。2011年作なので映像はさすがの出来。猿メイクはCGだと思いますが、表情はよく出てるし、姿勢などにも人間が着ぐるみで演じる不自然さがないのがよい。正直、旧シリーズはその辺は目を瞑って見てたところがありましたからね…。クライマックスのゴールデンゲートブリッジの立体アクションはCGならではのカメラ視点の自由自在さが見どころ。迫力です。

<ネタバレ>

旧シリーズ2作目の呪いを最初からなかったことにしてリブートしてくれたところが個人的には高得点。おかげで納得の完成度の作品になりました。ウィルの父は認知症で、ウィルは父を治したいと思っていた。そのため認知能力を上げる新薬ALT-112を開発したが、112の効き目は長くは続かなかった。112をより強力にした113を作ったのも父への思いから。今作のポイントはウイルス開発理由が「認知症の治療のため」だと言うことですね。ウイルスによるパンデミック系映画はこれまでにも色々ありましたが、理由が高齢化社会の抱える問題の反映であることに意味がある。そこに単純には善悪つけられない複雑さが生まれ、科学との向き合い方を考えさせてくれる内容になってます。

シーザーはALTを投与されたチンパンジーから産まれた。シーザーにはALTの効果が生まれつき備わっており、普通の猿より賢い。ウィルの愛情に包まれて育ちながらも自分は何者か考える。不測の事件から保護施設に送られ、初めは仲間の猿とも馴染めなくて家に帰りたくて辛い思いをするシーザーだが、オランウータンのモーリスやゴリラのバックなど少しずつ友だちもできて、やがてボス猿を倒して猿たちのリーダーになる。ウィルは何とか工面してシーザーを引き取りに来るがもうシーザーには戻る気はなかった。シーザーにも分かってきたのだと思う、自分が何者でどうするべきかが。

シーザーは猿たちを解放するために立ち上がる。ウィルの家からALTを盗みだし仲間に与える。「知」を得た仲間と脱出するシーザーですが、途中ジェネシス社に寄りますね。あれ、コーネリアのためですね。それで研究室のコバたちも一緒に国定公園へ行く仲間になるのか…。シーザーたちの脱出騒ぎを見てウィルが国定公園まで追いかけてきますが、シーザーは「ここが家」とウィルに告げる。シーザーは親代わりだったウィルから卒業して自分の居場所を見つけた。自分が何者で誰といるべきかを見つけた。ウィルもそれに気付き、シーザーたちを見送る。それだけならよかったのですが…。

ALT-113は猿には知能向上をもたらしたが、実は人間には致死ウイルスだった。ジェネシス研究員からパイロットへとALT-113は世界に広がり、猿は知能向上し、人類は…?

原因を作ったのは人間自身だけど、核戦争ではなくてバイオテクノロジーだと言うところが今の時代に合っていてリアル。猿の惑星シリーズではあるけれど、単独の警鐘SFとしても見ることの出来る秀作です。

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