新・猿の惑星
年 | 1971年 |
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時間 | 98分 |
監督 | ドン・テイラー |
テイラーの宇宙船で脱出したジーラ・コーネリアス・マイロ博士の3人は爆発の影響で過去の地球に飛んでしまう。そこはテイラーが出発して2年後の地球だった。人間が支配し猿はまだ話せない世界──ジーラたちにとっては猿と人間が逆転した世界。話す猿の出現に驚く人間たち。動物学者のルイスとスティービーがジーラたちの理解者になるが、ジーラたちを危険と見なす者もいた…。
「続・猿の惑星」の続編で、猿の惑星シリーズ3作目になります。あの衝撃の2作目のラストから続きを作るとは…。こういう時こそ伝家の宝刀「なかったことにする」を発動させればいいのに、真面目に2作目ラストの設定を引き継いで作っちゃったんですね。おかげであの珍迷作「続・猿の惑星」が猿の惑星シリーズから外せなくなってしまいました;;。
で、どうやって続けたかと言うとまさかのタイムトリップ。テイラーの宇宙船は不時着後チンパンジーのマイロ博士が引き上げて研究し動かせるようになっていたと言う設定。戦争が始まったのでジーラたち3人が宇宙船で脱出を試みたところ、爆発の影響で時空が歪み、約2000年前の地球、それもテイラーの時代に来てしまったという次第。そしてジーラたちの知る未来が人間に恐れを抱かせることになるのだから、3作目の展開に影響を与え続ける2作目恐るべし。
今作では1作目と立場を逆転させたところが面白いです。かつて自分が人間にしたことと同じことをされそうになるジーラたち。1作目から続けて見ると人間が動物にしてきたことを更に考えさせられます。傲慢な人間(大統領の科学顧問ハスラインとか)がいる一方で理解を示す人間たちもいるのが救い。サーカスのアーマンドはいい人ですね。「妻を侮辱されて黙っている男がいるか」はよかった。
以下は小説・1作目・2作目のネタバレも含みますのでご注意下さい。
<ネタバレ>
話すことが受け容れられていったんは人気者になるジーラたち。ホテルに住めるようになったり服を作ったりするところは、1作目ではそこまで描けなかった原作のシーンを猿・人間を逆転させた形で見せてもらえたようで嬉しかったです。そういえば社会に受け容れられた後で逃げなければいけなくなるのも原作の流れに似ていて、1作目の足りない部分を補完してくれているようなところもありますね。
ハスラインはジーラを酔わせて地球が滅ぶ未来を知り、ジーラとコーネリアスの子どもから話す猿が増えることを恐れる。地球の未来のために話す猿の種族を根絶させねばと考えるハスラインですが、いや待て、地球が消滅したのは猿たちのせいじゃなくて人間がコバルト爆弾作ったせいよ? しかも起動させたのテイラーよ? 猿じゃなくて人間よ? それもヤケクソになって衝動的にと言うしょうもない理由でよ? ハスラインに2作目ラストの真相を教えてあげたい。しかしジーラたちもそこまでは知らないのでハスラインに猿が天下を取ったせいだと思わせてしまう2作目どこまでも恐るべし…。
ジーラが侮辱されたことで事故が起こり、ジーラとコーネリアスは脱走する羽目になる。ジーラはサーカスに隠れて赤ちゃんを産むが、サーカスまでハスラインの手が伸びて、逃げた先でジーラ一家は全滅…と思わせて! 実はサーカスでジーラの子どもが取り替えられていたのですね。初見時は予備知識全くなく見たおかげで素直に「あっ」と言わせてもらえました。生き延びた赤ちゃん(ジーラにマイロと名付けられた)にこれからの展開を予感させてくれる終わり方、好きです。
人間の風刺や皮肉をやりながらも、ジーラたちのキャラが立ったおかげで、ジーラたち&猿たちの物語としても楽しめるようになった猿の惑星シリーズ。問題の2作目からスタートを切り直した今作は地球を舞台にした新しい物語の幕開けともなりました。これから紡がれる猿と人間の物語はどこへ行き着くのか。それを見届けてみるのもシリーズの面白さです。