ゴジラ-1.0

2023年
時間 125分
監督 山崎貴

第二次世界大戦で特攻から生き延びた敷島浩一はそれで苦しんでいた。しかし焼け跡で出会った典子と戦災孤児の明子の3人で暮らすうちに浩一の生活も少しずつ復興していく。だが1947年、戦後復興の最中にゴジラが出現、日本を襲う。再び戦争の悪夢に襲われる浩一だが、ゴジラに立ち向かうことで自分の中の"戦争で壊されたもの"と逃げずに向き合うことになる。

新作ゴジラ見てきました! 予告編を見て「これは行けるかも?」と期待してましたが、期待以上の素晴らしさでした! 2014年のハリウッドゴジラ登場以来、日本のゴジラはどうなるのだろう…と心配してましたが、ついにやってくれましたね。これならCG・特撮面でもハリウッドゴジラと十分に肩を並べられるし、何よりも物語がちゃんと「大人の映画」として成立しているところに大きく感動しました。

ハリウッド以降の邦画ゴジラとしては「シン・ゴジラ」がありますが、あれは変化球だった。新鮮ではあったが(もちろんそれはそれで面白いけど)、直球で勝負するにはまだハリウッド版には及ばないんだろうなと言う印象だった。それに変化球は何回も使える技じゃない。いつかは直球で勝負しなければいけない時が来る──その杞憂を今作は見事に晴らしてくれました。まさに直球勝負のこれぞ本家ゴジラ!な作品に仕上げてくれた制作陣に感謝したいです。

そして今作の大きな特徴はまっとうな「大人の映画」に仕上がっていることですね。ゴジラ映画はシリーズがリブートされる度に大人の鑑賞に堪える作品を目指してきた感がありますが、それでもどこか大人の映画にはなりきれないところがあった。「シン・ゴジラ」は過去作に比べたら大人の見られる作品になっていたが、変化球ゆえ過去作が目指したものとは違う方向性だった。今作はその壁を打ち破ってくれました。人間ドラマの作り込みが過去作とは次元が違い、それだけでも見られる作品になっている。戦争に行って生き残った人が、自分だけが生き延びたことに罪悪感を感じるという話は聞いたことがありますが、今作を見てその気持ちが少しは分かった気がします。

そしてゴジラ! ゴジラが怖い! 半端なく本気で怖い! さあ恐怖の大迫力破壊シーンを存分に味わって下さいぃ~。今作の舞台は1940年代で1954年のゴジラよりも時代が早いのですが、内容的には1954ゴジラを踏襲していると思います。1954年に映画館でゴジラを見た人たちもこんな怖さを感じたのかなと思いました。1954ゴジラの再現みたいなシーンがあるけど、俯瞰で全体像を追うのではなく襲われる側からの視点が新鮮。これまでゴジラはいろいろなものの象徴になってきたけど、今作のゴジラは戦争の亡霊ではないだろうか。主人公の心の傷とリンクし、浩一の中の"終わらない戦争"そのもの。ドラマともバランスよく融合出来ていて、怪獣映画として一級品の出来になっていたと思います。

これは万人にお勧め。作品の完成度が高いので、誰が見ても楽しめると思う。私の中では歴代ゴジラの中で最高傑作です。公開中の作品なのでストーリーに関係する感想はネタバレで。

<ネタバレ>

最初の舞台は1945年。特攻から逃げてきた浩一が着陸した大戸島で恐竜のような生物が出現。島に伝わる「呉爾羅」と言う生物で、この時点ではまだ15m程度。呉爾羅のせいで浩一と整備兵の橘以外は全滅。橘は浩一のせいだと怒るが、このシーンは「特攻仲間は死んだのに自分は逃げて生き延びてしまった」こととも重なる描写だと思います。

戦後、浩一は自分だけが生き延びた罪悪感に苦しみ続ける。典子と暮らしながらも自分は幸せになってはいけないとの思いから結婚に至れない。それでも典子と明子との疑似家庭が浩一を癒やしていたのは確かで、ようやく浩一がそのことを考え始めた矢先──核実験で「呉爾羅」から50mに巨大化した「ゴジラ」が再び浩一を襲う。今度は浩一を庇った典子を吹き飛ばすという形で。これはキツい。浩一はゴジラによって2回も「自分だけが生き残る」を味わわされることになる。浩一にとってゴジラは自分の傷の具象化そのものだ。これと立ち向かい戦い克服せねば自分の中の戦争は終わらない。

まだ自衛隊のない時代、残っている軍艦を中心に海洋でのゴジラ討伐作戦が始動。これまでゴジラvs人間と言えば陸上が中心だったので、これは新鮮でした。話の成り行きから考えると自然な流れですが、そーかー海って発想は今までなかったよねーと感心してしまう。作戦内容もオキシジェンデストロイヤーとかじゃなく、もっと現実的。ただゴジラのことだ、想定外のことはいくらでも起こり得る…。

浩一は橘を捜して幻の戦闘機「震電」を整備してもらい、ゴジラへの特攻を試みる。それは特攻できなかった自分、生き残った自分への罪悪感との戦いでもあったが、特攻後にちゃんと脱出できていたのにホッとしました。ゴジラ(自分の中に残り続けている戦争の亡霊)を倒すことで己のトラウマを克服し、生き延びることを肯定できるようになったことでやっと浩一の戦争も終わった。だから「生きて抗え」なんですね。死ぬことではなく、生きることこそが大切であると。

私はゴジラは怪獣プロレス世代ですが、こういうゴジラも見たかったという思いはずっとあった気がする。ハリウッド後、今ようやく日本のゴジラもスタート地点に立てた(シンゴジは変化球なので、直球のゴジラではという意味)。邦画ゴジラのこれからに期待します。

ところで。今作はシリアス超怖ゴジラですが、往年のゴジラファンを喜ばせる仕掛けもちょろっと。典子の件とか、ラストでゴジラの細胞がドックンしてみせるところとか、お約束もちゃんと入れてきてくれてます。楽しみが広がる作品です。