GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 BD

1995年
時間 82分
監督 押井守

企業のネットが星を被い電子や光が駆け巡っても国家や民族が消えてなくなるほど情報化されていない近未来。電脳化と義体で強化された公安9課の草薙素子は仲間と「人形使い」と呼ばれるハッカーを追っていた。メガテク社から逃げ出した義体の補助電脳にゴーストらしきものが見つかり9課で調べていたところに外務省の公安6課が回収にやってくる。だがその裏には…?

強いお姉さんが好きなので、素子もかっこよくて好きです。スカパーが録画できるようになってから、ひたすら録画のチャンスを待つ。しかしやっと流してくれたあ!と思っても2.0ばかり。実はこの作品には一部を3DCG化してリニューアルされた2.0と呼ばれるバージョンがあります(2.0は2008年公開)。でも私が欲しいのは2.0ではなくて1995年のオリジナルなのよ! 手書きの素子のボディラインが素晴らしいので、どうしてもオリジナルが欲しい。いつになったらオリジナルを流してくれるのだろう、いつまで待てばいいのだろう…その時、ハッと気付く。放映されるのを待たなくてもBD買えばいいんじゃね? そうだっっ買うという手があったかー!! 録画に慣らされて「買う」を失念しておりました(笑。ということで今はBDが我が手に。

初鑑賞以来、ずっと画に魅せられてきました。改めて見直してもそれは変わらず。冒頭の素子のボディが作られていく過程はいつ見ても惚れ惚れする。リアルにデッサンされた人間の動きがしっかり誤魔化しなく描かれてるのもいい。画の構成、カメラワーク、メカの動き、背景が醸し出す世界感に至るまで痺れさせてくれる。これはもう理屈ではなく「脳にくる」感覚。芸術画を鑑賞するのに似た感覚と言おうか。正直、初めて見た時は話の内容は半分も理解できなかったが、画にそれを補って余りある魅力があふれていた。アニメって素晴らしい。

で、本当ならこっちの方が本題かもしれない話の内容ですが(^^;、電脳化というのを行って脳が直接ネットにつながる世界ですね。頭にスマホが入ってる感覚か。だけど弊害もあって、脳がネットにつながるなら、脳がハッキングされる恐れも出てくるわけですよ。それで「人形使い」という呼び名のハッカーがパソコンならぬ脳をハッキングしてまわり、偽の記憶を入れて人々を操る、と。セキュリティ大事よ、セキュリティ。

義体化はサイボーグと同じ意味。全身義体の素子は脳以外機械化したサイボーグということです。サイボーク化で人間とは何かを問うのは009でもやってたけど、今作では記憶まで不確かになることで、更により深く「自分とは何か」にまで掘り下げてます。

<ネタバレ>

「人形使い」の正体は外務省が開発したプログラムだった。外務省ではそれはプロジェクト2501と呼ばれていた。2501はネットで工作を繰り返すうちにゴースト(自我、自意識)が芽生え、自分を生命体と認識して逃走。2501が9課に「亡命」したのは素子と融合するためだった。2501はかねてから素子に注目していたのだ。素子は2501と融合、バトーの協力を得てネットの海に消える。

人間とAIが融合という発想がすごいですが、この世界のネットでは素子と2501の「子ども」が増え続けているのだろうか…それもすごいですが。AIが自我を持ったら…というSFはたくさんありますが、こういう方向に行ったのは珍しいかなと思います。最初に見た時は馴染みない言葉や難しそうなやり取りに惑わされてよく分からなかったけど、要はAIの婚活だったのね!?

素子が2501と融合したのは、それが素子のこれまでの悩みや迷いに対する答だったからでしょう。私は「意識」と自覚できるものならデジタルでもアナログでも同じだと思っている。入れ物や場所(脳内とかサーバー内とか)には関係なく。大事なのは自覚できるかどうかであって、オリジナルかコピーかではない。自覚できればそれは全て本物ではないかな(この辺「順列都市」感想と被るけど^^;)。記憶が本物かどうかはそれとはまた別の問題。

私たちの世界では脳はネットにつながっていませんが、スマホが電脳と同じ役目を果たしている今日では、今作の状況はもうフィクションとは言えなくなっていると思います。フェイクニュースに踊らされるのはネットを通じて操られているのと同じことではないだろうか。自分のスマホやPCが乗っ取られて他人に迷惑をかけたら清掃業者の男と同じになってしまう。セキュリティという防壁をしっかり守り、ネットの海で自分を見失わないようにやっていきたいものです。

2.0について

2008年公開。内容はオリジナルと同じです。画質・音楽を向上させたという感じですが、3DCGに差し替えられた部分がセル画と合ってなくてやっぱり違和感があります。しかもその3DCGのレベルがあまり高くなくて、最新のハリウッドCGを見慣れている目には物足りなく、手書きの素子の体の線に惚れていた者にはもはや劣化別物状態。せめてセル画調3DCGならまだ見られたと思うのに…。

あと「人形使い」の声が男性から女性に変更されています。AIに性別はないのでどっちでもいいと言えばいいのですが、「人形使い」の望みが子孫を残すことなので、その目的ならば男性声の方がしっくり来る気がします。多様性を得るための仕組みとしてオスとメスが存在することからも。それと女性の体で男の声という異様さにインパクトがあるので、女性の体に女声では当たり前過ぎて斬新さがなくなり凡庸に感じるんですよね。

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