ロボコップ(2014年)

ロボコップ(2014年) BD

2014年
時間 117分
監督 ジョゼ・パジーリャ

2028年のデトロイト市。オムニコープ社は世界各地に自社のロボットを軍事配備してきたが、アメリカではドレイファス法に阻まれて国内配備できないでいた。法改正を目論むオムニコープ社はサイボーグ警察官を生み出すことでロボットを嫌う世論を味方につけようとする。事故で重傷を負ったアレックス・マーフィ刑事がロボコップとして蘇り、犯罪を一掃していく姿に一躍ヒーローとなるが…。

旧シリーズ3作から21年の歳月を経てリメイクされた新ロボコップ。さすがに2014年作だけあって、よりスマートにスタイリッシュにブラッシュアップされたロボコップになってます。旧シリーズのガシャンガシャンウィーンウィーンの鈍重さから、キュッキュッとスピーディに走り回り機動力も大幅アップ。パトカーではなく専用のモーターサイクル(ポリスクルーザー)を駆って高速移動、警察の全データと連動し情報を素早く検索しながらたちどころに犯人を追い詰める。

オムニコープ社のロボットは我らがED-209もCGでスムーズな動きになり、軍事ロボットらしい存在感も出てきました。それでもひっくり返るとやっぱり愛嬌ある姿になってしまうのは元々のデザインのせいかしら(笑。けど今作の注目ロボットはED-209ではなくEM-208の方。人型で、中に人の入ってないロボコップという感じ。こいつはサクサクとスピーディに動くので、ロボコップもこいつと同じくらい素早く動ける必要があったと思われます。

しかし国外では大活躍の自社ロボットが国内では世論と法に阻まれ使えないのがオムニコープ社の不満。じゃあ見た目EM-208に似てても中身人間なら問題ないだろ!と開発したのがサイボーグ警察官。オムニコープ社の目的はサイボーグでロボットへの嫌悪感を払拭して法案を廃止させることなので、今作のロボコップは最初から人間と認められてのスタートになります。そのため妻子との関係も旧シリーズとは違ってきます。私もそれに習って今作のロボコップのことは基本アレックスと呼ばせてもらいますね。

世界観が広がっているのも旧シリーズと異なる点ですね。旧シリーズはデトロイトを架空の未来都市にして、その中でロボコップの活躍を描くというスタイルでした(バットマンのゴッサムみたいな)。今作の舞台はデトロイトに留まりません。アメリカだけでなく、テヘラン、中国と地球規模に膨らむ。グローバルな時代に置ける国と企業のあり方までちょっと考えさせてくれました。

<ネタバレ>

銃の密売を追っていたアレックスは組織のボスのバロンに車を爆破され瀕死の重傷を負う。ノートン博士の手でサイボーグになるのですが、今作では妻のクララに承諾を取ってから手術にかかってます。妻に対しては治療という名目なのですね。サイボーグ姿で妻と息子に再会し、この姿でも夫であり父であり家族であることを確かめ合う。相棒のルイス(今作では男性)も姿に関係なくアレックスが戻ったことを喜んでくれた。

しかしオムニコープ社の望む性能を持つには感情が妨げになるとして、アレックスは感情を抑えられてプログラム通りに動くロボットのようになってしまう。オムニコープ社にとっては表向き「人間」であれば中身はマシンでも人間でも関係ない。社の広告塔として用を果たしてくれさえすればいいのだから。オムニコープ社に調整されていた時、最初は白だったアレックスのボディは知覚を操る戦闘モードを加えられた時から黒に代わります。

アレックスはヒーローになり、オムニコープ社の狙い通りの活躍をするが、クララは気付く。あれはアレックスじゃない──。アレックスに会わせてもらえないクララは捨て身で訴える。クララの思いに抑えられていたアレックスの心が復活。自分の事件を調べてバロンを逮捕しに行き、そこから警察本部長のバロンとのつながりも暴く成果を上げる。でもオムニコープ社にしたらこれ以上好き勝手に動かれては困るんですよね。そこでアレックス始末という流れになるのですが、ここでノートン博士が目覚めてくれる。元々義肢の技術を軍事に使うのは嫌な人だったしね。ルイスたちもここで活躍だっ。

ラスト、オムニコープ社長と対決する時、「赤いマーカーは撃てない」にどう対処するのかなと思ったら、家族への"愛"で打ち破りましたかー。ここは「プログラムを打ち破った=ロボットではない証明」と受け取りました。人間は縛れない。それが人である証だと。ノートン博士はアレックスを治す時、黒ではなく最初の白のボディに戻す。思えば黒ボディは「オムニコープからの支配」を表してましたね。白ボディに戻ったことで心身共に人間を取り戻したのだと解釈。これはアレックスが支配から自身を取り戻す物語でした。旧シリーズとはまた違うアプローチから人が人であることを描く作品になっていたと思います。

企業の都合と世界

旧シリーズもそうでしたが、ロボコップが生まれる背景にあるのは全て企業の都合。旧シリーズは自社の利益のための企画を社内の2人が争ったのが発端です。治安云々もオムニ社にとって都合がよくなるように街の状況を利用しているだけで、オムニ社が本気で治安の心配をしているわけではないでしょう。ロボコップは企業の広告塔であり、用をなさなくなったら不要になるという構図は新旧とも同じ。ただそこには時代も反映されるので、それが新旧の違いになってる。旧シリーズは1つの都市の中で話が済んだが、グローバル化した世界では国も関係してくる。ニュースキャスターにその皮肉が込められていて面白い。その意味でも2014年のロボコップとして意義はあったと思います。