ノア 約束の舟

ノア 約束の舟 BD

2014年
時間 138分
監督 ダーレン・アロノフスキー

神が創ったアダムとイブから人間は増え地に満ちたが悪行も増えた。ノアは神の創造物を守り続けたセトの子孫。ある時ノアは神の啓示を受け大洪水で人間が滅ぶことを知る。汚れなき動物たちを助けるためノアは箱船を造る。だが大洪水で人々が水に沈む中、アダムの長男カインの子孫の男が箱船に密航していた。ノアの家族にも問題が持ち上がり、神の意志・密航者・家族の問題の間でノアは決断を迫られる──。

ハリー・ポッターのエマ・ワトソン(ノアの長男セムの妻イラ役)が出ると聞いて見た作品。旧約聖書のノアの箱舟を映画化したものですが、オリジナルの人間ドラマを主軸に置いたスペクタクルエンターテイメントになっています。シネフィルWOWOWで「十戒」と一緒に流してくれていたので数年ぶりに見直してみました。

人間ドラマがメインになってるだけあって、今作の神様は「十戒」の神様よりは優しい。大洪水は変えられないけど、人間には神の言いなりではなく自分の意思ももたせてくれている。カインの子孫が密航するのも聖書にはない出来事ですが、密航者の「自分の意思で生きるのが人間だ」には共感できる。アダムの長男カインは弟のアベルを殺して追放されるのですが、そのカインの子孫を箱船に乗せたのには「善も悪も全て含めて人間を肯定したい」という制作陣の気持ちが入っているような気がします。

2014年作なのでCGはさすがの迫力。特撮の限界を越えて見たことない世界を見せてくれるCGもやっぱり素晴らしいし好き。人間は人海戦術で増やせても動物たちの大集合までは無理だし、洪水も大波も今のCG技術だと不自然さがなくていい。あと、今作オリジナルだと思うけど、番人と呼ばれる岩の巨人みたいなクリーチャーも出てきます。かつては光の天使だったけど、人間に手を貸した罪で地に落とされて泥に覆われた姿になったという設定。ノアの先祖が番人に味方したということで、箱船を造るのを手伝ってくれます。聖書にこんなクリーチャー必要かという考えもあると思うけど、ノアの家族だけであれだけの船を造るのも無理があると思うので、説得力とのバランスを考えたらまあいんじゃないかと。確かにコレのおかげですっかりファンタジーになっちゃってますけど。

<ネタバレ>

聖書ではノアの家族は全員いい人(言い換えれば神様に従う人間)みたいですが、今作のノアの家族は人間性に満ちてて誘惑にも迷う。次男のハムが彼女を欲しがるのは当然だし、やっと見つけた女の子をノアに見殺しにされて怒るのも分かるし、父への反発からカインの子孫を船に引き入れてしまう複雑な心情も分かる。カインの子孫はイブを誘惑した蛇の役割を果たしているようにも見え、ハムにノアたちとは違う道を示す。

長男セムの妻イラは子どもの時受けた傷が元で子どもの産めない体だった。だがノアの祖父の祝福を受け、大洪水が来た後で妊娠が発覚。ノアは神の意志に従って、動物だけ救い人間は残さないつもりだった。神に従おうとするノアは子どもが女の子だったらまた人間が増え出すから殺すと言い、家族に軋轢が生じる。聖書ではノアの家族からまた人間が増えることになっているので、どんなにノアが固執しても最後はイラの子どもを許容するのは分かっているのですが、そこに今作のポイントがあったと思います。

今作の神はノアに選択肢を用意していた。人間は滅ぶべきか、存続していいのか。それを試すのがイラの子ども。イラの子どもをどうするかで、ノアに人間の今後を決めさせたのです。人間がどうなるかを決めるのは神ではなく人間自身。神は導くけど最後の最後は自分の意思で判断せよと。聖書原作でこういうことをやるのが良いのか悪いのかは分かりませんが(基本旧約聖書は神様が絶対だから)、自分の意思を持つのはいいことだと思う。神の言いなりになって自分を失うよりはいい。「十戒」のモーゼなんて前半は生き生きしてたのに、後半神様の操り人形になってからは人としての魅力が急速失墜しましたからね。双子の女の子を殺せなかったノアは神の意志に背いてしまったと嘆くけど、人間らしくていいと思うよ。家族から去ったハムも含めてね。

ところで山籠もりしてた異常に長生きなノアの祖父ですが、てっきり神が祖父の姿で現れてたのかと思ってたけど、調べてみたら本当に超長生きした人として聖書に載ってたんですね(汗、Wikipediaによれば969歳まで生きたとか…ええええ~。子どもの時に読んだ子ども向けの聖書物語にはそこまで出てなかったので知らなかった…!

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