キング・オブ・エジプト

キング・オブ・エジプト BD

2016年
時間 127分
監督 アレックス・プロヤス

神と人間が一緒に暮らす古代エジプト。オシリスが息子ホルスに王座を譲る時、オシリスの弟のセトが乱入、オシリスを葬りホルスの両目を奪い王座に着く。セトの圧政の元、人間のベックは恋人ザヤが信じるホルスのためにセトの宝物庫からホルスの目を盗むが、逃亡中にザヤが死亡。ベックはホルスに協力する代わりにザヤを生き返らせてもらう取引をする。ホルスはセトから王座を取り返すために、ベックはザヤのために、2人の冒険の旅が始まる──。

神話の神々をモデルにした冒険ファンタジー。王道直球ストレートの単純明快勧善懲悪ストーリーですが、でもそこがいい。悪が悪であり正義が正義であり愛が愛である明快さにむしろホッとさせられる。頭空っぽにしてアクションを楽しむ作品はこれぐらいがちょうどいい。古代エジプトなのにSFかと見紛うような大都会っぷりも、これぐらいやってくれた方が夢があって楽しい。地球を球ではなく平らな円盤にしてしまう潔さも意表を突いていて面白い。

天空の神ホルスの成長物語ではありますが、語り手を務めるのはコソ泥青年のベック。ベック(人間)とホルス(神)のコンビが上手いバランスを取っています。セトに目を奪われてからは絶望して引きこもりになっていたホルスが人間ベックの頑張りに心を開かれていく展開はお約束でも気持ちいい。今作の神は人間より一回り大きくて(ちょっと巨人ぽい)人間との見た目の区別を分かりやすくしてるのですが、大きな神に見下ろされながらも物怖じせずに渡り合うベックの姿に人間の逞しさを感じさせてくれる効果も出してると思います。神話系は聞き慣れない名前も出てくるので、登場人物もちょっと整理。

主な登場人物
[神]
ホルス:天空の神。どこまでも見通す「隼の目」を持つ。
オシリス:エジプト王。ホルスの父でラーの息子。
セト:オシリスの弟。砂漠を治めていた。
ハトホル:愛の女神。ホルスの恋人だったがセトが王座に着いてからはセトの妻に。だが…?
トト:知恵の神。スフィンクスの謎を解くためホルスたちと同行。
ラー:太陽神。世界の上空で闇の怪物アポピスを抑えている。
ネフティス:夜の女神。最後までセトに抗う。
アスタルテ:セト側。オシリスの最初の神殿跡で巨大なモンスターに乗ってホルスとベックを襲う。
アナト:セト側。アスタルテと同じく巨大なモンスターに乗ってホルスたちを襲う。
[人間]
ベック:コソ泥の青年。セトに奪われたホルスの片目を盗んで取り返す。
ザヤ:ベックの恋人。セトの圧制下でもホルスを信じている。

<ネタバレ>

基本的にはホルスはセトをやっつけてエジプト王になりました!めでたし!めでたし!なのですが、道中には暗示的なエピソードも入っており、アクションだけでない楽しみもありました。

信じる神

ベックがセト神殿の設計士と対決する時に「信じる神を誤ったな」というやり取りがあるのですが、「信じる神」とは自分の信じる信念・考え方に通じていると思う。ホルス側につくか、セト側につくかは、そのまま自身の考え方・あり方を表しており、人間にとっての「神」とはその象徴とも捉えられる。

ラーの試練

ラーは2人の息子オシリスとセトに試練を課した。王座に固執しないことでオシリスはラーの試練に合格したが、支配欲から逃れられなかったセトはラーまで倒し、結局最後は全てを失うことになった。
ホルスは片目だけ戻ったものの、片目では全力を出せないと思っていた。しかしベックがもう1つの目を取り返してホルスに投げて寄越した時、ベックが滑り落ちて、ホルスは目を受け取らずベックを助ける方を選ぶ。その時力が戻り、ホルスは自分の力の本当の源は目ではなかったことに気付く。民を守ることだったのだと。片目のままセトを倒し王になったホルスに民の少女が(その娘が拾ったと思われる)目を差し出して、最後にホルスは両目を取り戻す。

セトはホルスの目だけでなく、トトの脳、オシリスの心臓、他の神の翼など、神たちの"力"を集めて全部自分の中に取り込もうとしていました。この辺も自分の「隼の目」に固執しなかったホルスと対照的でしたね。寓話的な話に説得力をもたせられるのが神話系のいいところ。面白かったです。

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