十戒

十戒(2枚組) BD

1956年
時間 220分
監督 セシル・B・デミル

紀元前、ヘブライ人がエジプトの奴隷だった時代。ヘブライ人に救世主が現れるとの予言からエジプト王はヘブライ人の赤子を殺させた。それを逃れるため密かに川に流された赤ん坊がエジプト王女に拾われ、王子モーゼとして育てられる。しかし自分が奴隷の子だったと知ったモーゼはヘブライ人を救うために立ち上がる。神の導きで奴隷から解放されてエジプトを脱したモーゼたちは十戒を手に入れ、約束の地を目指すのだった──。

旧約聖書のモーゼの十戒の部分を映画化した一大スペクタクル巨編。子どもの時映画館で見た記憶があるのですが、調べてみたらアメリカ公開が1956年、日本公開が1958年で、どちらにしてもさすがの私でもまだ産まれてません(汗。なのでリバイバル上映かなと思うのですが、一緒に見た親が「海割れ」に超期待してワクワクしていたので(確かに当時の特撮としては見たことない凄い映像だったと思われる)私のいた地方では初めての上映だったのかもしれません。

そう、特撮! 聖書が元ですが、いい大人が胸躍らせるくらいの特撮スペクタクルだったのです。シネフィルWOWOWで流していたのでこの機会にちゃんと見直してみました。目玉の特撮シーンは今でもよく覚えてて、「川が血の色」「地面を這う死の霧」「今作最大の大目玉:紅海が真っ二つに割れて民族大移動」「神が岩に十戒を焼き付けるところ」等々、ああそうだった、こんなだったーと懐かしく楽しみました。

合成がうむっ…て所もないではないけど、CGではないロケやセット、大量の人海戦術は今見ても迫力があります。特撮が売りだったけど(おかげで聖書をよく知らない子どもでも楽しめた)、大人になってから見ると人物描写にもなかなか味わいありますね。子どもの時は単純に悪者に思えたラメセスの心情が分かったり、ネフレテリの女心に感じるところがあったりで、エジプト勢も魅力的。むしろ後半神化していくモーゼより人間味あっていいぞー(笑。

聖書系もややこしいので整理のため登場人物メモ置いておきます。

主な登場人物
[ヘブライ]
モーゼ:ヘブライ人だがエジプト王子として育つ。神と出会い預言者モーゼとなる。
ヨシュア:石工。
リリア:水くみ娘。
アロン:モーゼの兄。
ヨケベド:モーゼの実の母。
ミリアム:モーゼの姉。モーゼがペシアに拾われるのを見届ける。
デーサン:ヘブライ人だが奴隷の総督に収まる。
チッポラ:羊飼いの娘。モーゼの妻。
[エジプト]
ラメセス:セティ1世の息子。3代目ファラオ。モーゼと兄弟同様に育つ。
ネフレテリ:モーゼと愛し合っていたがモーゼが追われてラメセスの妻になる。
セティ1世:ラメセスの父。2代目ファラオ。
ペシア:セティ1世の妹。モーゼの育ての親。
メムネット:ペシアの召使い。モーゼの秘密を知っている。
ラメセス1世:ラメセスの祖父。救世主を恐れてヘブライ人の子どもを殺させた。

<ネタバレ>

エジプト王女ペシアは夫に死なれ子どももいない寂しさから、川で拾った赤子をヘブライ人と知りながら息子として育てる。その秘密を知っているのは侍女メムネットだけ。しかしモーゼが王の跡継ぎに決まりそうな時、奴隷をエジプト王にしたくないメムネットはその秘密をネフレテリに打ち明けてしまう。そこからモーゼも自身の出生を知ることになる。が、セティ1世が意外に立派な人物で、モーゼがヘブライ人だとバレた時、出生については問題にせずモーゼの行動が反逆かどうかだけを問うた。セティ1世は実力主義者で人を見る目があり、実の息子ラメセスよりモーゼを評価していた。彼ならモーゼがヘブライ人でも、反逆でなければ実力評価で次代ファラオに指名した気がする。

モーゼにはネフレテリが願ったようにエジプト王になって王の政治力でヘブライ人を奴隷から救うという道もあったと思う。でもそれをやったら聖書と違ってしまうのでやっぱり無理だったかな。個人的には後半の神様の言いなりになってるモーゼより、自分の知恵と工夫で人心を掌握しエジプトもヘブライも良くしようと努力していた王子時代のモーゼの方がよかったので、そういう展開も見てみたかったです。まあ無理ですけど;。

自分よりモーゼが評価されるの嫌~というラメセスの心情は定番ですが、分かるよ、うんうん。傲慢なくせに器が小さいラメセスはどうしたってモーゼに勝てなかったけど、この経験を生かして今後は少しは王様力アップしてくれるといいな…と願います。ネフレテリはラメセスに復讐していたように見える。王になりたかったラメセスにモーゼとの仲を裂かれしかたなく妻にされ、でも心ではずっとモーゼを思い続けて、しかしモーゼの息子を助けてあげたのに自分の息子は助けてもらえず…貧乏くじ引きっぱなしで報われない女の愛と憎しみがよく描かれていて思わず気持ちが入りました。

基本的にモーゼ側は旧約聖書を捻らず素直になぞっていたと思います。省略されているところもあるけど、神様のやることはだいたいあんな感じ。そこは突っ込んではいけない。そういうものだから。聖書入門としてもいいんじゃないでしょうか。

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