甲賀忍法帖
著者 | 山田風太郎 |
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400年の長きに渡り憎しみいがみ合っていた忍びの里、甲賀の卍谷と伊賀の鍔隠れ。だが甲賀の頭領甲賀弾正の孫息子・甲賀弦之介と、伊賀の頭領お幻の孫娘・朧が恋仲に落ち、2人の熱意に押される形でさしもの両里もついに和睦を考えんとしていたその矢先――。徳川家康から命が下り、三代将軍の命運をかけて両里は戦わねばならないことに。選び抜かれた10人の精鋭たち、総勢20人の死闘がここに繰り広げられる。勝つのは甲賀か伊賀か、そして弦之介と朧の禁じられた恋の行方は――。
山田風太郎の傑作忍法小説。
映画「SHINOBI」について書いたなら、本家大元についても触れておかねばならないでしょう、ということで。初めて読んだのは子どもの頃だったので、最初の読了本は実家にあったはずなのですが、帰省のおりに探してみたけど見つからず。ということで、本屋で見つけた文庫本を新しく購入し直してきました。
今読み直してみて思ったのですが、こんな昔によくもまあこれだけ現在のハリウッドも真っ青のエンターテイメント傑作が存在していたものだとあらためて驚き。その発想の大胆さ、アイデアの奇抜さ、練りこまれたストーリー、それでいて息をつかせぬ展開、悲惨・悲恋でありながら、それを上回るアクションものとしての痛快さ、面白さ。やっぱり山田風太郎は最高ですー。
では、正しいエントリーメンバーを。
甲賀 卍谷(まんじだに)十人衆
甲賀弾正(こうがだんじょう)、甲賀弦之介(こうがげんのすけ)、地虫十兵衛(じむしじゅうべえ)、風待将監(かざまちしょうげん)、霞形部(かすみぎょうぶ)、鵜殿丈助(うどのじょうすけ)、如月左衛門(きさらぎさえもん)、室賀豹馬(むろがひょうま)、陽炎(かげろう)、お胡夷(こい)
伊賀 鍔隠れ(つばがくれ)十人衆
お幻(げん)、朧(おぼろ)、夜叉丸(やしゃまる)、小豆蝋斎(あずきろうさい)、薬師寺天膳(やくしじてんぜん)、雨夜陣五郎(あまよじんごろう)、筑摩小四郎(ちくまこしろう)、蓑念鬼(みのねんき)、蛍火(ほたるび)、朱絹(あけぎぬ)
ということで、物語の大筋は甲賀・伊賀の忍法十番勝負!なんですが、そこは忍び、闇討ち・騙しあい・策略・陰謀が交錯し、複雑に絡みあうストーリー展開は先が読めそうで読めません。まさかこの人があの人に…!な意外性もふんだんですので、すごく楽しめます。
メインの忍法は忍術というよりはもはや超能力の域に達してます。時代ものエスパー物語、な感覚で読むといいかも。クモ人間、人間芋虫、ゴムマリ人間、溶解人間、昆虫使い、吸血鬼、不老不死…、さながらエイリアンか仮面ライダーの怪人か…!て感じです。
しかしそんな奇ッ怪な(←山田風太郎的言い回し)妖術バトルも、しっかり組まれた完成度の高い構成が無理なく物語の中に引き込んでくれて、気が付いたらすっかりその世界の一員になって一緒にハラハラドキドキしているのです。まさしくこれぞエンターテイメント! 文体もカラリとして歯切れがよく、大人な描写でさえ美しさを感じさせ、子どもだった頃もむしろ憧れながら読みました。
漫画やアニメにも向いてるんじゃないかな~と思ってたら、実はもう漫画化・アニメ化されていたのですね。「バジリスク」がそうだったのか…。ということで、アニメ版バジリスクも見てみました。