アイランド
年 | 2005年 |
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時間 | 136分 |
監督 | マイケル・ベイ |
地球が汚染され、生き残った人たちは清潔に管理されたコロニーにこもり、地球上で唯一汚染を免れた「アイランド」へ移住することを夢見て暮らしていた。アイランドへの移住は無作為の抽選で決められ、いつアイランドへ行けるかは分からない。そんな日々の中、リンカーンは排気口から紛れ込んだ生きた蛾を見つけ、自分たちの境遇に疑問を持つ。蛾を追って施設の奥に入り込んだリンカーンが見たものは信じられない光景だった──。
昔見た映画をCSでやってるのに気付き、録画して再視聴。あれっ記憶と全然違う?──と思ったら、別の映画と混同してたようです(^^;。ヒロイン役がスカーレット・ヨハンセンだった時点で気付くべきだったわ、混同してた作品のような大人しい作風になるはずないと。でもしばらく気付けなかったのも無理はない、似た要素が多すぎたんだもん。それでもコロニー内部のコンクリート打ちっ放し風の近未来的デザインは建築好きとしても十分堪能できる見事さでした。映画の楽しみってこういうところにもありますよね。
ネタバレなしでは感想の書きにくい作品ですが、主人公リンカーンとヒロインのジョーダンの目を通して描かれるSF警鐘ものです。人間の欲望と科学の結びつく先のシミュレーションの1つとも言える。公開当時はまだ絵空事感覚だったであろうものが、時代が進むにつれて現実性を帯びてくるのがなかなか恐ろしい。
リンカーンが世界に疑問を持ったことからサスペンスが始まり、やがて大がかりなアクション活劇に発展するところは、エンタメも存分に入れ込んで楽しみながらテーマを感じ取れるように出来てますね。後半の逃亡劇やカーアクションは派手に立ち回ってくれて見応えあるので、エンタメとしても十分。しかしエンタメしながらも最後は主人公たちや関係した者たちの判断・行動がキモになってて考えさせてくれる。
見終わって、この映画が好きでもそうでなくても、こういうシステムについて少しでも考えを巡らせることになれたら、この作品の在り方としては成功なのではと思います。
<ネタバレ>
汚染されているはずの外の世界で昆虫が普通に生存している──と言うことで、やっぱり汚染は嘘だった。リンカーンたちは金持ちに臓器や代理母を提供するためのクローンだった。そのため管理された施設で養育されていたのだった。「アイランド行き」とはオリジナルに臓器を提供することで、クローンにとっては死を意味する。リンカーンがそれを知った時、友人のジョーダンがアイランド行きに選ばれてしまう。そこでリンカーンはジョーダンを連れて施設の外へ逃げ出すわけですが、施設側が見逃すはずもなく、大逃亡劇が幕を開けることになります。
ついにリンカーンは自分のオリジナルと会うことになるが、ここで人間とは何かが問われる。オリジナルはクローンは人間ではない・植物のようなもので感情もないと思っている。しかしクローンにもオリジナルと同じ感情が芽生える。生き延びるためにはなんでもやるものだ、という人間としての思いが。オリジナルとの入れ替わりには皮肉を感じる。クローンのリンカーンがオリジナルと同じだという証左になっちゃってますからね。
オリジナルだろうとクローンだろうと人間は人間。人間に本物も偽物もないと思う。追っ手だった警備隊長もクローンを人間として認め、リンカーンたちに協力するようになる。この辺は金持ちや権力者に人として扱われなかった人々の思いも重なり、"解放"を応援したくなりますね。SFだけでなく、社会の構造のあり方、選民意識や差別への比喩も見て取れる。科学技術の使い方の先にはこういった問題も出てきそうだから、今からそれについて考えてみるのも悪いことではないと思います。