ノウイング

ノウイング BD

2009年
時間 121分
監督 アレックス・プロヤス

マサチューセッツの小学校で50年前に埋められたタイムカプセルが開かれる日がやってきた。宇宙物理学者ジョンの息子ケイレブは50年前ルシンダという少女が書いた手紙を受け取るが、中身は意味不明の数字だった。だが数字を解読したジョンは災害の予言ではないかと気付く。数字が伝えようとした本当の意味を知るためにジョンはルシンダの消息を調べるが…? 今、人類に未曾有の危機が迫る!

ザ・シネマで流していたので、SFらしい?ということで見てみました。まずは50年前にルシンダがタイムカプセルに謎の数字のメッセージを入れるところから始まるのですが、ルシンダの挙動不審な様子から何か起きそうな不安が煽られる。その後現代に舞台を移してジョンとケイレブを中心に話が始まるのですが、話の進み方はじっくりめ。何かが起きそうだけど、それが何かは分からない。その不安の正体をじりじりと追っていくという感じで、SFというよりはホラーの雰囲気。

ジョンがルシンダの数字を読み解いている時に起きる事故や災害はディザスター的な迫力を持って描かれてます。地下鉄の暴走とか凄いよ、めっちゃ見応えあるし、それだけでも今作見る価値はあるかと思うほどだけど、中盤の描写にこんなに力を入れていいのか、この進み方で最後はどうまとめる気よ、と別の意味でも不安になりました(汗。

正直、SFとしては微妙な出来でしたが、今作が言いたいのは多分そこではなくて、ジョンを通して考える「生き方」──みたいなものかなと思いました。災害のシミュレーションではなくて、こういう状況に置かれた人間のシミュレーションと言うか。これにはジョンが講義で話していた内容も関係してる気がする。今作の運命に対する考え方は人によって賛否はあるかなと思いました。

<ネタバレ>

ルシンダの予言(予知能力)は、謎の宇宙人が心に囁きかけてきたことによるものだった。宇宙人は宇宙人の"声"が聞こえる者に警告を発していたらしい。太陽のフレアが地球を襲うから、このままでは人類滅びるよ、と。そして宇宙人は"声"の聞こえる者(選ばれし者)を地球から脱出させようとしていた。ルシンダの書いた数字(宇宙人からのメッセージ)は途中で先生に取り上げられてしまい、最後が未完成のままタイムカプセルに入れられた。ルシンダは続きを物置の戸に書いていて、ジョンはついにそこへたどり着く。

だがその頃には世界も太陽フレアに気付き、人々はパニック状態に。ルシンダの娘ダイアナもパニック心理に陥り、母ルシンダの予言通りに死んでしまう。ジョンは宇宙船までたどり着いたけど、"声"の聞こえていたケイレブとダイアナの娘アビーだけを送り出し、自分は地球に残る。ジョンは未来を変えるのではなく、自分の運命(地球と共に滅ぶ)に従う道を選んだ。

ジョンは講義の時「決定論」「ランダム(偶然)論」の2つの考え方を話していました。妻を火事で亡くしたジョンは「ランダム論」に傾き、未来は不確定(変更可能)だと思っていた。もし火事が事前に分かっていたら妻は助かったはずだから、と。ルシンダの数字が大規模な事故や災害の予言だと気付いたジョンはまだ起きていない事故を防ごうと奮戦するが、事態は予言通り進み、事故を防ぐことも死ぬ運命の人を助けることも出来ない。ダイアナも予言(運命)から逃れることは出来なかった。この時ジョンは未来はランダムな偶然の積み重ねではなく、原因によって既に決定されたものであり、その決定(運命)からは逃れられないと悟ったのではないかと思う。

未来が変えられないとしたら、未来を知る力なんてない方がいいのかも知れない。ルシンダは娘の死ぬ未来を見たくなかったのかも知れない。ジョンが宇宙人にケイレブを託せたのは、託した後の未来は分からないから希望を持てたとも考えられる。未来の考え方については個人的には「変えられない」より「不確定」の方が好きです。やっぱり希望は持ちたいじゃないですか。

宇宙人は「神」の比喩とも思われますが、だとしたらちょっと発想が安易と言うか雑。「神」に選ばれし者たち(脱出できたのはケイレブとアビーだけではなく、宇宙船の数から考えてもかなりの数の人間・動物がいたと思われる)で人類再生するところはノアの箱舟をやってるようなところもあるけど、宇宙人のおかげで安っぽくなっちゃってる気がします。そこはもうちょっと工夫して欲しかったかな。

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