ザ・クリエイター / 創造者

ザ・クリエイター/創造者 ブルーレイ+DVDセット

2023年
時間 133分
監督 ギャレス・エドワーズ

AIが進化した未来。人間のために働いていたはずのAIがロサンゼルスで核爆発を起こし、100万人が犠牲になる事件が発生した。アメリカを初めとする西側諸国はAIを危険視し、AI対人間の戦争が幕を開ける。アメリカ軍のジョシュアはAIの創造者「ニルマータ」を暗殺するためニューアジアに向かうが、「ニルマータ」が創造したとされる超兵器は幼い少女の姿をしていた──。

「ザ・クリエイター」見てきました。例によって事前情報一切なしで臨んだので、AIがどう作品に絡んでくるんだろう?と思っていたら、巨大コンピューター的なものではなく、いわゆるロボットでしたね。AIロボットの見た目には機械っぽいものと人間の顔を持ったものと2種類あるようで、見た目人間なAIはシミュラント(模造人間)と呼ばれてるようです。AIたちは自我を持ち、彼らの反応はもう人間そのもの。

今作で面白いのがかなり独自な世界観。単純にAIvs人間ではなくて、「AI&AIと共存する人間」vs「AIを認めない人間」という構図。西側の"敵"にはAIだけでなくAIを許容しAIと共存する人間も含まれているんです。これは言い換えると、「AIを差別しない世界」vs「AIを差別する世界」にもなる。今作のAIは現実のAIと言うよりは、「差別や偏見に苦しむ人間、受け入れてもらえない人間」の比喩でもあると感じました。

そしてAIを受け入れて共存するのがニューアジアと呼ばれる日本やベトナムやネパールなどが渾然一体となった地域。洋画には「他のアジア地域と一緒くたになった変な日本」が出てくることがありますが、今作ではもう開き直って正面から堂々と「全部一緒くたのアジア」をやってくれたもよう。最初からそういう設定なら突っ込まずに見られる(笑。

中でも驚いたのがそうとうな日本推しだったこと。日本語の看板とか日本語が流れるニュースとかはブレードランナーを連想させますが、今作の日本推しはその上を行く。シミュラントの少女アルフィーが見ていたテレビに映っていたのが「スーパージャイアンツ」! 宇津井健主演の1957~1959年に作られた映画です。ちょっ待て、「スーパージャイアンツ」なんて私の世代でも知ってる人なんていないぞ、私も夫がDVD買って初めてその存在を知ったくらいだぞ! どっから発掘してきたんだ、もはや日本推しなんてもんじゃない、超日本オタクだろう、この監督! 「スーパージャイアンツ」の衝撃でその前後のストーリーが頭から吹っ飛んでしまったのはナイショです(笑。

物語的にはアバターのAI版みたいな感じでしたが、日本人にはお勧めの映画です。日本愛が熱いです! アジアがAIと共存という設定も監督の日本推し・アジア推しな感覚が影響してるのかもしれない。あ、もちろん映像もよかったです。IMAXで見られたし。アメリカ軍のノマドと呼ばれる兵器は一見の価値あり。戦争描写は現実の戦争とも重なり、戦争の無意味さを改めて感じさせられます。

<ネタバレ>

公開中の映画なので、ストーリーに関係することはこちらに。ニューアジアに潜入したジョシュアは現地人を奥さんにするが、アメリカ軍の奇襲で妊娠中の奥さんが行方不明に。5年後、奥さんが生きてるかも?と知ったジョシュアは軍の誘いを受けて再びニューアジアに向かうが、敵の親玉「ニルマータ」を捜しつつも奥さん捜したい思いが強くて、だんだん行動が軍の命令からずれていく。ジョシュアがアルフィーにひかれるのは当然。だって彼女はジョシュアの○○なんだから。

敵と仲良くなり敵側に価値を逆転させていく…というところはアバターっぽいですが、世界が戦争に揺れ動いている今この作品を見ると想像以上に生々しい。AIへの反応も現実が反映されてるようなところがある。核爆発も結局は人間のミスだったのにAIのせいにして戦争を始める人間…。現実のAIが自我を持てるかどうかはまだ分かりませんが、AIとどう向き合っていくかはもはやSFを超えた今後の大きな課題になっていくのでは。

西側諸国はアルフィーをノマドを倒すために作られた兵器と思っていましたが、AI側にとってはアルフィーは「希望」だったんじゃないだろうか。彼女は成長する超進化型のAIと言うことなので、年月と共に心身共に成長していってやがては大人の女性になるのかな。"母"と"父"から受け継いだ生命を持って。

ジョシュアのラストはローグ・ワンぽかったけど、奥さんの"心"とは再会できたんだからよかったのかな。よくあるようで、そうでない、新しい映画だと思いました。

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