ハプニング

ハプニング BD

2008年
時間 91分
監督 M・ナイト・シャマラン

ニューヨークで突然人々が自ら命を絶ち始める。テロか何らかの神経毒かと騒がれるが原因は不明のまま、謎の怪現象はアメリカ東部に広がっていく。フィラデルフィアでも被害が出始め、教師のエリオットは妻アルマ・友人親子と共に避難しようとするが、列車が途中で止まってしまい、エリオットたちは小さな町で立ち往生することに。原因は何なのか、人類はこのまま自滅の道に進んでしまうのか?

WOWOWプラスで流していたので、パニックものらしいと言うことで見てみました。冒頭はけっこうショッキングなシーンが多数流れるのでご注意。が、その勢いで盛り上がる恐怖パニックものかと思いきや、話が進むにつれてその辺の描写はトーンダウン、ただ逃げまくるだけの逃避行ものになります。それも人のいない方へ、いない方へ逃げるので盛り上がらない静かなサスペンス調に。

作品構成もあまりよくなく、終盤近くには別の映画になっちゃったの?みたいな描写もあり(ホラー?^^;)、登場人物の唐突な言動、問題の投げっ放し、ご都合主義と、全体としてはあまり出来はパッとしないお話ですが、それでも1点だけ、気を引くところがありました。

思うにこれ、コロナ以前に見るかコロナ後に見るかで評価や感じ方が変わってくる作品ではないでしょうか。制作が2008年なので公開当時に見たら評価低く終わってしまうかもしれない。が、コロナ後に見るとすっごく頷けてしまえるところがある。フィクションとして見ると何じゃこりゃだけど、現実はそうだよね、と言う…。

<ネタバレ>

エリオットは車に乗せてもらった人物の話から、怪現象の原因は植物の出す毒素ではないかと思う。植物が危険を感じ、人間を自死に至らしめる毒素を発するようになったのではないかと。毒素は植物の間で広まり風に乗って拡散する。それを吸うと神経がやられて自死に至る。その毒素がどれくらい微粒かは分からないが(ウイルスレベルか胞子レベルか)取りあえずマスクしろよとは思いました(^^;。

で、この毒素は人の多さに反応するようで、最初は人がたくさんいる所から始まったけど、だんだん少人数でも反応するようになって、ついには1人でいてもやられるようになっていくのですが、終盤のおばさんの妙なホラー化は要らんかったと思う…。単に変わり者・偏屈者程度でも十分だった気はするんですが。おばさん編のポイントは「1人でいてもやられる」「離れと通話できる(エリオットとアルマの関係見直しに結びつく)」の2点だと思うので、ホラー要素ない方が話の流れを邪魔しなくてよかったと思います。

関係が微妙になっていたエリオットとアルマは最後は一緒にいたいと、それぞれ母屋と離れから外に出て抱き合うが、その時なぜかもう毒素は消えていた──。なぜ突然毒素が出たのか、なぜ急激に増えてなぜ急激に減って消えたのか、作中ではそれは分からずじまい。識者も分からず、結局結論は「自然界の出来事は分からない」になってしまう。確かにこれでは何じゃこりゃになりますが、考えてみればコロナにもそんなことがありましたよね。

自然界の流れにはピークがあり、ピークを過ぎたものは減る。増え方が急激だと減り方も急激に。ご都合主義でも何でもなくてそれが自然界と言うものだとコロナのおかげで知ってしまった。人間には原因も理由も分からない。まさに「自然界の出来事は分からない」そのままです。ならばむしろ下手な解決策を示す方がご都合主義ではないか。そう思えば今作も自然からの警鐘SFの書き方の1つとして見られる。

ラストではまた別の国で第2波(と言っていいのかな)が発生したようですが、これもコロナを経験した後で見ると他人事ではない感じになる。「人間に分からないことなんてない」と思い上がらずに、「自然界の出来事は分からない」というところに立ち返ることも大切だと考えさせられた作品でした。

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