セルフレス/覚醒した記憶

セルフレス/覚醒した記憶 BD

2015年
時間 117分
監督 ターセム・シン

建築家で富豪のダミアン老人はガンで余命半年だったが、オルブライトという科学者の極秘プロジェクトに誘われ、大金を積んで若い体に生まれ変わる。新しい人生を手に入れて若さを楽しむダミアン。しかし時々見える幻覚が気になり、その場所を調べに行ったダミアンは驚愕の真実と出会う。プロジェクトの秘密に気付いたダミアンを襲うオルブライトの部下たち。ダミアンはどう決着をつけるのか──?

記憶の移植というSF設定にひかれて見たのですが、てっきり仮想現実系かと思ったら、若い人体に記憶を移植するというアナログ系でした(^^;。それも新しく培養した人体を用意するなら普通は自分のクローンじゃない?と思うんですが、本人とは全然違う人体なのね。記憶移植シーンもほぼ病院のCTスキャナーそのまんまで、SFっぽさはほとんどない。低予算でしたか?

ダミアンが真実に気付きだしてからは、秘密漏洩を防ごうとするオルブライトの部下たちとのアクションが中心になるのですが、特撮ではなく普通の撮影ばかりなので、昨今の派手なCGや金をかけたアクションを見慣れた目にはちょっと地味に見える。でも何故かダミアンは凄腕で(戦闘訓練などとは無縁の人生だったと思われるのに)、決めるところではどんどん決めてくれてそこはかっこいい。

CGも特殊効果もなかったですが、それはそれで現実離れし過ぎてなくて悪くない。主人公の最後の決断が良かったので(そこはちょっと先が読めてしまったところはあったんですが)、自分の中では良作品になりました。

<ネタバレ>

移植用に用意された人体は培養されたものではなく、実は生きている他人のものだった。オルブライトが成功させたのは記憶の移植だけで、ダミアンに説明していたクローン技術はまだ確立できていなかった。ダミアンが入った体は特殊部隊で戦闘訓練を積んだ兵士で、病気の娘のために自分の体を売ったといういきさつ。ダミアンが見た幻覚は兵士マークの記憶だった(戦闘経験のないダミアンが凄腕だったのはマークの体が覚えていたからですね)。オルブライトは金に困った人間や秘密を知られて消さなきゃいけない人間などを「器」として使っていたわけです。それを金持ちに真っ新なクローン人体と偽って高額で売りつけていた…。

オルブライトの正体は不老不死研究をしていたジェンセン博士。博士の体はもう亡くなっているが、若い弟子の体を乗っ取って生き続け、研究を続けていたらしい。ただ他人に別の記憶を植え付けても、薬で移植した記憶を保ち続けないと元の記憶が戻ってしまうらしく、研究はまだ完全とは言えないようですね。金持ちを騙していたのは研究資金のためかとも思ったけど、世間から研究を隠して独占しようとしたところに、やっぱりやましさを感じる…。

アントンが体を変えて戻って来たり(ペンダントで気付いた時は私もびっくりしたわ!)、金属の伏線が効いた終盤の展開は面白かったです。ダミアンの友人が薬の成分を解析してたので、これからは自分で薬を作るのかと思ったら…。

結局ダミアンは他人を犠牲にしてまで生き延びるのではなく、薬をやめて体をマークと彼の家族に返し、自分は消える道を選んだ。最後にダミアンは仲違いしたまま別れた娘への手紙を書く。マークの体で過ごした数日間が小切手で全て片をつけてきたダミアンを変えたのだろう。娘が手紙を読んでくれたのを確認出来ただけでダミアンにはもう思い残すことはなくなったのではないか。マークとマークの娘には自分と同じようになって欲しくないとの思いもあったのだろうと思う。あと、作中ではどうなったのか不明だけど、ダミアンの友人の子どもも本来の家族の元へ戻ってくれてたらいいな。

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