ジュラシック・ワールド / 新たなる支配者

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 ブルーレイ+DVD

2022年
時間 147分
監督 コリン・トレヴォロウ

恐竜たちが人間世界に放たれてから4年。恐竜は移動や繁殖で増えるだけでなく、密猟者や闇取引によって世界中へ広がっていた。世界が恐竜との共存を模索する中、オーウェンとクリスに保護されていたメイジーを狙う輩が現れる。その一方でかつてのジュラシック・パーク事件に巻き込まれたエリーとアランとイアンの3人は恐竜保護区(バイオシン・サンクチュアリ)を運営するバイオシン社の陰謀を暴こうとしていた…。

映画館へ行けなかったので、BDが出るのを待って購入して鑑賞。ワールドシリーズ3部作の完結編になりますが、個人的に嬉しかったのはパークシリーズに出ていた懐かしのアラン、エリー、イアンと再会できたことです。もちろんご本人の出演なので、歳を重ねた3人に自分も重なって、初めてジュラシック・パークを見た時からの30年にわたる歳月の重みがじーんと来ます。

今作のいい点はインドミナスとかインドラプトルとかのハイブリッド恐竜が出てこないところですね。前作の感想にも書いたけど、本物の(あるいはそれに限りなく近い)恐竜だけなら普通の生物と同じだから、恐竜が世界に広がったって別に問題ないのでは? 今だってトラやライオンやクマとも共存できてるじゃん。迷い恐竜が人間を襲ってもクマなどに襲われるのとどこが違う。サルやイノシシが町に迷い込んで大捕物になったり、飼ってたヘビが逃げ出して騒ぎになるのも似たようなものではないか。

と言う私の考え方がそのまま反映されたような感じになってましたね、このジュラシックワールド化した今作の世界も。野生生物やペットの種類が増えただけみたいなもので、何だかんだで共存できてるじゃないですか、皆さん。逃げ出した恐竜を馬で追い込む光景はほぼ西部劇、牧歌的ですらある。恐竜のいる世界、いいなー。恐竜=パニックを連想してた人には物足りないかも知れませんが、私は自分の望む世界を見られたことで満足です。

では今作の柱は何かと言うと…これまでに登場したキャラたちの回収をはかる物語、ですね。恐竜ファンには動く恐竜をたくさん見せてくれて(実際このシリーズはそれが売りだし)、キャラたちも放り出しにはせずきちんと完結を。その分パニック度はこれまでの作品より落ちているかもですが、シリーズとしてちゃんと完結してくれたことが一番嬉しいです。

[恐竜メモ]

今作に出てきた恐竜たちのメモ。数が多くて追い切れないのもあるので、目にとまったものたちを。ほぼあらゆる所に登場しますが、主な舞台はマルタ島とバイオシン・サンクチュアリ。

ヴェロキラプトル(ブルー)

もうすっかりレギュラー? オーウェンたちの近くで暮らしてます。そのつかず離れず具合はほとんど家族枠…。

ヴェロキラプトル(ベータ)

ブルーの子ども。名付けはメイジー。

モササウルス

海で漁師さんたちのお邪魔をしております。

ティラノサウルス・レックス

前作と同じ個体が登場。出番は減りましたが、やっぱりジュラシックシリーズの顔ですからね。ギガノトサウルスと宿命のバトル、リベンジ戦もあり。

ギガノトサウルス

今作の目玉? 史上最大の肉食恐竜なのだとか。ティラノサウルスと迫力バトルを展開。

アロキラプトル

ヴェロキラプトルより凶暴。バトル戦士に育てられちゃって、オーウェンとバイク攻防戦したりする。

ナーストケラトプス

最初の方でクレアに保護される。この時、「炎の王国」のフランクリンとジアも登場。

ピロラプトル

羽恐竜。恐竜も研究が進むとこういうのが増えそう。

パラサウロロフス

投げ縄でオーウェンに捕獲される。と言うか、このシーン、牛追いカウボーイそのまんまですね。

テリジノサウルス

草食系だが気性が荒いらしい。ティラノサウルスのリベンジ戦に協力?

他にもアパトサウルス、アロサウルス、コンプソグナトゥス、ケツァルコアトルス、プテラノドン、ガリミスムなど多数登場。

<ネタバレ>

恐竜が普通にいる世界になってしまったので、恐竜が出てきてももう誰も驚かない。その代わり?に出てきたのがイナゴです。えっ、恐竜パニックから昆虫パニックに!? でっかいイナゴが異常繁殖し、畑が荒らされ、世界が食糧危機になる恐れが発生。しかし問題の巨大イナゴはバイオシン社の種を使う畑は襲わないのだった…。これに気付いたエリーとイアンがアランを誘い、バイオシン社の陰謀を暴くという流れになるのですが、この巨大イナゴの一件はメイジーとも絡むことに。

メイジーは思春期を迎え、育ての親になってくれていたオーウェンとクリスに反発するようになり、出先でベータと一緒に拉致される。しかしこの3人がそんな関係になっていたのにはびっくり(つまり前作のラストで3人が向かっていたのはオーウェンが建てていた家だったのですね)。もうすっかり家族じゃん…。娘がさらわれたっと追いかけるオーウェンたちもどこから見ても立派に親状態。メイジーが拉致された先はバイオシン社で、クローン人間のDNAを手に入れるためだったのですが、そこにはシリーズ1作目から恐竜の復活を手がけてきたウー博士の「これまでの罪」への贖罪の気持ちも入っていました。それはクローン人間に悩むメイジーのアイデンティティにも関係することに。

メイジーを造ったのはベンジャミン・ロックウッドではなく、娘のシャーロット自身だった。自分で自分の複製を産んだわけですね。それも実験体ではなく愛する娘として。同じDNAでもシャーロットは母で、メイジーは娘、違う存在。それに気付いた時、メイジーは自分を1人の人間として受け入れることが出来るようになった。同じように同一DNAで母子として存在しているラプトルのブルーとベータは、シャーロットとメイジーの対となる存在として描かれていたと思います。

メイジーを追うオーウェンたちとバイオシン社を探るアランたちは合流して協力し合うことになり、悪事を企んでいたバイオシン社のドジスンCEO(1作目でネドリーに恐竜の胚を盗ませた人です)には最後に天誅が。お決まりの流れですが、オーウェンたち3人が本物の家族として収まり、アランとエリーが収まるべきところへ収まるのを見るのはやっぱりホッとします。アランたちについては年月がかかったけど、間にエリーの結婚と離婚も挟まったけど、ここに落ち着いてくれてよかったと思う。

話の主軸がパークシリーズ・ワールドシリーズの主役たちの回収であるため、イナゴを巡る話が中心になってしまい、恐竜たちはややバックグラウンド的な感がありましたが、敵兵役をやってくれたアロキラプトルの迫力、ティラノサウルスとギガノトサウルスの対決など、物語のあちこちで色々な恐竜たちがキャラたちの障害になって楽しませてくれました。恐竜好きには十分満足。

イナゴ問題の解決方法はちょっと安易な気もしますが、大事なのは方法ではなく、科学で造りだしてしまったものにどう向き合うか、向き合えるかだと思う。その意味でウー博士の変容は大きいと思います。イナゴの登場は「DNAをいじる=科学の暴走」は恐竜の復元だけに留まらないよと言うメッセージにも受け取れる。恐竜を楽しんだら、そういうことも考えてみよう、それがジュラシックシリーズのテーマなのだから。

今は存在しない恐竜をCGでスクリーンに蘇らせてくれたジュラシックシリーズ。そこには問題提起もあるけど、大きなロマンがあった。ロマンをありがとう、ロマンこそがジュラシックシリーズの最大の魅力だったと思います。