リンカーン / 秘密の書
年 | 2012年 |
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時間 | 105分 |
監督 | ティムール・ベクマンベトフ |
青年エイブラハム・リンカーンは母を殺したバーツに復讐する機会を待っていた。だが酒場で出会ったヘンリーにバーツはヴァンパイアだと教えられ、リンカーンはヴァンパイアハンターになる。昼は雑貨店で働きながら弁護士をめざし夜はハンターの二重生活を送っていたが、奴隷制度の裏にヴァンパイアがいることを知って奴隷解放運動に乗り出し、ハンターから政治家の道へ。大統領になったリンカーンは南部をヴァンパイアから解放するために再びハンターとして立ち上がるのだった。
予告編で「ホエエ!?」となった作品がWOWOWプラスで流れたので見てみました。アメリカ16代大統領がヴァンパイアハンターだった!?って、どこをどうひっくり返せばそんな発想が出てくるんだ!と見る前から突っ込み状態でしたが、一応南北戦争と絡めてはあるのね。今作では南部の奴隷はヴァンパイアの糧にされていたと言う設定。リンカーンが母の仇にしていたバーツは南部の農場主で、リンカーンの友だちの黒人の男の子も虐めてましたね。
トンデモ設定の割には話は真面目。リンカーンはヘンリーに鍛えられてヴァンパイアハンターに育つのだけど、修行シーンはさっと流されてすぐ凄腕になってます。リンカーンの武器は斧で、けっこうバトルアクションしてくれる。血は飛び散りますが、色味を抑えた画作りのおかげかそれほどグロ感はない。走る馬軍団の中(上?)でのアクションはちょっと他にない見ものです。舞台は1818年、1837年~南北戦争辺りで、その辺の雰囲気はよく出ていたと思う。
なお、この世界ではヴァンパイアに血を吸われても必ずしもヴァンパイアになるわけではないようです。奴隷制を支持する農場主をヴァンパイアになぞらえてるので、その辺は"自由を奪い支配する者"としての性質を強調したかったのかな。ヴァンパイアにヴァンパイアは殺せない、ヴァンパイアを殺せるのは生きてる人間だけと言うのも今作設定ですが、銀に弱い・鏡に映らない等、昔からのヴァンパイア設定を踏襲しているところもあるようです。
素直にヴァンパイア退治アクションとして見るのもいいけど、今作のヴァンパイアって何の比喩なんだ?と考えながら見るのも面白いかも。
<ネタバレ>
バーツに虐められていた男の子ウィルは育ってリンカーンの片腕的存在に。列車でのガンアクションはかっこいい。雑貨店主のスピードもリンカーンの盟友となっていくけど、ヴァンパイアを嵌めるための列車の罠がちょっと分かりにくくて少し混乱しました。スピードは裏切り者のふりをしてたんだよね? ヘンリーが知らなかったのは極秘作戦だったから知らされてなかったと言うことでOK? ここは上手く描けば「そーだったのか!」と感動できるところなので、もっと分かりやすく伝えて欲しかったです。
今作のアクションは他作品とはちょっと違う趣向もあってなかなか楽しめました。クライマックスの列車アクションもよかったけど、個人的にはバーツとの決着をつける馬軍団のアクションが意表を突いていて面白かったなあ。馬を避けながらどころか、走る馬の上を走ったりして、こんな見せ方もあるんだ~と楽しませてもらいました。斧アクションも珍しい部類に入ると思う。
トンデモ設定ではありましたが、「人は皆何かの奴隷」「そこから解放されることが自由」がテーマになっており、どこにでもいる・たくさんいるヴァンパイアは「支配する者」の象徴なのかもと考えさせてくれました。今作の南北戦争はアメリカは自由の国だと、我々は何者にも支配されないとヴァンパイアに知らしめるものだった。逃げ出したヴァンパイアたちは今、私たちの隣に来ているのかもしれない。それは心の中にも忍び寄っているのかもしれない。そして支配しようとする。奴隷にしようとする。人生は自由を求め続ける戦いなのかも。
だからヘンリーは時を超えて解放を行う者を探し続けるのかも。自由への解放が求められる限り、時代がそれを望む限り、ヘンリーの永遠の旅は続くのかも知れません。