レミニセンス

2021年
時間 116分
監督 リサ・ジョイ

都市が海に沈んだ近未来。ニックは記憶潜入装置〈レミニセンス〉で人々に過去の記憶を追体験させる仕事をしていた。ある時現れた依頼者に心奪われたニックは彼女と付き合うようになる。だが彼女は突然消えた──。ニックは手掛かりになりそうな人たちの記憶を辿って彼女の行方を追うが、そこに浮かび上がってきた女性の正体とは…。退廃した街で女を追う男のSFミステリーサスペンス。

TSUTAYAで新作を借りる時、ふと目にとまってレンタルしてみた作品。主演がヒュー・ジャックマンでSFという理由だけで借りてみたけど、派手さはなく、どちらかというと渋め。エンタメよりフィルム・ノワールな方向でした。

舞台は近未来で都市が沈みかかってる、いわゆるディストピアな世界。こうなる前には大きな戦争もあったらしい。ニックは退役軍人で、レミニセンス家業の相棒ワッツも退役軍人。レミニセンスは戦争中は敵の頭の中から情報を得るために活用されていたらしいが、戦争も軍人も用がなくなった今作の世界では過去の思い出に浸る装置になっている。それでも警察が犯罪者に使うことはあり、ニックは時々警察に協力もしている。

そんなニックの生活は謎の女メイの登場でかき乱されるわけです。最初のうちはワッツにも心配されるほどニックがメイしか目に入らなくなってて、おいおい入れ込みすぎだよ~!と突っ込みたくなるほどですが、メイの裏にある状況が少しずつ分かってくるにつれ、見てる方もメイの行方が気になってくる。そしてすっかりミステリーサスペンスの世界へ。

SF要素はレミニセンスくらいしか出てこないので、展開はほぼ刑事アクション状態ですが、記憶の世界に浸りすぎて記憶中毒になる人や、中毒状態から抜けられず脳がバースして廃人同様になる人が出てくるので、過去の記憶に浸るか過去を振り返るのはやめて前を向くか──の問いかけもやってる感じです。

<ネタバレ>

ニックがメイに惹かれたのは彼女がニックの思い出の曲を歌っていたからだった。だがメイの行方を探るうちに、彼女が麻薬組織と関係があったこと、そこで知り合ったブースと組んで計画的にニックに近づいたことを知る。メイの狙いはニックの顧客の保存記憶だった。顧客の中にメイたちのターゲットがおり、保存記録からターゲットの情報を得るための作戦だったのである。

だがメイは根っからの悪女ではなく、状況に動かされていただけだった。ニックと過ごした3ヶ月でメイはニックへの愛を知る。ブースは地主ウォルターの息子からウォルターの愛人とその子ども殺害を依頼されていたのだが、メイは子どもを助けて逃げる。ブースから子どもの行方を詰問されたメイは子どもを守るために命を投げ出す。ブースの記憶からメイの本心を聞くニックだけど、メイが記憶の映像なのが切ない。

ウォルターの息子の悪事を暴き、全てが終わった後でニックとワッツが選んだ道には考えさせられました。ニックはレミニセンスの中で帰らぬ恋人との記憶に浸る人生を、つまり過去に生きる人生を選んだ。一方、ワッツは生き別れた娘ともう一度向き合う人生を、つまり未来に生きる人生を選んだ(ワッツが孫と一緒にニックを見守るシーンで分かる)。その時ワッツはどちらの人生も間違ってないと言う。

幸か不幸か、現代にはレミニセンスのような装置がないので、あそこまで鮮明に過去に浸ることは出来ない。個人的には過去に囚われるのはやめて前を向く方がいいと思うが、あんな装置があったら人生の一番いいシーンをリピートするだけの世界に逃げたい人も出てきそう。若い頃ならともかく、年取るとベストな一瞬に戻りたい気持ちになるのも分かる…。ただ、自分がどんな人生を選んでも、違う人生を選んだ人を否定しないワッツの考え方はいいと思いました。

構成がやや散漫に感じたところはありましたが、水没都市の描写はよかったし、SF好きとしては満足。