スターシップ9
年 | 2017年 |
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時間 | 95分 |
監督 | アテム・クライチェ |
荒廃した地球から新天地セレステへ向けて20年間飛び続けている恒星間宇宙船。エレナの両親はトラブルから娘を救うために犠牲となり、エレナはたった1人で過ごしていた。ある日エレナの船に救難信号を受信したエンジニアのアレックスが訪れる。生まれて初めて見る男性。恋に落ちるエレナだが、トラブルが直ったら去ってしまうアレックス。しかしそこには衝撃の計画が隠されていた──。
某映画レビューでおすすめされていたので見てみました。面白いSFを求めている自分にはとても期待値が高かった作品だったのですが…。この作品の感想を書くにはどうしてもネタバレ必須なので、以下のっけからネタバレ全開です。
<ネタバレ>
宇宙船内で過ごすエレナの描写はSFしてるのですが、恒星間航行中なのに何故か船内しか映らず宇宙船を外から見た外観とか宇宙の様子などが一切描かれない。この辺りで既に?状態だったのですが、アレックスが現れてから疑問がドッとあふれてくる。アレックスどこから来たの? 救難信号を受信出来る距離に他の人間がいるのにエレナが20年間両親以外知らないのは変じゃない? それに他の人たちが他の船にいるのだとしたら、エレナの船は何故3人だけだったの? 船の定員が3人では移民として効率悪すぎない? 等々...
と思ったら、アレックスが出て行く様子が描写され、もしや…と思ったら、そこは地球だった。エレナがいたのは9番目の宇宙船シミュレーターだったのです。これは移民計画のための実験だったのですね。宇宙の移動には年月がかかるから、恒星間宇宙船で何十年も過ごすとどういう影響が出るか調べる…ということだったらしい。しかもこれがかなり早い段階で種明かしされてしまい、アレックスはエレナを外に連れ出し、後半はエレナとアレックスの愛の逃避行みたいになっちゃう。
エレナが宇宙船(正しくはシミュレーターですが)の中でないと生きていけない体なのが分かり、アレックスはエレナと共にシミュレーターに入ることを決意するのですが、この展開だとこれはもう恋愛映画…? 恋愛映画だと振り切って見れば、特殊な環境で育った少女に恋をして彼女のために全てを捨てる男という感動の物語です。
が。SFとして見ると突っ込みどころがあり過ぎて…。コメディではなく真面目に作られている故に気になってしまう。アイデアはよかったのですが(こういう形で低予算を乗り切ったのも)、それだと実験の理由が弱すぎる。何十年もかけてこんな実験する時間と予算があるなら他にもっとやることあるだろうとか、コールドスリープは視野にないのかとか、それより実際に飛べる宇宙船造る方が先じゃないのとか、疑問がわんさか。「何故この実験が必要なのか」という部分に説得力が足りないため、エレナたちが追われる展開に気持ちが乗りきれない。そこは残念。
ただエレナがもう一度シミュレーターに戻れた理由とか、なるほどと思う部分もあったので、低予算SFとしては頑張った方かなと思います。