透明人間(2020年)
年 | 2020年 |
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時間 | 124分 |
監督 | リー・ワネル |
恋人エイドリアンの束縛から逃れるため、セシリアは彼の家から逃げ出す。その後エイドリアンが自殺したと聞き、ホッとしたのもつかの間、コンロの火が勝手についたり、タオルケットが勝手にめくれたりなど、怪現象が頻繁に起きてセシリアを苦しめることになる。エイドリアンの自殺を疑ったセシリアは彼が何らかの方法で自分をストーカーしているのではと考え、何とかエイドリアンの恐怖から逃れようとするのだが…?
透明人間と言えばH・G・ウェルズの小説が思い浮かび、1933年の映画化作品を連想するかもしれませんが、今作はそれとは別の2020年に新しく制作された映画です。作品ジャンルから言えばSFだと思いますが、透明人間に襲われる恐怖が中心なので、ホラー・サスペンスにもなってます。
冒頭、海辺のお洒落な豪邸からセシリアがこっそり逃げ出すシーンから早くもサスペンス感が盛り上がる。最初はポルターガイストみたいな怪奇現象が出てきますが、タイトルでネタバレしてる通り(^^;、エイドリアンが光学研究の第一人者という設定・エイドリアンの自宅のアイアンマンに出てくるようなスタイリッシュな研究室・透明なアイアンマンスーツが置いてあるようなブースなどから、これはお化けじゃなくて光学迷彩的な透明化するスーツを人間が着て悪さしてるとすぐ推察できるようになってる。
でもそれが分かったところで、敵は透明なのでどこにいるのか分からないし攻撃も防ぎようがないし、もう透明人間のやりたい放題。しかも見えないから「透明人が襲ってくるんです!」と訴えても周りには信じてもらえない。見えない相手から陥れられる一方のセシリアも追い詰められていく。エスカレートしていく透明人間の狂気から逃げられるのか、あるいは立ち向かえるのか、そのサスペンス感が見所です。
でもそれだけで終わらない、ラストもすごい…。そこに今作の本当の恐怖がある気がする。お金をかけなくてもやり方次第で上質のSFホラーは作れるんだと改めて思わされた作品でした。
<ネタバレ>
透明人間の悪さはポルターガイストからセシリアを孤立化させる方向に行き、とうとうセシリアの妹殺害にまで及び、さらにはその罪をセシリアに被せて妹殺害犯に仕立て上げるという、このクズ男まじ許せんレベルにエスカレート。しかも避妊薬もエイドリアンにすり替えられてて、セシリアは妊娠までさせられていたことが判明。ついにセシリアも反撃を決意。だがやっと撃退した透明人間の正体とは!? 機能故障で姿を現した透明スーツの中から現れたのはエイドリアンではなく、彼の兄トムだった。
エイドリアンは自宅に監禁されていたのを発見されたことで、警察は真犯人はトムの方だったと判断。確かにトムは怪しいところはあったけど、エイドリアンのDVにずっと苦しめられていたセシリアは納得できない。まあそうだろう、弁護士のトムでは四六時中セシリアに張り付くのは無理があるし、「サプライズ」の口癖もエイドリアンのもの。やっぱりトムはエイドリアンに利用されていたのでしょう。透明スーツも複数あったみたいだし。
そう、トムが着ていた透明スーツは故障して使えなくなっていたが、セシリアが密かに見つけて証拠品にするつもりで隠していた透明スーツは使える状態で残されていた。セシリアはエイドリアンの口から真相を聞き出すために、ジェームズ(警官でセシリアの友人・彼女の居候先でもある)に監視させてエイドリアンに会う。だがセシリアの目的は最初から復讐だった。ジェームズの監視はエイドリアンの"自殺"の目撃者にするためだった。
ジェームスはセシリアが透明スーツを使ってエイドリアンを"自殺"に仕立て上げたことに気付いたが、結局見逃す。復讐を終えて去るセシリアの表情が清々しいのに怖いです;;。セシリアをここまでさせるほどに追い込んだDVこそ真の駆逐されるべき恐怖、なのでは。
古典的なイメージのあった透明人間をステルススーツというテクノロジーで現代のSFホラー作品に作り変えた秀作。面白かったです。