キャッツ

キャッツ BD

2019年
時間 110分
監督 トム・フーパー

人間たちが寝静まる頃、猫たちは集まり年に1度のジェリクル舞踏会を開く。舞踏会で選ばれたただ1匹の猫だけが天上に昇って生まれ変わることが出来る。猫たちは我こそはその1匹に選ばれたいと歌とダンスを競い合う。

キャッツは昔に劇団四季の公演を見に行ったことがあります。会場全体(客席も含む)を使う斬新な演出に感動しました。「メモリー」が気に入ってアルバムを買い、それも劇団四季の日本語版とロンドンキャストの英語版の2枚を揃えるほどでした。キャッツはミュージカルですが、ストーリーはほぼないに等しく、歌とダンスを見せることだけに徹した作品だと思います。一応最後に天上に昇る猫が選ばれるという流れはあるものの、そんなことはどうでもよくて、次々に繰り出される役者たちのエネルギッシュな歌とダンスを楽しんだのを覚えてます。そのキャッツが映画化される…?と聞いてちょっと興味を持ったけど、何か変な噂が流れてくる…(汗。それが気になってレンタルして見てみました。

開口一番。うわっ、これは確かに気持ち悪いわ…どうしてこうなった!??

登場人物(猫物!?)は猫という設定。しかし演じるのは人間なので、舞台劇では役者は猫の扮装をして演技します。でもこれは問題ない。どんなに奇抜な格好でも人間が服着て演じてるのに違いはないから違和感はない。観客も役者が人間だと分かってるから安心して想像力を膨らませ、猫の世界に浸ることが出来る。つまり猫の扮装は観客の想像力を喚起する装置の1つ。舞台劇だからこそ生きる演出だと思います。

今作の一番の間違い(勘違い?)は舞台劇の扮装を映画に持ち込んで、そのまんまCGで再現しようとしたところだと思います。しかも人間の肌に毛を生やすなんてことをしちゃったから、猫でも人間でもない何とも珍妙で変な何かになってしまった。ここまで描写が具体的だと想像力の入る余地がなく「猫の世界に入るための装置」として機能せず、得体の知れないものが動き回る気持ち悪さだけが残ってしまう。また舞台劇がそうだったからだと思うけど、時々服着てるのがいるんですね。たけど、そのせいで服着てないやつの素っ裸っぽさがいっそう生々しく感じられて、見ていて恥ずかしく感じる。

舞台と映画は違うのだから、舞台劇の扮装に拘る必要はなかったのではないだろうか。映画ならCGで猫にダンスさせることだって出来たはずだから、その方がまだましだったろうと思う。アニメでもよかったんじゃないかな。役者さんたちは頑張っていたので気の毒でした…。

キャッツ自体は素晴らしいミュージカルなので、舞台を見たことのない人は、舞台劇のキャッツも見てもらえたらと思います。舞台のライブ感は映画では味わえないものなので。

<ネタバレ>

歌とダンスメインの作品なのでネタバレと言うほどのものもないのですけど、舞台劇との違いについて少し。映画ではヴィクトリアがよそから来た設定になってて、物語の案内役を担ってます。犯罪王マキャビティのキャラが分かりやすくなってて(候補猫を次々さらって自分が選ばれようとするとか)、本来なら特にストーリーのない作品にストーリーらしき流れを作る役どころにもなってました。長老オールド・デュトロノミーは舞台では男性だったけど映画ではなぜか女性に。

ところでなぜゴキブリまでCGゴキブリ人間にした…(しかも猫人間に食べられる)。映画だからこそCGの見せ場だと思ったのかも知れないけど、見せ場を間違えてる気がしないでもない。

それでも、猫人間の異様さに目をつむればミュージカルとしてはよく頑張っていたと思う。舞台を見ているので結末は分かっていたけど、グリザベラが選ばれるところはやっぱり感動ものでした。役者さんのメモリー、よかった。グリザベラは服を着てたので(例えそれがボロであっても)他の猫たちほどは違和感なく見られたのもよかった。またCDを聴き返したい気分になりました。

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