ゴジラ対ヘドラ
年 | 1971年 |
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時間 | 85分 |
監督 | 坂野義光 |
ヘドロの中から謎の怪獣ヘドラが出現。オタマジャクシ形態から巨大化していき、海でタンカーを沈め、スモッグを求めて上陸、空を飛び硫酸ミストをまき日本を恐怖に陥れる。「公害の申し子」ヘドラにゴジラが立ち向かうが、ヘドラの強さは想像以上でさしものゴジラも苦戦を強いられる。海洋学者の矢野はヘドラの弱点を掴むべく研究を続けるが…?
子どもの時に映画館で鑑賞。当時社会問題になっていた公害を真っ正面からテーマに取り入れた異色作。日本映画専門チャンネルで4Kリマスター版を流してくれたのを機に懐かしの再会をしました。見直してみて、記憶にあるよりもずっと大きく公害を取り上げて警鐘を鳴らしていたことに驚く。冒頭の歌からも分かるように強烈なメッセージ性を持つ作品です。海洋汚染、ヘドロ、光化学スモッグ…ありましたねえ、子どもでも分かるほどに問題化してましたからね。光化学スモッグ警報が出ると子どもはステイホーム、外は危険! そういう子ども時代を過ごしたんだったな…と思い出してました。
ヘドラの生態は矢野が小学生の息子に話す形で説明してくれていて、その辺の丁寧さは教育映画のようでもあります。テーマ重視の作風なので、話はドラマより公害問題や時代を映す描写の方が中心。ヘドラの被害描写も容赦なくて、そのままだと暗くて重い作品になりそうなところを、これまでのヒーロー化路線で培ってきた怪獣のキャラ化がいい塩梅でバランスをとってくれるという面白い組み合わせになってます。
ゴジラが初めてヘドラに出会う時ね、会話してるじゃん、こいつら!(笑。
ゴジラ「オレの縄張りから出て行け!」
ヘドラ「お前こそじゃまするな、どけ!」
とでも言ってるのでしょうか、こんな時モスラと小美人がいないのは残念だわ~。ということで今回のメインキャストを以下に。
ヘドラ
第一形態:水中期 海洋汚染、美味しいな~。
第二形態:上陸期 スモッグ、排煙、公害まみれの日本美味しいな~。
第三形態:飛行期 必殺技、硫酸ミスト!
最終形態:成長期 ゴジラを越える大きさに!
ゴジラ
ヘドラと話し合い?が決裂したもようで、敵認定、バトルへ。だが相手は超強い、こうなったらオレも飛んじゃうぞ~。え!? ゴジラ飛ぶの!? ゴジラが空を飛ぶのっ!??
そうです、今作のゴジラは飛ぶんですっ。これは子どもたちの間でも賛否両論、話題になりました。どこでどうやって飛ぶのかは見てのお楽しみ…ということにしておきますが、まあ…これはこれで…まあ…うん(^^;。
<ネタバレ>
公害怪獣ならヘドロから生まれたというだけで十分で、それ以上の理由なんてなくても問題ないと思うのですが、制作側はそれだけでは満足できなかったようで「宇宙から隕石にくっついてやってきたヘドリュームという金属がヘドロと反応してヘドラになった」というSF的な理由付けが加えられてます。テーマがテーマだけに、大人にも真剣に見てほしかったのかな。ちなみにヘドリュームの説明の時、宇宙の説明も入り、その辺も教育映画っぽいです。
矢野の研究でヘドラは乾燥に弱いらしいことが分かるが、それ以外弱点らしい弱点がない。やっつけても分裂するだけだし、分裂してもすぐ合体するし、倒しようがない。乾燥させても少しでもヘドロ状の部分が残っていればそこから再生してしまう。さしものゴジラも左目を潰され、大苦戦。矢野の作戦とゴジラの応戦が結びつく形で何とかダメージを与え、逃げ出したヘドラを追うためについにゴジラ、空を飛ぶ! 後ろ向きですけど…。あんまりかっこよく…いや、これ以上はやめておこう…。結局ゴジラが空を飛んだのは今回っきりでした。飛んでもいいけど、やっぱりゴジラは地上戦が似合うよね…と思ってしまうのでした。
それにしても強敵でしたね、ヘドラ。人類が環境汚染を続ければまたヘドラが現れるかもしれない…という今作の警鐘は今の時代、いやどの時代でも真髄に受け止めたいものです。