ホビット 決戦のゆくえ

ホビット 決戦のゆくえ BD

2014年
時間 145分
監督 ピーター・ジャクソン

エレボールを取り戻したトーリンたちだったが、そのことはすぐ周りに伝わり、エレボールにドワーフと仲間軍団、エルフの軍団、人間たち、オークの軍団が押し寄せる。エレボールの財宝を狙う者、エレボールを侵略の足がかりにしようとする者、ここにエレボールを巡る大戦闘が始まる。トーリンはエレボールを守り抜けるのか、ビルボの冒険が迎えた結末とは──。

ホビット3部作3作目。結末の章なので、これまで積み重ねられたエピソードが解決に向かってどどっとなだれ込む。序盤でいきなりクライマックス!?と思いきや、この3部作のテーマはそこではなかったもよう。大事なのは都(エレボール)と王座を取り戻した後、ということですか。それはビルボにも悩みを与える。旅を通してトーリンが大切な友になったからこそ。

1作目では顔見せ程度だったガラドリエルたちも今作では話に絡んできてくれるのが嬉しい。ところで同じエルフでもガラドリエルたちとレゴラスたちは少し性質が違うようですね。「ロード・オブ・ザ・リング」を見た時は森のエルフと言われてもよく分からなかったけど、軍隊を持ち弓矢と剣で肉弾バトルを行うわりと好戦的な部族のようです。闇の森には大クモなど身を守るために戦う必要のある敵も多いから、そうもありなん、か。おかげで今作でもレゴラス様の熱血肉弾バトルを堪能できて、ああ幸せ(笑。

今回は総決算バトルということで、大勢の軍勢がぶつかり合う人海戦術大合戦が楽しめて、このシリーズらしい壮大さを堪能できます。それでも最後に決着をつけるのは大将どうしの決戦バトル。今作のテーマはバトルだけではなくもっと奥深いものがあるのですが、個々のバトルが見どころなのも間違いない。トーリンだけでなくレゴラス、バルドそれぞれの決着も迫力いっぱいに見せてくれます。

<ネタバレ>

エレボールでアーケン石を見つけたビルボだけど、竜の言葉が気になってトーリンに渡せないでいた。心配の通り、トーリンは祖父と同じく金の魔力に取り憑かれて人が変わってしまう。バルドとの約束も忘れ、仲間のドワーフ軍の危機にも目を向けず、財宝だけを守って閉じこもろうとする。この状態のトーリンに石を渡せばもっと酷いことになる──。この間のトーリンには「バルドの約束守ったれよー!」となかなかイライラさせられましたが、ついに金の誘惑に打ち勝ち、真の王として復活しました。そうだよ、金や財宝に執着してはいけない、もっと大切なものがあるんだから。ガンダルフにはトーリンなら金の誘惑に負けることがあっても必ず王として戻ると分かっていたのではと思います。だからトーリンにエレボールの奪還を勧めたのだろうと。

そのガンダルフですが、グルドゥアでへたっていたところをガラドリエルたちに助けられるのですが、この時のガラドリエルが凄かった…! もう魔法使いレベルじゃん、サウロンを追い払うって~。裂け谷エルフの出番は少なかったけど、あのガラドリエルを見られたので満足。そして2作目に気になった方々の決着もつく。

バルドVS火竜スマウグ

父が倒せなかったスマウグを残り1本の黒い矢で見事仕留めて、雪辱戦を果たす。民の信頼を集めて人間たちのリーダーに。

レゴラスVSボルグ

2作目でガンつけあってから、ボルグがレゴラスの宿敵に。ボルグはオークの頭領アゾグの息子。今作で死闘の末、ボルグを討ち取る。決戦後は闇の森へは帰らず自分の道を目指すことに。

トーリンVSアゾグ

アゾグとは長年の因縁の仲。アゾグは闇の力の手下だけどトーリンへの個人的な恨みも強く、罠を仕掛けたりしても最後はタイマン勝負へ。アゾグを倒した後、トーリンも力尽きてしまったけど、勝利への導きになりました。

タウリエルの恋は悲恋に終わったけど、スランドゥイル王と分かり合えるきっかけになりました。情けないやつに見えたスランドゥイル王もレゴラスの母への想いを秘めていたんだな。人々の気持ちが解けていくのはやっぱりいいものです。

表では派手な決戦を繰り広げながら、財宝に執着することの愚かさ、大切にしなければいけないものは何かを描いてくれた3部作でした。指輪を隠し持ったままホビット庄へ戻るビルボを、恐らく気付いていながらそのまま見送ったガンダルフ。ビルボなら大丈夫と思ったのかもしれない。その後も60年も指輪を持ち続けながらゴラムにはならずに暮らせたのですしね。ガンダルフが見込んだ通り、欲を持たず平和を愛する心がとても強かったのだろうと思います。そこにこそ「ビルボの冒険」があったのでしょう。