打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

2017年
時間 90分
監督 新房昭之、武内宣之

夏休みの登校日、茂下神社の夏祭りがある日。典道は登校途中で好きな女の子・なずなの姿を見かけるが、その時彼女は海から不思議な玉を拾っていた。教室で友人らと打ち上げ花火が丸いか平たいかで議論になり茂下灯台で確認することになるが、灯台へ行く前に典道はなずなが友人の祐介を花火大会に誘っていたことを知る。もしもあの時、なずなに誘われたのが自分だったら──。なずなの落とした玉を投げた時、時が戻った──?

時間ネタを扱った作品らしい?という情報だけで見てみたのですが、この内容ならSFと言うよりファンタジーですね。思春期の少年少女が抱く衝動や妄想をこういう形で表現してみました、みたいな。なお原作になったテレビドラマがあるそうですが、そちらは見ていないので、映画のみでの感想になります。

発端はプールでの競争。典道と友人の祐介、なずなの3人が勝負し、なずなは勝った祐介を花火大会に誘った。足をぶつけてビリになった典道はそのことを知らなかった。しかし祐介は友人らとの約束を優先して灯台に行ってしまい、足の怪我を治してもらいに病院に行った典道はそこで祐介を待つなずなと出会う。なずなにプールで勝った方を誘ったと打ち明けられ、もしもあの時祐介に勝っていれば、なずなに誘われるのは自分の方だったのではないか──と典道は思うわけです。

ファンタジー描写には力が入れられており、絵はきれい。ただ、3DCGで作った部分と2Dで描かれた部分の馴染みがちょっと足りないかな…と思うところはありました。3DCGを写実的(線がなくて面で描写)にし過ぎると、線が主体のアニメ絵から浮いてしまう。難しいところですね。

なお作中で話題にされてた打ち上げ花火が丸いか平たいかは個人的にはどっちでもいいのですが、丸く見える状態でベストに調整されている花火なら丸い花火を見たいと思います。

<ネタバレ>

実はなずなは母親の再婚で夏休み中に引っ越すことになっていた。それが嫌でなずなは家を飛び出して好きな人と過ごそうとしたのだが、追ってきた母親に無理矢理連れ戻される。それを見て典道は、もしもなずなに誘われたのが自分だったら──と思い、なずなの落とした玉を投げつける。すると時間が巻き戻り、プールの勝負の時になっていた。

今度は勝ってなずなに花火大会に誘われる典道。だが2人で「駆け落ち」しようと電車に乗ろうとしたら、またも母親が現れてなずなを連れ戻してしまう。その夜典道が友人たちと灯台で見た花火は平べったい花火だった。しかも祐介の反応がおかしい。祐介は花火は丸い派だったはずなのに平べったい派に変わっている。つまりここは「花火は平べったいのが当たり前」の世界? 「これは違う世界だ」と思う典道。なずなが拾った玉はタイムマシンではなかった。あれは「願いを叶える玉」だった──?

典道は玉に「願い」をかけ続けます。母親に連れ戻されない世界、祐介たちにも追ってこられない世界へ、典道が願う度に世界は変貌していく。あの玉に中にはあらゆる「もしも」があった。もしもなずなと東京に行けたら、もしもなずなともっと深く──。少年の夢が妄想が形になったらこんな感じなのでしょうか。

でも酔った花火師が玉を花火の玉と間違えて打ち上げてしまう。玉は壊れて散り、なずなも去っていった。少年の夢も覚める時は来る。ラストの教室はなずながいないので新学期でしょうね。典道がいなかったのは「何らかの変化(現実を受け入れて少し大人になるとか)」を示しているのかなと思います。典道がどういう形で「次の世界」へのステップを歩み始めたのかは分からないけど(妄想ではなくメールやSNS等の現実的な形でなずなと交際を始めるとか)、そこは見た者の想像に任せるということかな。