若おかみは小学生!

2018年
時間 94分
監督 高坂希太郎

事故で両親を亡くしたおっこは祖母に引き取られ、祖母の経営する春の屋旅館でおかみ修行をすることになる。自然豊かな環境で蜘蛛やヤモリにビビりつつも祖母や旅館の人たちや友人らに温かく見守られ、おっこは元気に頑張り若おかみとして成長していく。

実を言うと「いかにも子ども向けみたいな絵柄」に敬遠してしまい、長らく見ようという気にならなかった作品。キッズステーションで流してくれたので、評判いいみたいだしちょっと見とくかーくらいの軽い気持ちで観賞。すみません、大人の観賞にも堪えるちゃんとした作品でした、すみません(汗。

若おかみ修行と聞いて、一瞬昔の朝ドラみたいなしごき系なのかなと思っていたら全然違いました(笑。確かに修行の様子も少しは描かれてましたが、祖母も仲居も板前も皆温かくていい人ばかりでほっこり。おっこもきっかけはウリ坊だったとしても自分から働いてるし、時には未熟さで叱られることがあっても心からのおもてなしを頑張るおっこの努力は客たちにも伝わっていく。おっこのおばあちゃんの女将っぷりもいい。おっこだけでなく私も色々教えてもらえた気分。春の屋旅館に行ってみたいという気にさせてくれます。

でも今作が描いてるのはそれだけじゃない。これはおっこが自分の中に抱えているものと向き合い、それを乗り越えていくお話でもありますね。春の屋には何故か男の子の幽霊が住み着いていて、おっこにだけ見える。おっこにとってライバルとなる真月の秋好旅館にも座敷童みたいな女の子がいて、彼らとの関係や真月との関係もおっこの成長に関わってきます。

キャラデザインは子ども向けな感じですが、話はしっかりしたドラマになっており、客を含めて登場人物にも無駄がないです。キャラ描写も丁寧。真月もいいよ。エピソードも全て無駄なく絡み合っていて、終盤に向けてきっちり収束する。だからこそラストにぐっと来る。心に響くいい映画です。

<ネタバレ>

春の屋の座敷童みたいな男の子・ウリ坊はおっこの祖母の幼馴染みだった。事故の時おっこを助けたのはウリ坊。秋好旅館の美陽は真月の亡くなった姉だった。2人は自分の大切な人とその行方が心配でこの世に未練が残っていた次第。春の屋には鈴の鬼もいて、それもおっこが封印を解いたことでウリ坊や美陽と共におっこの友だちになる。

彼らがおっこにしか見えないという時点で、これは多分ラストでおっこは彼らが見えなくなるな、そのために何か起こるなと予想はつく。成長すると見えていたものが見えなくなる、不思議の世界へ行けなくなるのは児童文学では定番の1つだから(ナルニア国物語もそんな感じだしね)。けど、今作ではその仕掛けが秀逸でした。

おっこが心の奥底に抱えていたのは両親の事故。見た目は元気に頑張っているようでも、おっこは度々両親の夢を見る。おっこの心の中ではあの事故はまだ終わってない。それが占い師のグローリーの車に乗っている時に表に現れる。それでも若おかみを頑張ること、学校の友だち、いいライバル関係の真月など、花の湯温泉の生活がいつしかおっこの新しい支えになっていったのだろう。

おっこがもてなした親子が書いた紹介記事が春の屋を繁盛させるが、その記事ではおっこは本名「関織子」ではなく「若おかみのおっこ」として書かれていた。そのためおっこの両親を死なせたトラック運転手とその家族がおっこのことを「関夫婦の娘」とは知らずに春の屋にやってくることになる。彼らにこれ以上ない最高のもてなしをした後に、あの事故の運転手だと知ったおっこの衝撃。

ここでおっこの出した答が素晴らしい。それだけ「春の屋の若おかみ」がおっこの中で揺るぎないものに成長していたのだろう。おっこは事故も両親の死も乗り越えて前に進む。もう両親も花の湯温泉もおっこの一部になったんだな…みたいな気がしました。

おっこと真月が神楽に選ばれ、花の湯温泉の未来の担い手となったことで、ウリ坊と美陽も昇天する。成長したおっこと生まれ変わったウリ坊や美陽たちが出会うところも見たいなーと思いました。

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