パーフェクトブルー

パーフェクトブルー BD

1998年
時間 81分
監督 今敏

アイドルグループCHAMから卒業し、女優へと転身した未麻。連続ドラマのレギュラーになるも端役扱いで台詞もほとんどなく、レイプシーンまでやらされる有様。それでも厳しい仕事をこなしていく未麻だが、周りで次々と謎の事件が起こり始める。脅迫ファックス、ファンレターを装った嫌がらせ、何者かによって自分の日常が書き綴られる「未麻の部屋」というサイトも出現。そしてついに殺人事件が…!?

アニメですが、リアルでシリアスな大人のサスペンスドラマです。子どもには刺激の強い描写もあるのでご注意。実写でもおかしくない内容ですが(2時間サスペンスでも行けそう)、心理表現はアニメならではの効果もあるし、アニメにすることで独自のサスペンス感・ホラー感を出せてるところもあると思います。

CHAMは3人組のアイドルだったけど、それほど売れているわけでもなかった。未麻は事務所の意向もあったけど、自分でも納得して女優への道を選んだ。…はずなのに、やっぱり心の片隅にはアイドルへの未練も夢も残っていたのか? 皮肉にも未麻が抜けてからCHAMは売れ出した。女優になった未麻には犯される役とかヌード撮影とか辛い仕事が続く。ファンの中にはそんな未麻を嫌がりアイドルに戻って欲しいと思う者もいた…?

未麻の前にアイドル時代の未麻の幻影が現れたり、出演中のドラマの内容が作品の内容とも被りだして、夢と現実の境がだんだん分からなくなっていく…という描写が秀逸。ネットの取り入れ方も上手くて、パソコン機器は当時のものでも、その使われ方は今でも十分通用する。誰かが自分を騙って今日は何処へ行った・スーパーで何を買ったかまで詳細にネットにアップされ続けるのは恐怖。どれが夢でどれが本当? それとも全部夢? 追い詰められた未麻の前に現れたのは…。

<ネタバレ>

冒頭のコンサート会場でケンカしてた未麻信者みたいな男。そいつがストーカーになって出没するのですっかり騙されてましたが、偽未麻サイトも嫌がらせも、脚本家らの殺人事件も、本当の犯人は実はマネージャーのルミでした。ストーカーはルミの運営していた「未麻の部屋」を通じてルミの手先みたいになっていたのです。ルミは元アイドルだったけど人気が出ないまま終わってしまい、未麻に自分の夢を託していたのですね。

ルミは未麻にアイドルを続けさせたかった。レイプシーンの撮影では泣いていた。未麻に思い入れるあまり、未麻のイメージを貶めたと思う者たちを次々と制裁し、最後には自分と未麻が混同、同一化してしまう。追い詰められた未麻の見た幻影はそのままルミの実態にもなっていた。未麻の見た幻影とルミの脳内未麻が重なった時、鏡に映るルミの本当の姿が戦慄すぎる。

未麻の出演していたドラマの内容が多重人格者の殺人劇になっていて、ドラマの収録画面がそのまま作品の説明にもなっている構成は上手いです。ルミがどうしてこうなったかの説明もドラマシーンを使って語られてますしね。ルミのその後も未麻が演じた人物で示唆されてます。アイドル未麻になったまま戻らないルミとアイドル未麻を脱して女優として成長した未麻。ラストは鏡に映る姿で、虚構に生きるルミと現実に生きる未麻の対比をしてるようでもあります。

サスペンスとしての面白さもさることながら、どこまでが夢か現実か自分が自分なのか分からなくなっていく怖さはさすが。やっぱり今敏はすごいです。

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