クラッシャージョウ

1983年
時間 132分
監督 安彦良和

宇宙の何でも屋と呼ばれる職業集団クラッシャーが活躍する2160年代。その中の1つ、ジョウのクラッシャーチームは難病で冷凍睡眠中の女性を惑星ミッコラへ運ぶ仕事を請け負う。だがワープ中に女性が消えてしまい、ジョウたちは連合宇宙軍のコワルスキー大佐に海賊の疑いをかけられる。そこへかつてジョウの父の仲間だったバード中佐が現れ、消えた女性に関する情報をもたらす。ジョウたちは汚名を晴らすためバードの情報を頼りに惑星ラゴールに飛ぶが…。

高千穂遙の小説「クラッシャージョウ」のアニメ化作品。物語はこの映画のために高千穂遙が新たに書き起こしたオリジナル。安彦良和が小説の挿し絵を担当していたこと、ガンダムで安彦良和が注目を集めたことなどから、安彦良和が監督に決定。本来アニメーターである安彦氏が監督しただけあって、安彦良和の作家性が前面に押し出された作風になり、安彦氏の絵と動きへの拘りが細部に渡って貫き通され、極上の1本となっています。

私もガンダムで安彦良和のファンになりました。アニメーターに留まらず、絵師としても一級の腕を持つ安彦氏。1枚の絵として見るだけでも震えが来るほどなのにこれがもう動く、動く、動き回る、それが全編余すところなく味わえるとなってはお宝作品になるのも必至。宇宙ものなので宇宙船やメカの出番も多いのですが、メカ類まで1つ1つ手描きで細かい回り込みを行っているんですよね。BDのブックレットによると、時間をかけて少人数で作画することで、絵の崩れや違うテイストの絵になることを防ぎ、クオリティを高いレベルで保つことが出来たそうです。

安彦良和の絵を見てるだけでも満足できてしまう作品ですが、スペースオペラの楽しさも今作のポイント。宇宙をまたにかける活躍は元気で夢があって見ていて気持ちがよくなるので、やっぱりいいものです。元が小説で背景設定がしっかり出来上がっているので、若いジョウたちのアクションの裏で老獪な大人たちの企みも進み、1本調子ではないストーリーになってて奥行きもある。

当時の業界ネタが多いことでも有名ですが、知らなくても問題なく楽しめるのでご安心を。私もそんなに知ってるわけでもないし。ただ安彦良和の絵でダーティペアを見られたのはよかったな。どこで出てくるかは見てのお楽しみと言うことで。

<ネタバレ>

ジョウたちがスコーラン家の次期当主と思っていた冷凍睡眠女性は、オーバス総合大学重力物理学研究所の研究員マチュアだった。彼女の父が作った新型ワープ装置のメンテナンスのために海賊にさらわれた。ジョウたちは宇宙海賊マーフィ・パイレーツがマチュアをラゴールへ運ぶのに利用されたのだった。

だが連合宇宙軍に海賊行為の容疑で拘束されたことで、ジョウたちのチームはジョウの父ダン(クラッシャーの草分け的存在で、今はクラッシャーの本拠地惑星アラミスのクラッシャー評議会の議長)から6ヶ月の資格停止を言い渡されて、ジョウは酷い父だと憤る。それで容疑を晴らすためにバードの情報に乗っかるのだけど、バードの目的はラゴール大統領と海賊の癒着を暴くことであり、ジョウたちはバードにも利用された形になった。でもジョウたちにバードを差し向けたのはダンなのね。

息子だからこそ形の上では厳しく処分せざるを得なかったのだろうけど、ジョウの潔白は信じていたんでしょう。だからバードに利用されるかもしれないと分かった上で彼を差し向けた。息子に汚名を晴らすチャンスを与えるために。マチュアの父が海賊に利用されるかもしれないと分かった上で娘を助けるために冷凍睡眠させたように。ラストのアルフィンとの会話でジョウもそのことに気付いたようです。子どもを思わない親はいないと──。

ドンパチの裏に親子のドラマも仕込む欲張りな構成でした。小説家とアニメーターが中心になって作った作品ゆえ、脚本には多少慣れないところもあったとは思いますが、作り手の「これがやりたいんだあぁ!」という熱意はそれを上回って魅せてくれる。小説ファンにも慣れ親しんだ挿し絵がそのままの姿で動くのは嬉しかったのじゃないでしょうかね。