幻魔大戦

1983年
時間 135分
監督 りん・たろう

トランシルバニア王国の第1王女プリンセス・ルナは乗っていた飛行機が墜落した時、宇宙意識フロイからの呼びかけで地球が幻魔に襲われることを知る。ルナは幻魔から地球を守るために超能力を持つサイオニクス戦士を世界中から招集。その1人、東丈(あずまじょう)は強大な念動力に目覚め、迷いを経て強いサイオニクス戦士に成長していく。幻魔の攻撃が始まり、ルナと丈たちは力を合わせて幻魔との大きな戦いに立ち向かう。

角川映画が初めて手がけた長編アニメ。原作の「幻魔大戦」は石ノ森章太郎の漫画版を持っていたので、キャラデザインを大友克洋が手がけると聞いて、どんな作品になるんだろう?と興味を引かれて映画館へ行った思い出があります。実は「幻魔大戦」には色々なバリエーションがあるのですが、今作は物語の始まりの部分、平井和正・石ノ森章太郎の共作で漫画で描かれたストーリー部分が元になっています。

大友克洋がアニメに関わったのも実はこれが最初。しかし本作ではキャラデザインのみなので、大友克洋の作家性が出るところまでは行きませんでした。確かに氏のデザインなのは分かるけど、動かし方が従来通りで「期待してたのと違う…」みたいに感じたのも確か。従来のアニメの枠を破ろうと言う気概はあったと思うのですが、大友克洋の絵を生かし切れず結果的には凡庸なアニメになってしまったのは惜しいところでした。

それでも石ノ森章太郎の絵で「幻魔大戦」を読んでいた者にはそれなりに新鮮なところはありました。ソニー・リンクスはよかった(漫画版ではサンボ)。ベガもかっこよかった。ルナのファッションセンスは今作の方が好み。お姉さんはちょっと古風すぎかとは思いましたが…。ソニーのBHFカセットテープが出てくるところは当時映画館で見た者にはすごく「今」を感じさせてくれて良かったのですが、40年近く経って見ると「郷愁」になっちゃってるなあ(^^;。

アニメの作られ方としては普通で取り立てて良くも悪くもない…というのが正直な感想でしたが、キース・エマーソンの音楽はよかった。「光の天使」は今も好きで後年CDで入手して時々聴いてます。

<ネタバレ>

漫画版ではルナは王女故の気位の高さから、丈はコンプレックスから、それぞれ成長する姿が描かれるのですが、アニメではこの辺をかなり端折っているので少し分かり難かったかな。三千子は石ノ森章太郎の漫画なら違和感なく読めるけど、大友克洋の絵だとこの弟一途さはちょっとシュールかも。元のストーリーを知ってる者なら「このシーンはアニメではこうなったのね、ここは変更したのね」という楽しみ方が出来るのですが、予備知識一切なしの人が見たら展開に説明不足なところが多いかもと思いました。

幻魔は何億年もの間、あちこちの宇宙を滅ぼし惑星を破壊してまわる(ベガの故郷も含まれる)ほどの壮大な宇宙エネルギーなので、超能力者が集結した程度で勝てる相手ではなく、漫画版では未完に終わっています。平井和正が書き直した小説版も壮大になりすぎて未完らしい。が、今作では「おれたちの戦いはこれからだ!」で終わらすのを良しとしなかったらしく、カフーを倒したことで幻魔にも勝ったことにして決着がついたことにしちゃう。幻魔大王どこ行った!??

平井和正のテーマは「善(光)と悪(闇)の戦い」ですが、アニメではそれを「愛は地球を救う」に変更することで、誰にも分かりやすい話にしたのかなと思います。「愛で悪に勝つ」を作品メッセージにするなら勝利で終わらないと伝わりませんしね。けどこういう方向に行かれてしまうと、結局は従来の大枠(無難)の中に収まってしまうので、大友克洋を起用した先進性とのバランスが悪くなり、もっと突き抜けたものを期待していた私には「悪くはないけどそれほどでもない」という感想になってしまったのかなと思います。

ただこれが大友克洋がアニメに関わるきっかけになったこと、今作ではまだ作画陣が描き切れていなかった(と私は感じた)大友克洋の絵が、この後大友克洋自身の手によって「AKIRA」に結実したことを思うと、今作もジャパニメーションが生まれるのに必要なステップの1つとして意義があったのではと思えます。

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