MEMORIES

MEMORIES BD

1995年
時間 113分
監督 彼女の想いで:森本晃司
最臭兵器:岡村天斎
大砲の街:大友克洋
総監督 大友克洋

大友克洋が制作総指揮・総監督をした3つの話から成るオムニバス形式の作品。それぞれの話は独立していて、アニメーションの可能性を追求した実験作みたいなのも入ってます。手描きのセル画で味わうリアルな動きは時を経ても今なおすごい。アニメならではの珠玉の3本です。以下、作品毎に感想メモを。

彼女の想いで

宇宙のゴミ処理を行っているコロナ号は仕事から帰還中にSOSを受信。救助に向かった先は宇宙船の墓場サルガッソーだった。コロナ号からハインツとミゲルが救難信号発信源と思われる宇宙船に向かうが、そこはかつてオペラ界で一世を風靡した女優エヴァの隠居船だったらしきことが判明。エヴァの思い出が飾られる船内で救助を求める生存者を探すハインツとミゲルだが…。

個人的には3作の中ではこれが1番好きかな? 宇宙、宇宙船、宇宙船の墓場、謎のSOS信号など、私の好きな要素がてんこ盛りなので。謎の宇宙船に入ってみたらそこに待ち受けていたものとは!という展開大好き人間にはとても楽しめます。船内のインテリアはエヴァの趣味(ロココ調?)で彩られ、至るところでホログラムや過去の映像らしきものが投影される。エヴァは生きているのか、助けを求めているのは彼女なのか、それとも…。

ジャパニメーションと呼ばれたセル画のリアルな動きを堪能できる作品。ミゲルがエヴァの幻影に誘惑されてしまうところも、ハインツが家族のことを思い出すシーンも、細かい動作一つ一つにまで拘りの動きが描き込まれ、見てる者が「絵の動き」に魅了される感覚はミゲルがエヴァに魅了されるのと似たようなものかもと思ってしまう。

<ネタバレ>

エヴァはとっくに亡くなっていて、エヴァの思い出を記録したコンピューターが彼女の死後も動いていて、彼女の思い出だけが一人歩きしていた…というオチなのですが、そこにハインツの回想が混ざるので、どこからがホログラムでどこからが回想なのか分からなくなるところがあります。この辺、脚本が今敏だと知ってなるほどと思う。これが後の「パーフェクトブルー」や「千年女優」など夢と現実の境が曖昧になるのを得意とする今敏の作風につながっていったのかも?と思ってしまう。

エヴァは夫を永遠に独り占めするために思い出の中で生きることにした。エヴァの思い出に取り込まれたミゲル、自身の思い出と葛藤するハインツ。エヴァの思い出(実体コンピュータ)は思い出に生きる人間だけを取り込み、思い出に生きない人間は排除するようで、こんなのに(SOSという形で)見込まれたら、たまったものではないですね。コロナ号の皆さん、不運でございました。

最臭兵器

山梨にある製剤研究所の研究員である田中信男は風邪薬と間違えて所長の机の上にあったカプセルを飲んでしまう。ところがそれは風邪薬ではなく、極秘開発中に偶然出来てしまった臭気を発生する物質だった。そのまま研究所で寝込んでしまった信男は朝起きたら研究員が全員倒れているのに気付き驚愕する。本社と連絡を取ってカプセルを東京に運ぼうとする信男だったが、彼の行く先々で人がどんどん倒れていく…!?

「彼女の想いで」がシリアス系なら、「最臭兵器」はコミカル系。けど、脳天気に笑ってられない皮肉も入っていて面白いです。信男が風邪薬と間違えて飲んだカプセルのせいで大変なことになる。しかも信男本人は周りの人々が倒れるのが自分のせいだと気付いてない。臭気は電子機器まで狂わせるので信男は誰とも連絡を取れず説明も受けられず事態を理解できないまま東京を目指してしまう。

このままでは東京が危ない!てことで、信男たった1人に対して自衛隊が攻撃を始め、それがめっちゃエスカレートしていくのが滑稽な上、アニメとしても懲りまくりで面白過ぎる。パニックコメディーとしても傑作だけど、こういうことが起こり得ないとも限らないと思うので、その点では笑えないです、怖いです~。

<ネタバレ>

問題のカプセルは人体に入ったことで信男の新陳代謝と連動し、信男の体から臭気が発生するようになり、その臭気で人々は倒れている。でも信男本人は状況が分からず、ついには自衛隊総動員の後アメリカ宇宙局まで乗り出す。マスクでは臭気を防げなくても宇宙服なら防げるだろうと言うことで。確かに臭気は防げたようです。信男が宇宙服に入ったのは名案だと思ったけど、まだ自分が原因だと気付いてなかったの、信男!? 脱ぐなあああ、そこでッ!!

ラストは笑えるけど笑えないブラックオチでした。あれが明日のニッポンになりませんように。ところで所長、そんな危ない秘密のカプセルを机の上に風邪薬の試作品と並べて置いておいちゃ駄目でしょ~と思ったけど、ブラックコメディだからそこは突っ込んじゃ駄目かな(^^;。

大砲の街

大砲を撃ち続ける街の1日を朝から夜までワンカットで描いた作品。

アニメでワンカット長回しに挑戦した実験作。アニメの場合、背景を途切れずにつなげていくのが大変な気がする…。画はシュールでアニメというより絵本みたいな感じで、絵本を長回しで見せてるようでもありますね。話は色々な解釈ができる内容であり、なかなか風刺が効いた作品になってます。

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