トロン: レガシー
年 | 2010年 |
---|---|
時間 | 126分 |
監督 | ジョセフ・コシンスキー |
エンコム社の社長だったケヴィン・フリンが失踪して20年。フリンの息子サムは父から連絡が入ったと知らされ、父のゲームセンターからコンピューターの世界"グリッド"に入る。そこで父そっくりの男クルーに出会うが、彼はグリッドの支配者だった。サムはゲーム場から謎の女性クオラに助けられ、父に何があったか知ることになる。クルーと父の関係は、父失踪の真相とは、サムはクルーと戦いグリッドからの脱出を目指すが…。
なんと30年近く経ってから作られた「トロン」の続編です。世界観は前作を引き継いでおり、フリンもアランも前作と同じ役者さんです。おかげで作中の時間の流れにも違和感なくついていけて、コンピューターの世界が前作とは段違いのハイレベルになってても、20年かけてアップデートを繰り返しここまで進化したのよね…と納得出来ちゃう。
CG描写はさすがは2010年の出来映え。もうCGだけで感動できる時代ではないですが、前作ファンには前作のバイクやゲートがアップデートされてお目見えする姿に感動できる。輪郭だけの積み木みたいだったゲートが複雑なディテイールを備えて登場、ライトサイクルゲームも後ろに壁を作りながらの走行はそのままにデザインはアップデートされ、レーンも立体的に交差してレースもより複雑に。ソーラー帆船もデザインを変えて登場してくれたし、「トロン」の世界を今のCG技術で見てみたいという夢が叶ったのが嬉しい。
物語も時代に合わせてアップデートしてるようです。前作の1982年はコンピューターはまだ一般には馴染みが薄いものだった。だからフリンが戻れた理屈がうやむやでも通ったのですが、今作では「グリッド世界への扉はユーザー側からしか開けない・扉は8時間で閉じるので8時間以内に戻らなければいけない・戻るにはマスターキーが要る」とルールが明確になってます。おかげで物語的にも8時間以内に戻らなきゃ!という制限がかかってハラハラできる。
それと父と息子の関係が絡んでくるのも前作にはなかったポイント。サムは父に会えるのか、サムの20年の空白は埋められるのか──。ところで前作にいたトロンはどこに?
<ネタバレ>
サムがクルーとライトサイクルゲームをしていた時、ゲーム場から救い出してくれたのがクオラ。彼女はシティから離れた場所でケヴィンと暮らしていた。やっと本当の父と再会できて喜ぶサム。20年前、グリッド世界を完璧にするのに夢中だった父は自分の分身プログラム(クルー)を作り、アランのプログラム(トロン)と3人で夢の実現に向かっていた。しかし電子の世界から新しいデジタル生命体ISOが生まれた時、ケヴィンの考えは変わる。だがクルーはケヴィンの変化についていけなかった。クルーはケヴィンの変化を裏切りと取り、クーデターを起こす。トロンが楯になりケヴィンはクルーから逃れたものの、時間内に戻ることが出来ずそのままグリッドに閉じ込められたまま20年過ぎた──と言うのが父のいきさつ。
サムはさっそく父を連れ戻そうとするが、ケヴィンはクルーの野望に気付く。扉が開いている今ならケヴィンのマスターキーさえあればプログラムでも現実世界へ出られる。クルーはプログラムの軍団を率いて現実世界に乗り込み、人間たちを滅ぼしてしまうだろうと。アランのポケットベルに呼び出しをかけたのはクルー。サムに扉を開かせるための罠だったのだ。
ケヴィンはクルーを阻止するために戻らないことにするが、サムはどうしても父と一緒に戻りたい。そりゃそうだよね。で、サムが動いたことでケヴィンも動かざるを得なくなり、マスターキーの争奪戦が始まります。しかしケヴィンも成長したサムに会えたことで覚悟をつけられたのだろう、クルーを吸収合体してクルーと共に消滅、サムとクオラを現実世界に送り出す。
ケヴィンは相応に歳とってるけど、クルーは若いままなんですよね。クルーは若い時のケヴィンの分身だから、その時点で時が止まっている。だからケヴィンの変化が理解できない。ケヴィンは若い頃の自分に阻まれてISOを守れなかった(クオラがISOの最後の生き残り)。ケヴィンの20年は自分の間違いと闘う20年だったろう。
父に会い、父の間違いを知ってサムの空白も埋まったようです。20年前、父がいなくなってから止まっていたサムの時間もやっと動き出したよう。ところでデジタル生命体が現実世界に来て肉体持ったらどうなるの?という疑問はありますが、サムが空白を埋めて再始動する物語だったと思えばその辺はまあいいか(^^;。
個人的な不満はトロンの扱いが小さかったこと。クルーの部下にリンズラーという強いヤツがいたのですが、それがトロンだったのですね。プログラムを書き換えられてクルーに使われてたってことらしいけど、顔見せないし、喋らないし、他のヤツと見分けつかないし、終盤で突然思い出して一瞬で散るって…。サムとケヴィンのドラマにも絡ませて欲しかったな。前作のメインキャラなのにあまりに存在感がなくて悲しかったです…。