オブリビオン

2013年
時間 124分
監督 ジョセフ・コシンスキー

地球が謎のエイリアン「スカヴ」に攻撃されて60年。その戦いで地球は荒廃、人類はタイタンへ移住。ジャックとヴィクトリアは人のいなくなった地球で採水プラントの監視を行っていた。ある日墜落した飛行物体の調査に向かったジャックが救助したのは夢で見たことのある女性だった。そこからジャックと地球の運命は大きく動き出した。過去の真相と向き合い、ジャックが選んだ道とは──。

侵略戦争後の世界という設定。冒頭のナレーションでざっと状況説明してくれますが、それによるとスカヴが月を破壊し、その影響&スカヴとの戦いで地球は壊滅的な被害を受けたらしい。地上には住めなくなって人類はタイタンに移住、地球の後始末を行う監視要員がジャックとヴィクトリア(ヴィカ)の2人。2人の任務は残りあと2週間…というところから話は始まります。ヴィカは任務が終わってタイタンに行くのを楽しみにしてるが、ジャックは荒廃しても地球に懐かしさを感じている。なお仕事をスムーズに行うためなのか、2人は任務に就く前の記憶は消されているらしい。地上にはスカヴの残党がいて襲われる危険があるので、任務には注意が必要という状況。

今作の状況設定、荒廃して半分砂漠化した地球の様子をスケールの大きな映像でじっくり見せてくれていること、ジャックとヴィカの暮らしぶりが仕事だけでなくタワーや室内の状況なども丁寧に見せてくれていること、見て楽しめるSFの味わいがあってけっこう好きです。乗物のデザインもSFらしくていいし、丸いドローンもいい。こういう部分で楽しめるのもSFには大切。

ところで今作、侵略SFの形を取っているけど、ジャックが過去の記憶と向き合う話でもあります。オブリビオン(OBLIVION)とは「忘却」の意味。ジャックの消された記憶には何があったのか、夢とそっくりの女性は何者なのか、それがスカヴの侵略とどう結びついてくるのか、観客もジャックと一緒に過去を探し謎を探る。初めて見る時と、最後まで見て全てが分かってからもう一度見直した時では登場人物の心理も少し違って見えてくる。そういった見比べも楽しい作品です。

<ネタバレ>

まずジャックたちが任務に当たって記憶を消されているという時点で胡散臭かったですが(普通に考えて記憶消す必要ないよね)、やっぱりそれには裏がありました。ジャックは上空のテットが人類の指令本部で、地上のスカヴは侵略者の残党だと思っていた。実は逆だった。テットこそが侵略者であり、スカヴは生き残りの人間たちだった。人類はタイタンへ移住などしていなかった。

しかもジャックはテットに作られたクローンだったと分かる。それも記憶まで同じ完全な複製。だから記憶を消す必要があったのだろう。ジャックのクローンはたくさんいるらしく、夢の女性ジュリアを助けたジャックは49号らしい。汚染地帯にいたジャックは52号。ちなみに汚染地帯とはジャックどうしを鉢合わせさせないための境界だったもよう。もちろん汚染も嘘です。なお、オリジナルのジャックは状況から考えて多分…もうこの世にはいないでしょうね。

しかし大量のクローンの中には記憶の消去が不完全なものもまれにいたのでは。それが49号の夢になって現れていたと思われます。49号はしばしば夢を見て地球に郷愁を感じていた。廃墟から本を拾って読み、こっそり秘密の水辺に小屋を建てて「オリジナルがそうしたかったと思われる生活」を時々やってみていた。52号にも49号と似た症状があったのではと思われる。ジュリアを見た時52号の頭に展望台のシーンがフラッシュバックしてたし、49号が52号のタワーに行った時、ヴィカとの会話から52号にも地上への郷愁があったことが伺われるから。

ジュリアが自分の妻だったと知り、少しずつ記憶を取り戻して49号の中にオリジナルのジャックが蘇ってくる。ジャックは人間たちのために立ち上がり、テットへ乗り込む。オデッセイ号のジャックが自分を犠牲にしてでもジュリアを助けるよう動いたなら、49号も同じように動くよね…。同じジャックなんだから。そしてジュリアを見て目覚めた52号も自分を取り戻し、49号が作った秘密の小屋に3年かけて辿り着いた。ジャックなら見つけられる、自分ならどうするか知っているから。

今作は侵略者の設定がかなり雑というかよく分からないところが多いけど、多分そこは問題じゃなくて、記憶と自己の存在について問うのが目的の作品だと思います。ラストでジュリアの前に現れたのが49号ではなくて52号でも同じジャックでいいのか? いいのです、ジュリアにはオリジナルと49号の区別はついていなかった。ジュリアにはどちらも同一人物。ならば49号も52号もジュリアには同一人物でしょう。中身が同じならそれは同じ人間だと。

余談:ヴィカの思い

オデッセイ号がテットに引き寄せられた時、船に残っていたのはジャックとヴィカだけだった。それで2人がクローンを作るための犠牲になったと思われる。フライトレコーダーの記録からヴィカは密かにジャックに思いを寄せていたことが分かる。だがオリジナルのヴィカはジャックに妻になる女性がいることは知っていたし、ジャックとジュリアの間に割り込める隙などないことも分かっていたと思う。せいぜい写真を撮るくらいで。

そのヴィカの思いがクローンになったことで図らずも叶えられた。ジャックと2人きりの生活はヴィカにとって「心の底で望んでいた生活」そのものだったろう。ヴィカが規則を理由にジャックの地上への思いを拒否し続けたのは、ジャックが何処かへ行ってしまう不安があったからではないか。記憶なんかなくたってヴィカは直感で気付いてたと思う、ジャックの心はここにないことを。だから必死でつなぎ止める。でもジュリアが現れたらもう止められない。ヴィカには一瞬で分かったろうから、彼女がジャックの心をつかむ女性だと。

ヴィカの愛は切ない。叶えられぬ愛。それが叶えられてしまった残酷さ。テットが破壊された後、たくさんいたジャックとヴィカはどうなっただろう。自由になった状態でも長い間一緒に暮らせばジュリアが現れなくても結局はすれ違いが大きくなっていく気がする。それでも1組くらいは互いのすれ違いを乗り越えて一緒になれたジャックとヴィカがいてくれたらいいなと思ってしまうのです。

関連する記事

ANON アノン

映画 2020/06/25

ダウンサイズ

映画 2018/12/03

シグナル

映画 2019/08/15

アップグレード

映画 2020/01/30