オデッセイ

オデッセイ BD

2015年
時間 142分
監督 リドリー・スコット

火星有人探査計画(アレス3)のミッション中に砂嵐が襲い、メンバーは母船ヘルメスに撤退するが、マーク・ワトニーが事故で吹き飛ばされてしまった。ところが死んだと思われたワトニーは生きていた。火星に1人取り残されたワトニーは諦めずに生き抜く方法を探る。地球と連絡する手段はなく、次の探査船が来るのは4年後。しかし食料は1年分しかなく、水や酸素はどうするか──。想像を超える火星サバイバルが今始まる。

荒唐無稽なSFとは違って、その気になれば実現しそうな火星探査が舞台なので、近未来と言うよりはもう現実の範疇に入りそうな作品です。おかげでサバイバルの内容もリアル。作中のアレス計画は3回目という設定(だからアレス3)。アレス計画は何回もあって、4回目、5回目も計画されています。今回も火星上にハブと呼ばれる基地を作って、そこでメンバー6人が何ヶ月も生活できるようになっています。

しかしミッション18日目にして砂嵐のせいで作戦は中止せざるを得なくなる。ヘルメス号に戻る時、ワトニーがアンテナに吹き飛ばされ、状況からもう生存の可能性はないと思われた。嵐で着陸船が倒れる前に出発しなければ残りの5人も危なくなる。やむなく船長のルイスは泣く泣くワトニーを諦めてヘルメスに戻り、地球へ戻ることになる。ところがどっこい、ワトニーは奇跡的に生きていた!

ここから火星1人ぼっち大作戦が始まるのですが、現実的な火星を舞台にした作品もこれまであったようでなかったので、火星の雄大な景色もハブでの生活ぶりも興味深くて面白かったです。サバイバルの過程で火星探査の歴史に触れてくれるのもいい(しかもそれが大活躍!)。個人的には火星の重力(地球の1/3)も再現してくれたら嬉しかったのですが、さすがにそれは難しかったのかな…。

前半はワトニーの1人頑張りが中心ですが、中盤~後半からワトニー救出作戦も始まって、だんだんスケールも大きくなって、宇宙ものらしいダイナミックさも味わえます。

でも今作で一番心打たれるのはやっぱり、絶望的な状況でもめげずにアイデアと工夫を凝らし、決して諦めずに前向きに、しかもユーモアも忘れずに努力するワトニーの姿ですね。苦境に立たされた時(例えば先が見えない状態で頑張らねばならない時など)に見ると、勇気や元気をもらえそうです。

<ネタバレ>

食料用にジャガイモを栽培したりしてたワトニーだけど、火星の地表を地球でモニターしてたNASAが彼の動きに気付く。ワトニーが生きている! ここからワトニー救出作戦が始まります。ここで活躍するのが1996~1997年に火星に送られたまま放置されてた無人探査機パスファインダー。これを掘り出し修理して地球との交信に成功、希望の光が見えたと思えたのも束の間、ジャガイモ畑が全滅するアクシデントが起きる。このままでは救出まで食料が保たない。NASAは突貫工事で輸送船を作って打ち上げるも失敗。

ここでグローバルな協力(中国)が来るのは素直に喜びたい。こんな時くらい世界は1つになろうよ。ここでダイナミックな作戦が展開される。地球に帰還中のヘルメスに救援物資を送ってワトニー救出に向かわせる作戦。ルイス船長にしてみればワトニーを置き去りにしたことがずっと心に残っていただろうから、今度は必ず助けたいと思ったはず。それは他のクルーも同じ気持ちだったろう。

ワトニーはルイスたちと打ち合わせてアレス4(この次のアレス計画)用に置かれていたMAV(小型のロケット)に向かう。ロケットを軽くするために不要なものは全部取り去るとか、宇宙空間をアイアンマンになって飛ぶ(笑)とか、最後まで真剣な中でもユーモアを忘れない精神で楽しませてくれますが、これ、映画だとパパパッと展開していくけど、実はこの間すごい時間かかってるんですよね…。

ワトニーが救出されるまで1年半。ワトニーがアレス3のハブからアレス4の予定地へ移動するだけでも数ヶ月。その大部分は黙々と過ごすのに費やされているわけです。映画はその中の一場面を切り取ってつないだようなもの。それを思うと改めてワトニーの忍耐力すごいわと思う。これはやっぱり元気と勇気をくれる映画です。1年くらいの我慢なんて何だと思わせてくれる。ワトニー、ありがとう。

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