月に囚われた男

2009年
時間 97分
監督 ダンカン・ジョーンズ

月から採れるエネルギー資源を活用するようになった近未来。サムは3年契約で月の裏にあるルナ産業のサラン採掘基地で働いていた。従業員はサム1人だけでAIのガーティが相棒。3年の終わりが近づいてきた時、サムは資源回収時に事故を起こしてしまう。ところが気がついた時、基地に自分とそっくりな男がもう1人いた!? 男の正体は、サムとの関係は、そしてルナ産業が隠していた真実とは…。

低予算SFの傑作。何と登場人物がたった1人なのです。途中から2人になりますが、それでも十分に少ない人数。舞台も月の採掘基地内だけで、外の描写も月面を車で走るくらいでセットも最小限。それでこれだけの面白さを出せているのだから、アイデアと見せ方次第でいくらでも良いものは作れるんだという証みたいな作品ですね。しかもなんちゃってSFではなく、正面からSFそのものを主題に描いてくれてるのがいい。こういう作品があるから低予算SFも侮れないのです。

個人的にツボだったのがコンピュータのガーティ。一見、「2001年宇宙の旅」のHALを連想させるガーティですが、実は主人公の味方(というよりも親友?)。ニコちゃんマークで簡単な表情を出すのですが、主人公の境遇に同情する時、「泣く」んですよ。涙付きニコちゃんマークを見た時にはやられたわ…! 声は無表情なのに、マークには涙アイコン…! 胸におおっと来るじゃありませんか~。ガーティ、いいやつ過ぎる~~。

登場人物が"2人"になってからは、この状況と謎を解き明かすサスペンス風になっていくのですが、2人の間に交わされるドラマと徐々に明らかになっていく真実が切ない。ここは初めて見る人には是非ネタバレなしで「おおっ」と楽しんで欲しいところ。映画というよりハヤカワのSF小説を読んでるような趣きもあり、SF好きにはお勧めです。

<ネタバレ>

サムが事故後に治療室で気付いた時、傷がないので「あれ?」と思った。目覚めたサムはガーティに事故で治療中と説明されるが事故の記憶はない。しかもこっそり治療室から出た時、ガーティが地球のルナ産業とリアルタイムで交信しているのを見てしまう。通信は故障中で地球と通信は出来ないはずなのに何故!? 疑問を持ったサムは事故現場の採掘車へ行き、そこでもう1人の自分を見つける。事故に遭った最初のサム(火傷と事故の傷がある)と後から気がついたもう1人のサム(傷がなく最初のサムより3年若い)。事故に遭ったサムは自分がオリジナルで後から目覚めたやつはクローンだと思うが、実はどちらもクローンだった。

ルナ産業はサム(DNA提供者のオリジナルのサムは地球で普通に歳とって暮らしている)のクローンを大量に用意して3年ごとに入れ替えて使っていたのですね。今回は事故のせいで3年のサイクルが崩れて、3年が終わりきらない内に次のクローンが再生されてしまい(これが2人目のサム)、サムが2人になって鉢合わせするという不測の事態に。ガーティにもこれは想定外だったと思われます。でもガーティの任務は「サムを守ること」なので、2人になったサムをどちらも守ろうとするのが泣ける…。

ここで気になったのが3年間近のサムの体調がおかしくなっていること(事故を起こしたのも幻覚が見えるようになっていたせい)。もしかしてここのクローンは3年で限界が来るのでは? だから3年ごとに入れ替える必要があるのでは?と…。事故サムは死期を悟って自分は事故車に残り、若くて健康なサムを地球に逃がす道を選びます。若いサムは電波妨害をしていた装置を壊し、次のクローンたちが自分たちの境遇に気付けるように仕向けてから地球へ立つ(資源運搬艇を利用)。その甲斐があったようなラストで幕を迎えますが、クローンだけでなく企業の人材の使い捨てにまで問題を広げて考えさせてくれる作品です。

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