パッセンジャー

パッセンジャー BD

2016年
時間 116分
監督 モルテン・ティルドゥム

宇宙移民船アヴァロンは植民惑星ホームステッドIIに向けて航行中、隕石群との衝突で冬眠カプセルが故障、ジムは目的地に着く90年も前に目覚めてしまった。カプセルには戻れず、乗務員ではない1乗客に過ぎないジムの権限ではコントロールルームへのアクセスも出来ず、どうすることも出来ない。目的地に着く前に目覚めてしまった男女2人の運命を描く衝撃のスペースロマンス。

これはお勧めです! SFをたっぷり楽しめる上、素敵なロマンスも組み込まれていて、好みのど真ん中に来ましたね。まず、もしも移民船で目的地に着く前に目覚めてしまったら…という発想があるようでなかった。ホームステッドIIに着くのは90年後。冬眠カプセルに戻れなければ、普通に考えて目的地に着くまでに一生が終わる。ホームステッドIIを見ることも出来ず、植民星でやりたかった夢も破れ、ただただ孤独に90年間…自分だったら耐えられるだろうか。本作の試練は見る者をも巻き込んで考えさせてくれます。

問題提起の部分もさることながら、宇宙移民船アヴァロンの設備も豪華で楽しませてくれる。個室、共用施設、中央広場、バー、ゲーム、スポーツ、船外に一部張り出したプールも素敵。あんなところで泳げたらすごく気持ちいいだろなあ。後半、事故の後遺症で時々無重力になることがあるのですが、無重力になった時のプールの描写がまたすごい。おおお~あんなになっちゃうのか~。

5000人が眠る中でのジムの孤独、もう1人の目覚め乗客オーロラとの関係、エコノミークラス(ジム)とファーストクラス(オーロラ)ながら、船内で孤独を分け合って暮らす2人はやがて恋に落ちるのだが、事件が起きる…。最初の事故から時々具合がおかしかったアヴァロンだが、ついに…? そしてジムとオーロラの関係は!?

<ネタバレ>

「男女2人だけが目覚める」ということしか知らない状態で見たので、オーロラが目覚めた「真相」には大びっくり。オーロラも事故で目覚めたのじゃなかったのか! 孤独に耐えかねたジムが冬眠中の乗客の中から理想の女性を起こしてしまったのです。本来なら植民星に着くまで眠っていたはずだったオーロラ。ジムは彼女の人生を奪ってしまったも同然。ジムのやったことは許されることではない。オーロラが怒るのも当然。しかしたった1人で孤独に1年過ごしたジムの胸中はそんな簡単には推し量れるものでもない。これは…物議を醸しますね…自分だったらどうする!?

しかし運命は2人に更なる選択を与え続けます。今度は本当に事故が原因で3人目の目覚めが。コントロールルームへのアクセス権を持つガス甲板長でした。が、冬眠カプセルの不調で体調がよくなく、ジムたちに上位アクセス権を持つIDを渡して息絶える。最初の事故から2年経って、アヴァロンの不調も限界に達していた。ジムとオーロラは2人だけで5000人の命を抱えるアヴァロンの危機と立ち向かうことになる。

危機を回避した2人は医療ポッドに冷凍睡眠機能があることに気付く。だが使えるのは1人だけ。ジムはオーロラをポッドに入れようとするが、オーロラはジムと生きることを選ぶ。極限の状況下で、どういう経緯であれジムがオーロラにとって大切な人になったことを再認識できたのもあると思いますが、理由はそれだけではなかったんじゃないかな。

アヴァロンは隕石群との衝突でダメージを受けた。もし誰も起きなかったらアヴァロンは2年後に機能停止し、乗客・乗員全員死の運命を辿っていただろう。この危機はジムだけでは回避できなかった。誰かもう1人起きる必要があった。ジムが孤独を我慢しオーロラを起こさなかったら、オーロラは眠ったまま死ぬ運命だったのだ。起こされたことでアヴァロンを救うことが出来、オーロラは死の運命から逃れられた。そう考えれば起こされたことで得た命をジムと共に過ごすことにしたのも分かる。

あと、これは私の個人的な感想だけど、自分だけ冷凍睡眠に入ったらそれはそれで後悔しそうじゃないですか。後悔を抱えたままでは新生活も楽しくないだろうし、いい小説も書けないだろう(←小説家にとってはけっこう大事)。オーロラが悔いのない人生を送れたならそれが何より。素敵なハッピーエンドだったと思います。

SFの面白さやロマンスを楽しませてくれながら「自分ならどうする?」を問い続けてくれた作品。お気に入り映画です。

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