オール・ユー・ニード・イズ・キル

2014年
時間 113分
監督 ダグ・リーマン

近未来、地球は謎の侵略者"ギタイ"に襲われ、人類は滅亡の危機にあった。統合防衛軍メディア担当のケイジ少佐は将軍に口答えしたことで二等兵に落とされ前戦へ飛ばされる。あっという間に戦死するものの、何故か目覚めたら前戦に行く前の時間に戻っていた。ここから死んだら死ぬ前に戻る時間のループが始まる。ループを繰り返す中でケイジは経験値を積み上げて腕を鍛え、ギタイの中枢部を倒しに行こうとするのだが…。

原作は日本の小説だそうですが、そちらは読んでいません。そのため映画のみでの感想となります。今作の特徴はまさに時間のループ。死んだらスタート地点に戻って同じ時間をやり直す。時間は戻っても記憶は消えないので、これから来る危機を回避できる。その繰り返しで危機を除けながら先へ進む。もうRPGと同じですね。主人公はあたかもゲームのプレイヤーのよう。しかし途中でセーブは出来ないので、失敗したらまたスタート地点から全部やり直さなくてはいけない。根性と持続力が要る。なかなかキツいゲームです。

ケイジは元は広告マンで、ギタイの侵略で広告会社が潰れたため仕方なく軍に入ったという経緯。だから軍でもメディア担当で戦闘とは無縁。これが前戦に放り出されるのだから、最初はもう相手にもならないわけです。それが何回もループを繰り返すうちに腕を上げて起動スーツも使いこなせるようになっていく。最初はへっぴり腰でモタモタのケイジくんの動きがどんどんスピーディでかっこよくなっていくのも面白い。

ところでこのゲームスタイルの物語にはステージが変わるポイントがあるようです。そのポイントを見つけたら次のステージへ進める。パンフレットに分かりやすいチャート図が載ってますが、まずはリタを見つけるのが最初のポイントですね。リタは1人で100体のギタイを倒したと言われる伝説の女兵士。彼女はループについて何かを知っている…? そこから得られる新たなルートの中からギタイを倒せる道は見つかるのか、人類を救うことは出来るのか!?

<ネタバレ>

戦場でケイジは青いギタイの血を浴びた。これがアルファと呼ばれる過去へのループを行う特殊なギタイだった。ギタイは過去に未来の情報を送って不利な動きを修正しながら攻撃していた。だから人類は常にギタイに先を読まれて勝つことが出来なかった。だがケイジがギタイから過去へループする能力を得たことで反撃のチャンスが訪れた。実はリタも以前にアルファの血を浴びてループ能力を身に着けていた時期があった。100体倒しはループ能力があったればこそ出来たことだった。リタがループ能力を失ったのは負傷時に輸血されてアルファの血を失ったから。

リタの経験からギタイにはオメガと呼ばれる頭脳本体があることが分かり、そいつを倒すためにケイジはリタの訓練を受けて浜辺の戦闘から次のステージへ進もうとする。ところで、ケイジが失敗するとリタが容赦なく「リセット」するの、面白いけど怖い(^^;。リタ側(普通の人)から見たらリセット後はどうなるのでしょうね。他の人たちもケイジのスタート地点に戻るけど記憶も消えるので、戻っても自覚できない(気付かない)と言うことでいいのかな。

ケイジはオメガの居場所を感応するが、それはオメガの罠だった。人間にループ能力が渡ったことにオメガが気付かないはずはないよね。からくも罠を逃れたケイジはリタの協力者(カーター博士)が作った逆探知装置からオメガの本当の居場所を突き止める。が、怪我をして輸血されてしまい、ループ能力を失う。もうやり直しは出来ない。リタ・J分隊と共に決死の作戦に出るのですが…。

ラストの考察

ケイジはオメガと相打ちみたいになるけど、死ぬ直前にオメガの血を浴びて再びタイムループ能力を得たようです。だから死んだ後また過去に戻れた。ここまでは分かる。問題はそのあと。ケイジが目覚めたのはいつものスタート地点ではなく、将軍に前戦へ飛ばされる前、基地に向かうヘリの中。しかもオメガはその日の朝に倒されたことになっていた。オメガが倒されるのはその日の夜のはずなのに、ケイジが目覚めた時点ではまだ死んでないはずなのに、どうして!?

これはケイジが得た能力がアルファではなくオメガだったからかも? 作中のルールだとタイムループを行っていたのはオメガです。アルファはオメガに信号を送る役割で、アルファが死ぬとオメガはアルファを死ぬ前に戻す。そして修正を行い先へ進む。最初にケイジが得たのはオメガに信号を送る能力で、ケイジが死ぬ度にその信号を受けてスタート地点へ戻していたのはオメガです。ケイジ自身にタイムループ能力が授かったわけではありません。ラストでケイジはオメガの能力を得たので、自分でタイムループ出来るようになった。つまり、ラストのループはオメガではなくケイジが自分で自分に行ったものと考えられます。

となれば。ケイジは繰り返すループでリタに好意を持つようになっていた。最後の作戦に付き合ってくれたJ分隊への気持ちもあるだろう。ケイジはリタもJ分隊の皆も無事な道を望んだのではないか。そのためまずは1日前にタイムリープし、1人でオメガを倒す作戦に出たのでは? オメガがいる場所は分かっているし、倒し方ももう分かっている。やられたらループしてやり直せばいい。何百回でも何千回でもやられないルートを攻略していけば1人でもオメガを倒せる時はやってくる。つまり映画はこの部分を飛ばしてケイジがオメガを倒してホッと出来たヘリのうたた寝時点から描写を始めたのではないかと考えてみました。それなら辻褄は合う。ケイジ、もの凄くご苦労さんですが。

タイムループの面白さ

タイムループにRPGみたいな攻略要素を入れたのがとても面白かったですね。ケイジは浜辺の戦闘だけでなく、時には抜け出して戦場へ行かないルートを試したりもしてました。それもまた自分の経験値になる。中にはどうしてもバッドエンドになる道もあり、方向性を変えなくてはならなかったことも。しかし、ループは好きになった人の死を何回でも見させられることにもなり、それは辛い。戻る度にリタは自分のことを覚えておらず、毎回一からやり直しになる。でもこのことがケイジにリタを救いたい、仲間になった人たちを救いたいと言う気持ちを持たせるようになったと思う。ループで戦闘力アップだけではなく、ケイジ自身も変わりました。危険から逃げようとするケイジから、大切な人のために危険へ飛び込んで行けるケイジに。

ラストのハッピーエンドはご都合主義ではなくケイジが自分の手でつかみ取ったものだと考えればとても納得できる。そう考えれば、ケイジの努力と苦労にこれくらい報いてもいいと思えるではないですか。これからリタとの新しい道を歩んで行って下さいね、ケイジ少佐。