12モンキーズ

12モンキーズ BD

1995年
時間 130分
監督 テリー・ギリアム

1996年、人類はウイルスによってほぼ死滅し、生き残った人々は地下に潜る生活になっていた。2035年、刑務所の囚人ジェームズ・コールは特赦と引き換えに過去に戻りウイルスを入手する任務に就く。だがタイムマシンの不調かジェームズはしばしば違う年代に飛ばされ、現実と妄想の区別がつかなくなっていく。ジェームズはウイルスの手掛かりと思われる「12モンキーズ」の謎を追うが…。

スカパーでお勧めSFになっていたので録画して鑑賞。出だしが上手くて、冒頭の「人類はウイルスで死滅した…」云々の下りが、実は今はまだ1990年で、これは精神病院に入院中の患者の言葉…となっている時点で見る側も「あれっ?そっち系の話?」と揺さぶられる。その疑惑が残った状態で見ていると、ジェームズの言ってることが本当かどうか見てる側も判断つかなくなって、何が現実か分からないような奇妙な感覚を味わうことになります。果たして「ウイルスによる人類滅亡説」はジェームズの妄想なのか、現実なのか!?

ジェームズの担当医になったキャサリン・ライリー博士はジェームズにどこかで会ったことがあるような気がしていた。それゆえジェームズの要望を聞き入れて本当かどうか試してみるも、その結果やっぱり彼は妄想に取り憑かれていると考える。しかしジェームズ視点になるとやっぱりこっちが本当かな?と迷う。でもそうだったら6年後に人類は死滅することになるから何とかしないと! 共に「12モンキーズ」の謎を追うことになったジェームズとキャサリンの心の変化の描かれ方が面白いです。

<ネタバレ>

これはネタバレなしで感想を書くのが難しい系ですね。一切情報なしで見たため、冒頭の出だしに見事に揺さぶられましたが、キャサリンがジェームズの体から1920年製の弾丸(第一次世界大戦で使われたもの)を摘出した時点で人類滅亡説本当が確定。これ、ジェームズが時々幻聴のような声を聞くのも「妄想かな?」と思える効果を上げてたと思う。あれはジェームズを監視していた人の声とも考えられるけど、ジェームズはかなり精神を消耗していたのでそれ故の幻聴とも考えられる。多分解釈はどっちでもいい。観客に迷い効果を出せればいいんです(と思う)。

ジェームズの時代のタイムマシンは不調が多いようで、彼は本来ならウイルスがばら撒かれる少し前(1996年11月)に飛ばなければいけなかったのに、1990年に飛んでしまう。ジェームズは指定された電話番号に報告をする予定だったが、時代が違ったせいで電話は機能せず。すっかり妄想癖と思われてしまって精神病院に入れられてしまう。だがそこで出会ったジェフリーが実は鍵を握る人物だった。12モンキーズは1990年にはまだ存在していなかったが、後に退院したジェフリーが仲間を11人集めて結成したグループだった。しかもジェフリーの父は細菌学者で、問題のウイルスを開発した人物だった。

しかし未来に戻されたり、第一次世界大戦に飛ばされたり、1996年に飛ばされたりで、だんだんジェームズは何が現実か分からなくなり、"妄想"から覚めるためにキャサリンのいる1996年が現実と思うことにする。この時、ジェームズは「ウイルスで人類滅亡」は自分の妄想でありキャサリンが正しいと思うようになっているが、反対にキャサリンはジェームズが正しくて今人類は危機に瀕していると確信する。2人の考えが反対になっちゃうところが面白い。だがキャサリンが気付いた「ジェームズがタイムトラベラーである証拠」を見て、ジェームズも自分が正しかったと分かる。

結局、問題の12モンキーズはウイルス拡散犯ではなくて、真犯人はジェフリーの父の研究所員だったのですが、ここでジェームズが繰り返して見ていた夢の正体が明らかに。空港の事件はジェームズが子どもの時に見た記憶通りになった。ジェームズは自分が死ぬところを見ていたのね…。

タイムトラベルものとしての12モンキーズ

今作のタイムトラベルは同じ時間軸で行われているようです。同じ時間軸の場合、タイムパラドックスが悩みの種になりますが、今作では過去は変わらないという方針を取ることでパラドックスを避けたようです。だからジェームズが空港で死ぬのは変えられない運命だった。あるいは変えてはいけない運命だった。未来の科学者たちはこれまでジェームズ以外にも多数の人間を過去に送り込んでいるので、その経験から過去は変えられない、あるいは変えてはいけないと知っていたのではないでしょうか。

ラストで未来の科学者の1人が真犯人と出会うシーンがありますが、彼女の目的は過去を変えることではなく、ウイルスの元株を手に入れて未来に生き残った人たちを救うことだと思われます。ジェームズが受けた指令も元株を手に入れることであり、パンデミックを防ぐことではなかった。科学者たちにとってジェームズは真犯人(元株所持者)にたどり着くための駒の1つだったのでしょう。それを思うとジェームズの運命が切なくて哀しい。

「歴史は変わらない」がテーマの作品の醍醐味は「過去のアレはそういうことだったのか!」という答え合わせにあると思います。「タイムライン」などもそうですね。今作にもその面白さはありますが、結末が主人公にとってバッドエンドなのはちょっと辛いところがあるなあ。構成はみごとだったと思います。