アバウト・タイム~愛おしい時間について~

2013年
時間 124分
監督 リチャード・カーティス

ティムは21才になった時、父から"秘密"を打ち明けられた。レイク家の男性にはタイムトラベルの能力があるという。ただし自分の過去に戻れるだけ。だから大きな歴史改変などは出来ない。だが自分の人生にならその力を有効に使うことが出来る──。さっそくティムは彼女を作るのにその力を生かそうとするのだが…?

「時間」を通して人生を見つめ直すドラマ。最初のタイムトラベルでの彼女作りは撃沈。しかしその後だんだん要領をつかんできたティムは理想の彼女メアリーと結ばれ、小さな失敗を修正しながら平凡だけど幸せな人生を送っていきます。だけど平凡な人生にも波風はあり、それとどう立ち向かうかでティムは日々の過ぎていく時間の大切さを知るわけですが…。

ティムが彼女作りのために奮闘する小ネタは楽しい。××にそういう使い方するかよ!なところもあったり、この小さな成功に行き着くまで何回やり直したのよとか、この辺はタイムネタならではの面白さがあります。過去への戻り方は暗い所で両手を握りしめるだけなので、特別な装置も特殊効果も要らずお手軽。その分、タイムネタ作品だということをあまり意識せずドラマに集中できてテーマもよく伝わってくるのですが…。

この作品に関しては主題はあくまでもテーマの方であって、タイムネタはそのための手段なのでしょうが、ただ、それでもやっぱりタイムトラベルSFを期待して見た者としてはちょっと(いや、かなり)気になるところもありましてね…。

<ネタバレ>

ティムの転機は2つ。1つは妹の事故。妹が事故を起こす原因となったのは悪いボーイフレンド。妹をそいつと別れさせて別の人生を送らせるためにティムは自分が結婚する前まで戻り、妹とその男が出会わないようにします。ところが現在へ戻ってきたら自分の子どもが女の子から男の子に変わっていた。妹の人生が大きく変わったため、その影響で妻の卵子と出会う精子が違うものになってしまったのですね。

問題はここ。私はこれはタイムトラベルで生じる非情に重大なタイムパラドックスだと思っています。これだけで1つの作品にしてしまえるほどの大きな意味を持つ問題だと思っています。この作品が過去が変わっても生まれる子どもは変わらないというルールならいいけど、子どもは変わるというルールを採用したなら、避けてはいけない、むしろこここそを主題にしなければいけないほどの大問題。

それなのに! ティムはここであっさりと(しかも一切の迷いなく大至急て感じで)妹が事故に遭う運命を選び直し、娘を取り戻します。ここで問題になるのは妹の事故じゃない。自分に都合悪くなるなら妹が事故に遭ってもかまわないというのはどうなのよ、というのはあるけれど、事故に遭っても遭わなくても妹の存在には変わりはないから。ここでの一番の問題は過去改変で生まれた男の子が消されてしまったことです。

ちょっと待ってよ、消された男の子の人生はどうなるの!? ある日自分の親に「お前は過去改変で生まれた子どもだから、本当は存在しなかったはずだから消えて」と言われてこの世から消されたら…納得できます!? レビューを見ても高評価ばかりで「消された男の子」に言及する感想がほとんどないのにはゾッとしました…。ティムはここで男の子の存在に悩むべきだった。男の子を選べば娘は生まれない。娘を選べば男の子の命を絶つことになる。そこで葛藤してこそタイムトラベルSFなのに…。ティムに過去を変えることの意味を分からせるエピソードだとしても、命の扱いが粗雑すぎる。

ティムのもう1つの転機は父の死。ティムは父の死後も過去に戻って父と過ごす時間を持つのですが、メアリーにもう1人子どもが欲しいと言われる。父の死後に子どもを作ったらもう父とは会えなくなる。自分の子どもが生まれる以前には戻れないのだから(戻ったら娘が息子になったように子どもが別人になってしまう)。それでティムは子どもが産まれる前に父と最後の時間を過ごし、子どもが産まれてからは父の死(戻れない過去)を受け容れて日々の過ぎ去る時間を大切にするようになります。

が、ここでもティムはミスを犯している。父に会いに行くなら、妻が臨月の時ではなく受精する前でないとダメでしょ! 臨月ってことは妻のお腹の中から出ていないだけで、既に子どもはこの世に存在している。その状態で過去へ行ったらお腹の中の子どもが別人になっちゃうでしょ! まだ子宮から出てないから別人になってもかまわないって、そういう問題じゃないでしょ!

ティムはタイムトラベルで自分の子どもの命を2つ消している。これに関してティムに何の問題も生じないのはタイムトラベルSFとしては詰めが甘すぎる。タイムネタを扱う以上、しかもそれがティムの転機と関わる以上、ここをないがしろにしてはいけないと思います。SF好きにはどうしてもそこが引っかかるので、言いたいことは分かるけど共感しきれないところが出てしまう。その点が残念でした。

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