ローン・レンジャー

ローン・レンジャー BD

2013年
時間 149分
監督 ゴア・ヴァービンスキー

1869年のテキサス。故郷のコルビーの町に戻ってきた地方検事のジョンは先住民の男トントに命を救われる。トントは悪霊ハンターを名乗り、大悪党キャヴェンディッシュを追っていた。生まれも育ちも違うジョンとトントはなかなか相容れなかったが、共に悪党を追ううちに絆が育まれ、トントとマスクの男ローン・レンジャーのヒーローコンビがここに誕生する。

西部劇ですが、ガンアクションよりもエンタメアクションに振り切ったディズニーアトラクションのような作風。パイレーツ・オブ・カリビアンの西部劇バージョンみたいな感じです。ジョニー・デップ演ずるトントもどことなくジャック・スパロウを思わせる。ただ今作のトントは悲しい過去を背負っており、その分スパロウとはまた違うキャラ作りになってます。

元になったオリジナルドラマは知らないのですが、「ハイヨー、シルバー!」のかけ声は何処かで聞いたことがあった気が。冒頭は1933年のフランシスコの見世物小屋から始まり、先住民の人形が動き出して見物客の少年にローン・レンジャーの話を語って聞かせるという構成になってます。この1933年がオリジナルドラマが始まった年だそうで、だからローン・レンジャーの物語の起点をここに合わせたのかもですね。語り手がトントなので、自ずとトント視点、先住民視点も多くなり、悪党たちに振り回された先住民の姿もきちんと描かれている。

しかし何と言っても今作の一番の見どころはやっぱり壮大なエンターテイメントアクションでしょう。ユーモアのテンポに至るまで細部まで隙なく作り込まれた豪快なアクションが有無を言わせぬ迫力でたたみかけてくる。中でも鉄道アクションと音楽(ウィリアム・テル序曲)とのマッチ具合は完璧過ぎ。全編これでもかと言うくらい盛り盛りアクションでお腹いっぱいになりそうだけど、その濃さがたまらない。

西部劇にエンターテイメント感覚を取り入れてみた今作。これはこれで面白かったです。密かにシルバーくん(白い馬)のファンだったり(笑。1869年は大陸横断鉄道が開通した年なので、そういう時代背景も合わせて見ればより楽しいです。

<ネタバレ>

ジョンの兄ダン・リードは町を守るテキサス・レンジャーのメンバー。しかし仲間の裏切りでキャヴェンディッシュにやられてしまった。ジョンも兄と共に倒されるが、白い馬に選ばれてトントの相棒になる。この白い馬ですが、トントは聖なる馬だと思っていたけれど、勇敢な兄ではなくジョンを選ぶし(と言うか、ジョンは死から蘇ったのではなく、そもそもまだ死んでなかったよね?)、酒飲みだし、賢いかと思えばバカっぽいし、妙に愛嬌あるやつでした。そのくせ危機になるとどこからともなく馳せ参じてジョンたちを救うスーパーホースぶり、これはファンになるよー(笑。

トントは少年の時、白人に騙されて部族を滅ぼされたことがあった。それがキャヴェンディッシュだった。共にキャヴェンディッシュを敵とするジョンとトントだが、相手を直接成敗しようとするトントと、法で裁きたいジョンとは意見が食い違う。だがキャヴェンディッシュと鉄道王コールがつながっていたこと、彼らの目的は「川の始まる谷」の銀であること、騎兵隊も結局は正義より銀を選ぶ現実を知って、ジョンは自分に見えた正義の道を行くことになる。マスクの男、ローン・レンジャーとして。

今作のキャヴェンディッシュやコールは同情の余地のない本物の大悪党なので、クライマックスの鉄道大アクションは爽快に楽しめました。作品によってはこういうタイプの悪党も必要だと思う。時代劇の悪代官みたいなものですね。酒場の女主人レッドもいいキャラだった。銃を仕込んだ象牙の義足がセクシーで素敵。西部劇なのにサイボーグ姉ちゃんか!みたいな活躍ぶりでした。

エンタメアクションの方が強くてロマンスは控え気味でしたが、これはこれでよかったと思う。恋は胸に秘めてローン・レンジャーの道を選ぶ、その切なさこそがヒーローですから。さあ行けえっ、ハイヨー、シルバー!

ラスト、見世物小屋からトントは去り、少年の手には銀の弾が。少年が見たのは夢だったのか、本当のことだったのか。どちらであっても少年の心にローン・レンジャーが生きたことは間違いないと思うのです。