ガタカ

1997年
時間 106分
監督 アンドリュー・ニコル

人々は遺伝子操作で生まれ、遺伝子の優劣で身分が決まる近未来。自然出産で生まれたビンセントは劣勢遺伝子があるために「不適正者」としか生きられなかった。だがビンセントは宇宙飛行士になる夢を諦められず、遺伝子を偽り「適正者」に成りすまして宇宙局ガタカに入社する。だがタイタンへの宇宙飛行士に選ばれた時ビンセントの上司が殺害され、遺伝子詐称がバレそうに──? 犯人は誰か、そしてビンセントの夢は叶うのか?

近未来SF。お札を崩すためという不心得な動機でレンタルしたのが初見でしたが、思わぬ拾いものでした。遺伝子操作で理想の子どもを作るのが普通になった未来というのがありそうでリアル。遺伝子操作なしで生まれたビンセントは病弱とか心臓が弱いとか複数の劣勢遺伝子があるために「不適正者」として社会から脱落せざるを得ず、宇宙飛行士の夢も叶わない。

遺伝子操作で生まれた優れた人間だけが「適正者」としてエリートになれる世界ですが、これは意図的に優秀な人間を作ることを問うSFであると同時に、生まれついての優劣だけで人間の価値は決まるのかと問う作品でもあります。また決められた価値の枠の中に収まってしまうことへの問いも行っており、「不適正者」だけど夢を諦めずに頑張るビンセントと「適正者」だけど課せられた期待の重さに耐えられなかったジェロームとの対比も効いています。

この世界の身分証明は全て生体認証。ビンセントは事故で歩けなくなったジェロームと取引し、ジェロームの血液や尿を使ってジェロームに成りすまし宇宙飛行士を目指す。ところが宇宙飛行士を目指す人間にはしばしば生体検査があり、抜き打ち検査もあったりするのでビンセントの遺伝子詐称がバレやしないかとなかなかヒヤヒヤさせてくれます。それに上司殺人事件が絡み、危うい状況の中、ビンセント、ジェローム、ビンセントの同僚アイリーン、ビンセントの弟アントン、それぞれの関係とドラマが描かれ、どうなるかハラハラしながらもいろいろ考えさせてくれる作品でした。

<ネタバレ>

優秀な人間の遺伝子が取引対象になるのも面白い設定でした。ジェロームは完全無欠で最高に優秀な「適正者」だったのに事故で車椅子になり社会から脱落。こういうこともある。取引でジェロームはビンセントに生体サンプルを提供し、ビンセントはジェロームに成りすます代わりにジェロームの生活を支える。一緒に暮らす2人ですが、ジェロームは今の自分の状況をどう思ってるんだろ?と気になっていたら、事故は故意だったみたいなことをチラッと漏らす。水泳で金メダルを取るために生まれたジェロームはしかし銀メダル止まりだった。事故はそのプレッシャーから逃げるためだった? だがビンセントと暮らすうちにジェロームは彼の中に夢と希望を見出す。

上司殺人事件を追う刑事はビンセントの弟アントンだった。彼は「適正者」でビンセントはアントンに勝てることがなかったが、1度だけ水泳で勝てたことがあった。ビンセントはアントンに遺伝子詐称がバレた時、もう一度弟と勝負し、再び勝つ。アントンにはその理由が分からない。理屈ではビンセントがアントンに勝てるはずがないのだから。だがビンセントは努力で理屈を越えたのだ。

ジェロームもアントンも最初から恵まれた「適正者」ゆえに理屈を超える努力をする発想がなかったのだろう。理屈を越えるビンセントの努力は「適正者」「不適正者」の垣根を越えた。ビンセントに夢を託したジェローム、ビンセントを認めたアントン、ビンセントが何者であっても宇宙飛行士にふさわしいと判断して出発を見送ってくれた医師。遺伝子詐称に最初は怒ったアイリーンもビンセントを受け容れた。上司殺人事件は「不適正者」でも実力を認める局長と「不適正者」を認められない上司との争いの結果だった。

恵まれない人間でも努力することで夢を叶えられる。シンプルに言えばそういう作品ですが、最初から能力があったらそれに頼ってしまって努力することを忘れるんじゃないか…と言うことも考えさせてくれました。生物に可能性を持たすためには劣性遺伝子も必要だと思うので、優秀な人間だけにしてしまうのも考えものですね。

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