トータル・リコール

トータル・リコール BD

1990年
時間 113分
監督 ポール・バーホーベン

平凡な建設労働者のダグラスはしばしば火星の夢にうなされる。火星植民地には行ったことがないのに何故? 火星が気になるダグラスは記憶を移植するリコール社を訪れ、火星旅行の記憶を注文する。だがその処置中にダグラスは暴れだし、今の記憶は偽の記憶だったことが判明。自分は何者なのか? 記憶を入れ替えたと思われる連中に襲われ、火星へ向かうダグラスだが、そこで明らかになった真実とは──。

当時、予告編の「おばさんの顔が割れてシュワちゃんになるシーン」が衝撃的過ぎて、これは見に行かなければと心躍らせてくれた作品。本編を見てみたら、それだけではなく、飛び出る目玉、鼻から出てくる巨大な球(!)、コテコテのミュータント等々、トラウマレベルの衝撃シーンが満載のすごい映画でした。主演がシュワちゃんで、監督がバーホーベンだから、その濃さたるやもう…(笑。

後年BDを手に入れましたが、今見ると90年センスの舞台装置もこっけいなタクシー運ちゃんロボットも一周回って面白い。無骨でもみなぎるエネルギッシュさに引きずり込まれ、エスカレーターで巻き添えになったお兄ちゃん可哀相過ぎと思うも、有無を言わせぬパワーで話について行かされる。濃いアクションがゆえに血糊描写も濃いところがありますが、それも今作の味。

しかし本作の見どころはシュワちゃんやアクションだけではない、サスペンスとしてもよく出来ているところだと思うのです。ダグラスが記憶を消された理由は? 火星で何があったのか? 夢に出てくるブルネットの美女とは、火星でエネルギー鉱石採掘会社を営むコーヘイゲンの企み、彼の部下リクターや偽妻の絡み、火星の反乱分子リーダーの目的、エイリアンの遺跡の噂、それらがラストに向けて1つに収束していくのが気持ちいい。

<ネタバレ>

ダグラスの本名はハウザーと分かる。ハウザーの残したビデオからコーヘイゲンに記憶を消されたと知ったダグラスは、ハウザーのメッセージに従って火星に行く。しかしそれこそがコーヘイゲンの策略だった。コーヘイゲンの目的は反乱分子リーダー・クワトーの抹殺。しかしクワトーの正体は誰も知らず、しかもクワトーは心を読む能力を持っている。演技では見破られてしまうので、クワトーに近づくには「コーヘイゲンの仲間だという記憶」を完全に除去する必要があった。

そのためハウザーは自ら志願して記憶を消し、リーダーに近づく役を引き受けたのだった。ハウザーのビデオもダグラスを動かすために仕組まれたものだった。なおリクターたちは本気でダグラスを襲うよう仕向けられていたと思われる。心を読むクワトーを欺くためにはダグラスもリクターも「嘘のない本気」で動かねばならなかっただろうから。

ハウザーの真意がコーヘイゲンの仲間だったと知り、衝撃を受けるダグラス。私もびっくりしたわ…。二重のどんでん返し! みごとに騙されました~。しかしダグラスは「今の自分」を大切にすることにしてハウザーに戻るのを拒否し、ダグラスとして生きる選択をする。コーヘイゲンとの死闘の末、ついにエイリアンが残した遺跡リアクターを作動させて火星を壮大にテラフォーミング、大団円で幕。

夢オチ?

ところで、ホワイトアウトは夢オチの示唆という説があり、これは現実なのか夢なのかという議論があるようですが、私は疑うことなく最初から最後まで現実だと思って見てました。ダグラスはリコール社に行く前から火星に執着してメリーナの夢を見ていたので、夢オチならリコール社に行く前の夢の説明がつかないと思うんですよね。途中で出てきたリコール社を名乗る男もリクターの罠なのは明らかだし。男の話が本当ならトラブルが起きて帰されたのも夢だったことになりますが、ダグラスからは見えない所にいた女性客までが出てくるのは変。ダグラスの仮想旅行ならダグラスが見てないことが出てくるはずがないので、トラブルの一件は現実でないと説明がつかないのです(つまり男の話は嘘)。

リコール社はきっかけに過ぎず、以降も現実なら、今作はダグラスがコーヘイゲンの策略に動かされる中で過去の自分と対面し、自分とは何かを問う物語だったということになります。その方が夢オチよりずっといいし、テーマも生きる。作中では夢オチとの明言はないし、どちらの解釈でもOKということならば私はそう考えたいということで。あくまでも一個人の感想ですが。

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