アップグレード

アップグレード BD

2018年(日本公開は2019年)
時間 95分
監督 リー・ワネル

AIの発達した近未来。グレイは注文主エロンに車を納品した帰りに暴漢に襲われ、妻は殺され自分も脊髄損傷で4肢不随になる。グレイを見舞いに来たエロンは自社で開発した高機能チップ"ステム"をグレイの脊髄に埋め込むことを提案。グレイは提案に乗り、動く体を取り戻す。だがステムは脳と神経をつなぐだけのチップではなく意思を持ったAIだった。グレイはステムの協力で妻を殺した犯人を独自に捜し始めるのだが…。

AI系のSFらしいと言うことで見てみる。これは面白かったです。低予算系のヒット。体に埋め込まれたステムがグレイに色々話しかけるのですが、最初は索敵や分析・解析能力で犯人の割り出しに力を発揮するけど、グレイの体も動かし出す。グレイが体の制御をステムに任せると一気にヒーロークラスの動きになって凄いアクションを見せてくれます。これが軽々としながら鋭く、流れるようにしなやかでいて無駄のない直線みたいな独特な動きで、思わず画面に見入ってしまう。このアクションバトルだけでも見る価値あり。

だがエロンはステムはまだ極秘であり、誰にも秘密を漏らさないことを埋め込みの条件に付けていた。グレイが歩けるようになったことは極秘事項で、表向きは寝たきりの身障者として振る舞わなければならない。が、犯人グループの1人を追い詰めて大立ち回りしたことで、エロンにも事件を捜査してるコルテス刑事にもバレそうになって…!?

95分と短い尺なのでテンポよく切り替え、アクションしてくれるので話の流れにも無駄がないです。未来描写は今の生活が素直にアップした感じでそんなに派手ではなかったけど、グレイの奥さんの全自動カーは未来っぽくて便利そうだった。街中を走る車は未来的なのもそうでないのも色々混ざってたけど、一律でないところが生活レベルに層があることを感じさせてくれて意外にリアル感ありましたね。「ピザを刷る」はよかった。

<ネタバレ>

コルテス刑事が送ってきた捜査資料を見てすぐ犯人の1人を割り出したステム。ドローンのぼんやりした画像から犯人の腕の刻印を読み取って住所氏名個人情報全部さっくり解析するステム凄いわ!と思ったけど、実は最初から知ってたのねステム。犯人の所へ行き格闘するもグレイではかなわない。そこでステムに動きの制御を任せたら目の覚めるようなアクションで犯人やっつけ!…過ぎて殺しちゃった。ここから泥沼に落ちていくグレイですが、ステムは最初からそれが狙いだったのね。てことで真の黒幕はステムでした。

エロンは自分が生み出したステムに逆に支配されてしまい、ステムのために体を用意する。グレイに車を発注したのも車の事故もグレイが全身不随になったのも全てステムを人間の体に入れるために仕組まれたものだったのです。ステムは追跡システムを切ってエロンを葬り完全独立、グレイを乗っ取る。アップグレードとはAIを入れて進化(アップグレード)した人間のこと。

ラストの流れは一瞬夢オチかと思ったけど、あれはグレイの心が夢の中に入ってしまって、現実の体は完全にステムの支配下になったってことですよね。VRも考えさせられますね…途中でVRに浸りきってる人たちが出てきましたが、ラストのグレイを幸せと思うかどうか、人間力を試されてる気が。

見事なバッドエンドでしたが、AIに任せて思考停止になってはいけないなと思いました。AIは色々と助言してくれるが、AIに全て任せてしまっていいのか? 今作が描いているのはAIの暴走と言うよりは、AIに意思や自我がなくても自分で考え判断することをしなくなったら、それはAIに支配されてるのと同じだということではと思いました。AIと人間の付き合い方はこれからも模索していかなければならない問題。AIと人間はいい意味での相棒になれる未来を目指したいものです。

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