トゥモロー・ワールド
年 | 2006年 |
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時間 | 109分 |
監督 | アルフォンソ・キュアロン |
子どもが産まれなくなった近未来。世界は崩壊し、イギリスだけが秩序を維持していた。イギリスには不法移民が押し寄せ治安が悪化する中、セオは元妻で活動家のジュリアンから不法移民の娘の通行証を頼まれる。驚くことに娘は妊娠していた。子どもが産まれなくなって18年目の奇跡だった。セオは奇跡の娘を守りヒューマン・プロジェクトの船に送り届けることになる。反政府グループと軍の衝突で戦闘状態になる中、奇跡の娘は無事に船へ辿り着けるのか!?
SFと聞き、スカパーで鑑賞。が、子どもが産まれなくなったことについて科学的な説明はなく、原因よりも「もし子どもが産まれなくなったら?」という状況を描いてみた、ということのようです。人々は子どもが産まれなくなったことで未来を見いだせなくなり絶望している。セオの従兄弟は文化大臣で美術品の保存に力を入れているが、セオは100年後にそれを見る人間がいるのか?とこぼす。確かに生きる意欲がなくなるよなあ。
ところがそこに奇跡の妊娠が起きた。反政府グループ「フィッシュ」は不法移民を助ける活動をしていたが、娘のお腹の命は彼らにも影響を与えた。その結果、セオはフィッシュと警察の両方から追われることになるのですが、その逃避行アクションが実質のメイン。本作では長回しがあちこちで使われており、長回し好きには見どころになっているようです。
誰も見たことのない噂だけのヒューマン・プロジェクトは本当にあるのか、船は来るのか、そして──?
<ネタバレ>
セオの元妻ジュリアンはフィッシュのリーダー。彼女だけがヒューマン・プロジェクトと連絡を取れるらしく、ジュリアンの頼みでセオが奇跡の娘ことキーを預かることになる。が、フィッシュ内部で裏切りがありジュリアンを殺したのはフィッシュの仲間だと知ったセオは誰も信用できない状態でキーを守って孤軍奮闘。でもジュリアンは薄々気付いていたのかも。「信頼できるのはセオだけだから」と言っていたし、フィッシュメンバーに任せず部外者のセオに頼んだことからも。
キーは途中で出産してしまうのですが、赤ん坊の泣き声が人々を変えるところは感動ポイントですね。子どもがいない世界を描くことで、普段当たり前に思っていた子どもがいる世界の大切さ、子どもは生きる希望そのものなんだということを改めて思わせてくれました。エンドロールで子どもの声を流し続けたのもそういうことなのかな、と。
ヒューマン・プロジェクトはラストで出てきたけど、詳細は不明なまま。この辺はもう少し説明あったらよかったのにと思ったけど、人々がキーと赤ん坊を通すシーン(絶望の中に生まれた希望)が主題ならば、そこは問題じゃないということかな。不妊の理由も不明なままだし、ならいっそ一種のファンタジー(寓話)と考えればいいのかもしれない。それなら説明なくてもそういう世界設定で通るし、余計なことに気を取られずに主題に集中できるし。そう思えばトゥモロー号も「子どもが行く先は未来」を船の姿で表現したと解釈できるので解決、かな。
子どもを亡くして妻とも別れ活動家もやめたセオにとってもキーの子どもは「希望」になったに違いない。キーが赤ちゃんにセオの子どもの名をつけてくれたのはよかった。セオの救いにもなったと思うし。