ザ・ウォーク

ザ・ウォーク BD

2015年
時間 123分
監督 ロバート・ゼメキス

これは実話である。1974年8月7日、NYの世界貿易センターのツインタワービルで綱渡りをした男がいた。彼が綱渡りをするまでの準備期間と綱渡りを決行する様子を描いた作品。

新作レンタルの数合わせで借りて見た作品。映画館で見なかったことを後悔しました…。目もくらむような超高層ビルの間での綱渡り! 映画館の大スクリーンで見たらどれだけ怖くてドキドキハラハラ出来たろう…! しかも本当にこれをやった人がいるんだから凄い。高所恐怖症の方には怖すぎて無理かもなのでご注意。

物語はフランスの大道芸人フィリップ・プティがツインタワービル建設の記事を見て、いつかこのビルを渡ってみたい…と思ったところから始まります。子どもの時サーカスで綱渡りに魅せられたフィリップはサーカスのベテランから指導を受け、1人2人と賛同者を増やし、計画を練って準備を整えていく。この過程がちょっとミッション・インポッシブルみたいで面白い。無許可でビルの間に綱を渡して勝手に渡ろうというミッションだから、いかに警備員に気付かれないように作戦実行するかというサスペンス要素も。

綱渡り本番もまたすごい。冒頭でフィリップが過去をふり返るという形で話を始めてるし、史実だから成功するのは分かっていても、それでもハラハラしちゃいます。私なんぞは映画を見るまでツインタワーを渡った人がいたことすら知らなかったから、綱渡りが始まってからも驚きの連続。綱の上で彼が行ったパフォーマンスが全て史実の通りなのかは分かりませんが、もしそうなら凄すぎるんですが~~。

しかしこの作品が伝えていたのは綱渡りミッションだけではなかった…。

<ネタバレ>

見終わって思ったのですが、準備と綱渡り本番も見応えあったけど、今作の真の主人公は世界貿易センターのツインタワービルですね。2つのビルの綱渡りを成功させたフィリップは最後にツインタワービルのパスをもらう。パスの有効期限には「永遠」と書かれている。永遠に有効なパス。しかし、私たちは知っている。その後のツインタワービルの運命を。2001年、世界同時多発テロでツインタワービルは破壊された。今はもうこの世に存在しない。テロはフィリップが得た「永遠」をも破壊したのだ。「永遠」のパスを持つフィリップの後方で輝くツインタワービルが切ない。

この作品には反テロのメッセージも入っている。私はツインタワービルのテロ事件をニュースでリアルタイムで見た世代である。あの時の衝撃は凄かった。ビルに飛行機が突っ込み炎上する映像は今でも忘れられない。この作品の凄いところは、作中では9.11にもテロにも一切触れず、綱渡りを成功させるまでをただただ描くことに徹することで、無言の反テロメッセージを伝えたこと。前半のミッションインポッシブル風な準備ミッションも、後半の高層ビルの手に汗握る綱渡りのシーンも、全てはラストの「永遠のパス」と「現実には永遠になれなかったビルの運命」を対比させるための手段だったのではと思える。

かつて2つの高層ビルがあった。そのビルは1人の男を魅了し、彼は完成直前に綱渡りでビルに命を吹き込んだ。彼の綱渡りは伝える。伝記になり映画になり伝え続ける。ビルが消えても、そこに2つのビルがあったことを。テロの犠牲になった2つのビルのことを──。それを忘れないためにこの映画はある。

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