ピエロがお前を嘲笑う

ピエロがお前を嘲笑う BD

2014年
時間 106分
監督 バラン・ボー・オダー

指名手配ハッカー「WHO AM I」を名乗る青年が警察に出頭してきた。彼はハッカー集団「フレンズ」と大物ハッカーMRXの情報提供と引き換えに証人保護を求める。彼が語る自らの生い立ちとハッカー集団「クレイ」に属するようになったいきさつ、「クレイ」と「フレンズ」の関係、MRXとの接触…。そして捜査官リンネが彼の話から辿り着いた驚愕の真実とは…?

スターチャンネルが無料で見られる期間に鑑賞。ドイツ映画。ハッカーものだということで見てみたのですが、専門的な難しさはなく、騙し騙されのミステリーが主体で、最期には「おおっ!」というどんでん返しもあって面白かったです。

孤独な少年だったベンヤミンはコンピュータに熱中し、大学にハッキングして試験問題を盗んだことから悪い仲間に入っていくことになる。ベンヤミンの憧れは天才ハッカーMRX。その正体は謎に包まれている。仲間と「クレイ」を結成したベンヤミンたちは、MRXに認めてもらおうとハッキングを繰り返し、ネットでも人気急上昇するも、MRXには相手にされない。ネットには彼ら以上のハッキング集団「フレンズ」がいたからだ。MRXに認めてもらうために「フレンズ」よりもっと凄いことをしてやろうとハッキングをエスカレートさせていくベンヤミンたち…。

今作ではネット上でのやりとりを「電車の中」という形で表現してるのが面白いです。「電車の中」では皆マスクを被っており、素性は分からない。MRXは「X」がトレードマークで、ベンヤミンたち「クレイ」のメンバーはピエロがトレードマーク。「電車の中」でXマスクの男とピエロマスクの男が"プレゼント"を受け渡しするのがメールなどでの情報やりとりを表してます。「ピエロがお前を嘲笑う」の頭文字を集めたのが「クレイ(CLAY)」、つまりベンヤミンたちのハッカー集団の名前を邦題に持ってきたということですね。

<ネタバレ>

「クレイ」のハッキングは基本"遊び"だった。ハッキングした証拠にピエロを表示させる、みたいな。だがベンヤミンは個人的感情から一線を越えてしまい、それが原因で「クレイ」は殺人犯の濡れ衣を着せられた上、仲間までもが殺されることに。それでベンヤミンは保護を願って出頭、リンネは彼のハッキング協力でMRXの正体を暴いて逮捕にこぎ着けるが、ここから驚愕のどんでん返しが始まります。

リンネが調べたら殺されたはずの仲間は存在せず、ベンヤミンと時々会っていたはずの元同級生のマリも彼とは卒業以来会ったことはないと証言。母親が多重人格者だったことから、リンネは「クレイ」の仲間もベンヤミンが生み出した多重人格だったと判断、ベンヤミンを釈放しますが、しかし…?

人は見たいものだけを見る。だから騙される。ベンヤミンは騙しのプロ。リンネを騙すことで、仲間を警察やハッカーたちから守った。ラストの衝撃はぜひ見て味わってほしいところ。マリがすっかり仲間になってましたが、あの様子ならベンヤミンはマリちゃんと上手くいったようですね。ベンヤミンの「話」はリンネを騙すためのものだったので(4つに戻った角砂糖でリンネも気付いたようだけど、黙っていてくれたのね)、「話」には登場していない真実も色々ありそうです。例えばマリが仲間になるのにベンヤミンとの間にどういう進展があったのかとか、本当はマリとの仲は「話」よりは上手くいってたのかもとか、そもそもマリは最初からベンヤミンの恋人で「話」の中のマリはフェイクではとか、いろいろ想像できて楽しい。

物語も作者と読者(視聴者)との騙し合い。今作では気持ちよく騙してもらえて、とても楽しかった。こんな作品に出会えることがあるから、物語を楽しむのはやめられないのです。