鑑定士と顔のない依頼人

鑑定士と顔のない依頼人 BD

2013年
時間 124分
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ

美術鑑定士でオークションも催しているヴァージルに奇妙な依頼が入る。親の遺した美術品の鑑定と競売の依頼なのだが、依頼人の女性は声だけで姿を見せない。姿を見せない依頼人とやり取りをしていくうちに、いつしかヴァージルは彼女に心惹かれていく。人前に出られない依頼人、長年女性が苦手だったヴァージル、互いに心の問題を抱えていた2人の恋の結末とは──。

ムービープラスでやってたのを見て知った作品ですが、これ、ネタバレなしで感想を書くのがとても難しい作品です。下手するとジャンルを言うだけでもネタバレになる恐れがあるので、まずは見て下さいとしか言いようがないのですが、結末にも賛否あるだろうしなあ、お勧めしていいのかもちょっと微妙な作品。

けど、女性が苦手で物を触る時には手袋必須という主人公と、広場恐怖症で人前に出られず何年も部屋に閉じこもりっきりの女性という組み合わせは、ありきたりではない恋愛を楽しませてくれるのは確かです。主人公が美術鑑定士なので、オークションの様子とか、美術品がいっぱいの古くて大きな館とか、絵画で埋まった部屋とか、日頃あまり見ることのない世界を見られる楽しみはありますね。

さて問題の結末をどう受け止めるかですが、見た年齢などによっても変わってくるかもしれない。単純に「そーだったのか!面白かったー!」と思えた作品が何年後かに見ると「あれ?」と思うことがあるように。ラストに至る伏線は綿密に張られており構成はよく出来ているだけに、まさにどう感じたかで評価が分かれる気がします。

<ネタバレ>

実は今作、ミステリーです。ラストでどんでん返しがあります。このままストレートにハッピーエンドでは捻りが足りないかな…と思ってたら、あああやっぱり!でした。若ければこのどんでん返しだけで「そーだったのか!面白かった!」になれたと思うのですが、年齢が行くとこれだけでは物足りなくて、もう一押し欲しくなる。

物足りない、言い換えると爽快感がない、スッキリしないのは、ヴァージルはあんな騙され方をされなきゃいけないほどの悪人には思えないからです。確かにヴァージルはオークションでズルしてたし、友人に夢を諦めさせたかもしれないけど、女性には純真無垢だった。それでも女に騙されて美術コレクションを盗まれただけならともかく、信頼していた友人たちにも根こそぎ裏切られたのでは救いがない。

ここはやっぱり何らかの形でヴァージルに救いを持たせてやって欲しかったです。それだけで後味がかなり違ってきますから。一応「贋作の中にも本物が潜む」がキーワードになっているので、依頼人の女は演技だったとしても、ヴァージルへの気持ちには真実も混ざっていたのではと解釈できるのですが、それがヴァージルの救いになったのかどうかはよく分からないし。

なお、ヴァージルを騙した窃盗ミッションはビリーが仕掛け人ですね。ビリーはヴァージルに個人的な恨みを持っていたから。依頼人を演じた女とロバートはプロの窃盗グループかな。ヴァージルに何の恨みもないのに、あそこまでやれるのはプロの仕事としか思えないから。屋敷の使用人もグループの一員ですね。サラもそうかな。彼らとビリーの接点は分かりませんが、何らかの機会があってビリーがロバートたちに協力を頼む流れがあったと推測します。確かに大がかりなミッションは面白かったけど、騙される側が気の毒に感じてしまうところが残念。

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