高慢と偏見とゾンビ

高慢と偏見とゾンビ BD

2016年
時間 108分
監督 バー・スティアーズ

18世紀末のイギリス。感染したらゾンビになるウイルスが蔓延する中、ベネット家の5姉妹は武術を身に付けゾンビから身を守っていた。近所に越してきた資産家のビングリーとベネット家の長姉ジェインが恋仲になり、次女のベスとビングリーの友人ダーシーも互いが気になるが、高慢とプライドに阻まれて本心を言えないでいた。増え続けるゾンビとの戦いの行方は、そしてベスたちの恋の行方は──。

「高慢と偏見」もしくは「プライドと偏見」で知られるイギリス文学小説にゾンビをプラスした怪作。小説は読んだことなかったのですが、「不朽の名作、感染」のキャッチコピーにひかれて鑑賞。しかし見て見たら、確かにゾンビは出てくるものの、基本は18世紀のイギリス貴族の社会事情と恋愛事情を真面目に描いた作品で、「風と共に去りぬ」とか「嵐が丘」とかと並んでもおかしくないような雰囲気。だからこそ、ゾンビが出てくるのがシュールでこっけいで、でも上手く話と融合してて、その変さが可笑しい。なんとも言いようのない変で面白い映画でした。

前提としてゾンビが日常化してる世界なので、娘でも身を守るために武術が欠かせない。金持ちは日本で学び、賢い者は中国で学ぶので、どこで習ったかで身分や家柄の判断になると言う…。「あたくしは日本で学びましたのよ、あ~らあなたは中国ですの? おほほほほー」という世界(笑。皆戦うので、真剣に会話する時は真剣勝負しながらの会話になるし、しかし貴族なのでドレス姿で気品高く鋭くアクション。ゾンビは道端や庭でもどこでも出没するので、その度に華麗にアクション。

バトルだけでなく優雅に舞踏会やお茶会も開かれます。女は父の資産を継げないので5姉妹の母親は娘たちを金持ちと結婚させようと躍起。作中ではロンドンはゾンビに占拠されているそうなので(インビトウィンと呼ばれている)、リズたちが住んでいるのは郊外のお屋敷みたいです。ロンドンと行き来できる橋が1つだけになっており(他の橋は落ちた)、そこがゾンビとの攻防前戦になっているようす。ダーシーはゾンビ狩りの仕事もしてるようです。冒頭のダーシーのゾンビ狩りのシーンはベネット家とは関係ない別の館。

登場人物が多いので、整理のため人物メモ置いておきますね。

主な登場人物
[ベネット家と関係者]
リズ(エリザベス):次女。主人公。ダーシーが気になる。
ジェイン:長姉。ビングリーと恋仲に。
メアリー:三女。
キティ:四女。
リディア:五女。ウィカムと駆け落ちする。
ベネット氏:5姉妹の父。
ベネット夫人:5姉妹の母。
コリンズ牧師:5姉妹のいとこ。ベネット氏の資産を継ぐ立場。リズに求婚するが…。
[ベネット家以外]
ダーシー大佐:ビングリーの友人。
ビングリー:資産家の息子。
ウィカム:ダーシーの幼馴染みで英国軍人。
レディ・キャサリン:ゾンビ退治の戦士。ダーシーのおば。コリンズの隣人。
シャーロット:リズの友人。ベネット家の近所に住む。コリンズと結婚。

<ネタバレ>

ダーシーが気になりつつも、彼の高慢な態度に素直になれなくてウィカムに付き合うリズ。ウィカムはリズをゾンビが集まる教会に連れていき、信仰で欲求を抑えられるゾンビは完全にゾンビ化はせず普通の人間と同じに暮らせるし共存もできると説きますが、それが彼の企みだった。ウィカムはゾンビに信仰を持たせて自分がゾンビのリーダーになろうとしていた。人間の脳を食いあさるだけのはずのゾンビが作戦を立てて攻撃を仕掛けてくる。おかしいと感じたダーシーはリズからゾンビの集まる教会の話を聞き、そこでウィカムが黒幕だと知る。ウィカムは実はかなり前から感染していたのですが、ダーシーへの対抗心がゾンビの欲求を抑えるほどに強く、ならいっそのこと人間を征服してゾンビの王になったるわ!という方向へ転がったもよう。

ただダーシーも面倒なやつで、人の仲を裂く癖があったので、妹とウィカムを引き裂いたのは正しかったかも知れないけど、本当に愛し合っていたジェインとビングリーを引き裂いたのは間違いだったから、そりゃあリズも怒るよね。そんなこんなでリズとダーシーが高慢と偏見の壁を乗り越えて互いの愛を確かめ合うのはラストにまでもつれ込むんですけど、結婚式で終わりにならない所がプラスゾンビですね。

まあ基本、文学作品とゾンビとのコラボを楽しむ映画だし(こういう作品に設定の整合性を求めてはいけない)、ウィカムとの戦いもまだまだ続きそうですが、彼らならウエディングドレス姿で華麗に戦っていってくれるでしょう。人生だって同じよ。結婚が終わりじゃないから。その後も戦いは続くのだから。イロイロな戦いが。ってこんな締めでいいのかな(^^;。

プライドと偏見

2005年
127分
監督:ジョー・ライト

原作も見てみたいなと思っていた時にタイミングよくスターチャンネルの無料期間でやっていたのに気付いて鑑賞。こちらは純文学の映画化だからゾンビは出てきませんけど、おかげで「高慢と偏見とゾンビ」は元作品にかなり忠実に作られていたのが分かりました。ゾンビが出て来ないだけで内容同じなのが凄い。ウィカムとリディアの駆け落ちは原作版にも出て来ます。