新感染 ファイナル・エクスプレス

2017年(日本公開年)
時間 118分
監督 ヨン・サンホ

車でひかれたのに妙な動きで立ち上がる鹿──何かが広がりつつあった──。ファンドマネージャーのソグは娘スアンの願いで、別居中の妻に娘を会わせるため釜山行きの高速鉄道KTX101に乗る。ところが「何か」に感染した人間が同じ列車に入り込み、そこから車内に感染が広がった。走る高速鉄道の中のパンデミック。ソグとスアンは釜山に辿り着けるのか!?

韓国のゾンビ映画。レンタルで鑑賞。実はTSUTAYAの4枚1000円の数会わせで借りたものだったけど、これは思わぬ拾いものでした。まず舞台が高速鉄道、日本で言えば新幹線に相当する列車の中というのが新鮮。言われてみれば列車の中も閉ざされた空間ですよね。それも逃げ道がない狭い空間、そこににゾンビがひしめくという絶望的な状況。それを突破しなければいけないのだから、普通に走って逃げるだけじゃ駄目で、列車ならではの工夫とアイデアが駆使されるところが面白い。あと、銃のない国でのゾンビものを描く工夫…みたいな記事をどこかで見たのですが、その点でも知恵が絞られてると思います。

さらに列車の中では外の世界はどうなっているのかの情報が入りにくいので、外の世界も何かが広がって大変らしいけど、何がどう大変なのか、どこがどうなってるのか情報が錯綜する。列車を止めて降りてみてもホームも駅舎内も感染者だらけなので、結局また列車に戻り、列車パニックが続くわけです。よく分からない状態での緊張感・ドキドキ感がいい。

ゾンビはダッシュ系で駅などでは猛スピードで疾走して襲ってきます。スプラッタ要素はそれほどでもないですが、走るゾンビもやっぱり怖い。でも今作の肝はゾンビバトルだけではなく、そこからあぶり出されるパニック時の人間心理ももう1つのポイントではないでしょうか。最後は泣きました…。ゾンビもので泣くとは思わなかったわ…。

<ネタバレ>

主人公はソグとスアンですが、周りの人たちのドラマも描かれており、群像劇みたいなところもあります。ソグは最初は娘の気持ちにも気付けない仕事中心・自分中心の嫌なやつでしたが、極限状態の中で助けられたり周りと力を合わせたりするうちに人のことを考えられる人間に変わっていきます。ゾンビバトルの中で主要メンバーも絞られてきますが、お腹の大きい奥さんを連れたユン・サンファが強くてかっこよかったな。

それだけでなく人間の怖さ(自己中心、エゴ、自分だけ助かれば他はどうなってもいい等)も容赦なく描いており、だんだんゾンビよりそっちの方が怖くなってくる…。エゴおじさんのせいで助かる人が助からず、こんな人間にはなりたくないと思いながらも、でも自分が当事者だったらエゴおじさんと同じにならないと言えるのか?と考えさせられました。

ゾンビの発生源がソグが不正な株操作で助けたユソン・バイオ社だったのもなかなか皮肉でしたね。自分にもこの騒ぎの責任の一端があるのではないか──と打ちひしがれるソグ。もしかしたらあの時からソグには覚悟のようなものが出来ていたのかも。

最終的に誰が助かって誰が助からなかったかはシビアな結果になりましたが、それまでのドラマが生きてラストのスアンの歌に涙する。きっとお父さんの魂に届いたと思うよ。大切な人を守るために散っていった男たちに合掌。

ゾンビが誕生した背景には詳しく触れられてはいませんが、この内容ならそこは問題じゃない。ゾンビは手段であって、本質は別のところにある。ゾンビものなのに心に残るいい作品でした。