スター・ウォーズ / 最後のジェダイ
年 | 2017年 |
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時間 | 152分 |
監督 | ライアン・ジョンソン |
逃げるレジスタンス、追うファーストオーダー。
見終わって大混乱。「フォースの覚醒(以下7)」「最後のジェダイ(以下8)」が誰のどういう話なのか分からなくなってしまいました…。
7がそこそこ期待させるものだったので、封切りと同時に映画館へ行ったのですが…。色々思うことはあるけれど、今思っていることが正しいのか正しくないのか、それは3作目を見ないと言及のしようのない構成になってる。私の8への現状での感想は一言で言うと「話が空中分解して物語が壊れている」ですが、本当に壊れているのかどうかは3作目の展開次第なので。
8は3部作の中継ぎに当たる作品のはずですが、2でも5でもこんな変なことにはならなかった。2も5も3部作の中でどういう位置にいるのかが明確であり、何をやっている話なのかも明確だった。私がスター・ウォーズに期待しているのは「物語」なので、まず物語として成立してくれないと批評のしようもない。
今はこれ以上書きようがないので、詳しい感想は続きが出てからにしたいと思います。
<追記:2019.12.29>
8鑑賞時に「壊れている」と感じた部分が3作目への伏線になっている可能性も捨てきれなかったので保留にしてきましたが、3作目「スカイウォーカーの夜明け(以下9)」を見て感想が確定したので追記します。結論。
やっぱり8は壊れていました。
8の感想は一言で言うと「レイの物語を見にいったのに、レイとは全然関係ない人間の物語を見せられた」ですね。しかも9への伏線でも何でもなく、全く無意味な話でした。以下、ネタバレで公開時の感想と8の何が駄目だったのか考えてみたいと思います。
<ネタバレ>
冒頭、いきなり戦闘シーンから始まる。え? てっきりレイがルークにセーバーを渡すところから始まると思っていたので「は?」状態。しかもレジスタンス劣勢って何? 7でスターキラー破壊したのに何で? 確かに5も同じような状況で始まったけど、5の場合は4が完全に完結していたため、5の始動に当たっては新しい状況を起こす必要があった。だから納得して見ていられたけど、7はレイがルークにセーバーを渡そうとしているシーンで「続く」になっている。つまり、そのまま続きから始められるので、わざわざ新しい状況を起こす必要はないのに、何で? こういうところで引っかかると以降の物語に入りにくくなります…。
しばらく「これ何なの?」な戦闘シーンを見せられた後、やっとお待ちかねのレイとルークのシーンになる。が、レイのミッションはレジスタンスのためにルークを連れて来ることだったはずなのに、何故か悠長に修行が始まる(レジスタンス、一刻を争っているのでは?)。そしてフォースでレンとつながったレイは「私がレンを救う!」とか何とか言って遁走。ミッションどうした、ミッションは…。
一方レジスタンスではフィンが目覚め、レイを探しに行こうとするが、女性整備士に止められ、彼女と一緒に敵艦隊のハイパースペース追跡装置を切りに行くことになる。てか、この女の人、だれ? えらく目立ってるけど。しかもフィンが主導するのではなく、彼女がフィンを引っ張る形になってるし。それでコードが必要だとかカジノとか、そんな時間ないはずなのにレジスタンスの船を離れて別の惑星に行っちゃう。更に彼女は自分語りを始め、いつのまにか話はローズの大冒険に。えっでも、ちょっと待って、私はレイの物語を見にきたのよ!? レイの物語を見せてよ、レイの物語を~。
その後もヨーダに説得されたルークが出てきたりと色々あるのですが、レイはレンと別れた後は終盤にちょろっと出てきただけで(レイがどうやって敵艦隊から脱出してレジスタンスの所に来たかが本筋のはずなのにそれは描かれず)、物語は終始ローズ中心に描かれ、ラストはローズからレジスタンスの希望を受け継いだ少年がフォースで箒を引き寄せて、完結。
え!?
何これ、どういうこと? 主人公レイじゃなかったの? じゃ主人公はだれ? だれのお話?
??????
大混乱してしまいました…。
帰ってから何日か考えて、やっと混乱の原因が分かりました。ラストの少年が8の言いたかったことだとすると、ラストの少年を導いたのはローズだから、ローズが本作の骨子を担っていたということになる。つまり、8の真の主人公はローズだったのだと。
そう考えれば全ての整合性が取れてくる。冒頭のペイジのシーンはローズのための伏線。ローズの生い立ち、レジスタンスに入った理由、ローズの信念などが語られるのもローズにしっかりしたバックボーンを与え、キャラに存在感を持たすため。ローズを通して訴えられる社会の歪み、それが8で監督が一番言いたかったことなのかもしれない。だからか、ローズのシーンはどこも手を抜かず丁寧に描かれている。レイの脱出シーンはパスしてもローズの脱出シーンは一部始終がしっかり描き込まれており省略はない。ホルド提督が突っ込んだのもローズを脱出させるための話の都合。ローズが危機に陥ってもう駄目!というタイミングで発動させなければいけなかったので、あそこまで引っ張ったのではと思われます。つまりレジスタンスの動きは(意味なき作戦に思われたのもポーの顛末も)全てローズのためのお膳立てだったということです。
しかし。このせいで肝心のレイが物語から外れてしまった。レイは修行もろくにせずルークと師弟になることもなくレンとフォース通信して飛び出してレンと戦ったりしたけど、それでレイの物語が何か進んだかと言えば何も進んでいない。かと言って物語を動かしたわけでもなく、ルークを動かしたのはヨーダだし、クライマックスのクレイト戦では完全に脇役扱いでルークvsレンの時は何処にいたのかも不明な有様。ラストの箒少年にもレイは全く関係がなかったし、8はレイがいなくても成立するという本末転倒なことになってしまった。そのせいでレイが何をしたいのかどこへ向かいたいのかも分からなくなってしまった。
せめてレイとローズが知り合いという設定でもあればまだしも、2人に一切接点がないので、ローズとレイのパートが交わらず、話が空中分解している。そのため3部作の2作目としてどういう意味を持つ話なのかすら分からなくなった。これはもうスター・ウォーズ云々以前の問題だ。作劇の時点で壊れている。
*ローズを演じた役者さんには一切責任ありません。全ては脚本と監督が悪い。役者さんも被害者です。
スター・ウォーズの破壊
8の一番の問題点はレイを脇役に追いやって、「監督が個人的に描きたかった話」をメインにねじ込んで話を壊した(ひいては続3部作全体を壊した)ことだと思いますが、その他にも好き勝手され過ぎました。キャラは改悪され(8のキャラはルーク以外も皆おかしい)、これまでのスター・ウォーズ世界まで壊されてしまった。新しいことをやるのはいいが、それは作品世界を壊すことではないですよ…。この辺をはき違えていたとしか思えません。
結局、最後のジェダイとは何だったのか
9が出来てみれば8は無くてもよかったような話になってしまいました。8を見ないと困るのはルークが死んだ説明くらいか。しかしそんなことは7の後でレイに後任を託して霊体化したとでも脳内補完すれば済むこと。8で改悪されたキャラたちも9で元に戻り、ルークも本来あるべき姿に戻った。レイの出自も9で訂正された。なお、ジェダイは結婚しないのでフォースは最初から血筋とは何の関係もありません(アナキンの結婚が例外なだけ)。
今作が見ても見なくてもどっちでもいい話になったことで、宇宙で落下とか、フォースが超能力とか、ルークが別人とかについてはもう言及しません。
7~9を通して1本筋の通った話があれば8もこんなことにはならなかったろうと思うと、それが残念です。